-プロローグ-:空色の髪をなびかせて
はじめまして。“ひるま”と申します。
「スゴく綺麗…」
空を見上げる少女の瞳に映るのは。
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
少女は、光の粒子をまき散らして滞空するその姿よりも、甲冑全体を覆うシャボン玉の表面のような美しさに心を奪われた。
はて?あの姿、どこかで見たことがあるような…。
西洋甲冑を主体としたフォルムに両腕、両膝から伸びる刃剥き出しの刀剣類。そして可動式バイザーの付いた兜の裾からなびく髪の毛等々。
特徴溢れる姿だけれども思い出せない。
うーん…。
ふと湧き起る疑問も、初めて目にする幻想的な色彩に、いとも簡単に吹き飛んでしまう。
ジュルっ。
おっと、いけねぇと少女は思わず垂れそうになる涎をすすった。
「タカサゴォ…」
アレに幼馴染の高砂・飛遊午が乗っていると思うと心配でならない。
彼らの主、すなわちアークマスターであるココミ・コロネ・ドラコットは、あの騎士を盤上戦騎と呼んだ。
しかし。
あの騎士の出現は、イヤイヤ、これから繰り広げられようとする戦いは本当に必要なものなのだろうか?
先ほどココミは、チェスゲームにおいて兵士の駒を、凡ミスを犯して相手に取られてしまったところだ。
なのに。
それが、あの空色の髪の騎士となって現れた。
「ねぇ、ココミちゃん。あの兵士の駒、獲られちゃったのに、また戦うの?」
少女“鈴木・くれは”は、ココミたちが行っている魔導書チェスの特別ルール“アンデスィデ”に疑問を投げかけた。
冒頭を読んで「おや?」と思われた方もいらっしゃると思います(^^)。
実は以前、『盤上戦騎あんぷろ!』という名で連載していた作品の焼き直しです。
前回は前書き&後書きで遊びが過ぎた事を反省し、とにかく読み易くを心掛けての再出発。
ネタバレが嫌な方はこの作品だけをお読みください。
偶数日に更新致しますので、ぜひ、お楽しみ下さい。では。