-100-:このディザスター、怯えてやがるぜ
スグルの説教は、なおも続く。
「キミが手下としている生徒たちは、誰もキミを尊敬などしていないのだがね。ただ、キミの親が経営している企業に彼らの親が逆らえないからキミに従っているだけなのだがね」
「知っているよッ!そんなの言われなくたって!最後の最後にそんな説教をしてくるなぁッ!」
親よりも、教師たちよりも的確に指摘をしてくるスグルに、ムネオの声は涙声になっていた。
「お前なんか、大キライだ!さっさと消えていなくなってしまえ!」
溢れる涙を拭うことも忘れて、ただ大声でスグルを追いやる。
「私もとてもキミが大キライだがね。ただ、キミに自分自身を知ってもらって、いかにキミ自身がイヤなヤツかを自覚してもらえて清々したよ。この世界にもう心残りはない。おさらばだがね」
厳しい内容でありつつも、穏やかな口調での別れを告げて。
ムネオの足元に光の魔法陣が展開された。
強制送還、耳翼吸血鬼のスグルが撃破されたのだ。
「イヤだ。消えないでく―」会話の途中、無情にもスグルの騎体が光の粒となって消えてゆく。
ヒューゴはベルタの頭部を上空へと向けた。
「残るはヤツだけだ」
雨雲へと発達しつつある上空の雲目がけてベルタを飛翔させた。
ディスプレー全体に雨粒が当たるのが見える。もう雲の中では雨が降っていた。
レーダーで捉え続けていたので敵騎の居場所はすぐに掴めた。
「いたな」
敵騎を発見。
手にする三又槍を両手でしっかりと握りしめている。
あんなに力を込めていれば、攻撃にも防御にも即応できない。
「一気にカタを着ける!!」
両手を広げて疾走!双手の脇差しで同時攻撃を仕掛ける!
敵騎の6つ目はどちらの脇差しから襲ってくるのか?判断が付かないようで、今なお首を左右に振り続けている。
(このディザスター、怯えてやがるぜ)
思った矢先、左下部から迫りくるものが!
両手はすでに攻撃態勢に入っている。防御できない!
そして、脚も止められずに、出来るのは体を反らせてスェーさせるのが関の山。しかも何とかギリギリ。
鈍い音を響かせて、ベルタの騎体が大きく仰け反った。
頭部にダメージを負ったのだ。
「ベルタ!すまない。大丈夫か!?」
瞬時に体勢を起こすと同時に、相手を見やる。
敵騎は、槍の刃部先端部とは逆の先端部である石突部分を先に、振り切った体勢を見せている。
死角から石突で殴ってきたのだ。
今のは槍術ではなく、棒術の技だ。
まんまと騙された!武器の見た目に気を取られ過ぎた。
ついでに、先程の超電磁砲の不発や、あの素人まる出しの槍の握り方も演技だったのか!?
甘く見たぜ。
自らの失態を自責している中。
「ヒューゴ。頭部のダメージは微々たるものですが」
ヒューゴは敵騎から目を離すことなく、ベルタの次の言葉を待った。
「バイザーの可動部を損傷。残念ながら、今後クロックアップの発動が不可能となりました」
と、ベルタの報告を受け。
やられた―。




