表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼が島  作者: 犬山 猫海
7/7

めでたしめでたし

場面7。路上。


(路上を桃太郎、手下三人が歩いている)

桃太郎:いやあ、斬りまくって刀が錆びてきたよ。

猿:木刀だから錆びないだろ。

桃太郎:比喩だよ比喩。

猿:今度オレも斬ってみようかな。

桃太郎:猿が斬ったらだめだろ。統一コンセプトも崩れるし。

猿:桃太郎はプロデューサーになって、直接的な仕事は全部手下が行うってのはどう?

桃太郎:MTR48とか?

猿:手下何人いるんだよ、お婆ちゃんきび団子そんなに作れないよ。

桃太郎:犬1匹、雉も1匹、で猿が46匹。

猿:それもう立派な動物園だよ。

桃太郎:猿の総選挙があって、ボス猿が決まる、と。

猿:ボス猿がセンターで踊るの?

桃太郎:センターで踊って、写真集も出る。

猿:いいじゃん。イケメン猿、みたいな。

桃太郎:でも印税は全部桃太郎に吸収される。

猿:それ、桃太郎が斬られるポジションだよね。

桃太郎:今日は誰を斬るんだっけ。

犬:キャベツ畑を荒らした中学生たちです。

ナレ:と答えるや否や出し抜けに四人組が桃太郎たちの前に立ち塞がったのでございます。

(四人組が桃太郎たちの前に立ち塞がる)

桃太郎:何? 何か用ですか?

(いきなり黒桃太郎が桃太郎をビンタし、桃太郎が倒れる)

猿:ちょ、何だお前ら!

(猿を黒猿がビンタ。猿、桃太郎のように倒れる)

(雉を黒雉がビンタ。雉、二人のように倒れる)

(黒犬がビンタに来たところを犬は防御、逆にビンタし返す)

黒犬:うわぁ。

(黒犬、倒れる。)

黒雉:この!

(黒雉が犬をビンタしようとするが逆にやり返され、倒れる)

黒猿:野郎!

(黒猿が犬をビンタしようとするが逆にやり返され、倒れる)

(黒桃太郎、まごまごし、)

黒桃太郎:畜生、引き上げるぞ!

(さっさと逃げる黒桃太郎。立ち上がって逃げるそのしもべたち)

桃太郎:いってー。

(桃太郎、頬をさすりながら立ち上がる。猿も立ち上がり、雉を助け起こす)

桃太郎:うわ、じんじんする。ってか、何だったんだあいつら。

犬:(冷静に)桃太郎ですよ。

桃太郎:え?

犬:私たちの鬼退治をネットに上げてましたよね? それを見て、真似したんでしょう。

猿:どういうこと?

犬:私たちは悪、つまり鬼を狩っていた。ですが、それは私刑であって、正当な裁きではなかった。逆に私たちは、正義の御旗を掲げれば何をやっても良いかのように錯覚してしまった。その時点で私たちは悪、つまり鬼になった。それを見て、私たちのような桃太郎一行が鬼退治に来た、ということです。

(気まずい間。うなだれる桃太郎。痛い頬をさする)

猿:オレたちが、退治すべき鬼になっちまってたってことか……。

桃太郎:犬はめっちゃ強いのな。いててて。

犬:キャベツ畑を荒らした中学生たち、成敗しに行きますか。

(沈黙。桃太郎への雉の視線)

桃太郎:潮時、かもな。桃太郎が鬼になってんじゃ、そりゃだめだ。話が成立しない。

猿:楽しかったけどな。

桃太郎:うん、楽しかった。けど……。

(沈黙)

桃太郎:鬼は退治されました。めでたしめでたし。……これが、オチ、なんだな。

犬:そういうことです。

猿:……帰るか。こんな路上で突っ立っててもしょうがないし。

桃太郎:だな。チーム桃太郎も、解散かな。退治されちゃったからねえ。

雉:私たち、鬼ですか。

犬:そうです。

桃太郎:残念ながら。

雉:ここは鬼ヶ島ですか。

猿:まあ、鬼の集まりだな。

雉:鬼が島には、宝がありますよね。

桃太郎:あ、うん。何かは明記されてないと思うけど。

雉:島田満子。

桃太郎:え?

雉:今度は、鬼も桃太郎もやめて、人間として会いませんか。私、島田満子って云います。

猿:……あ、オレ、渡辺大輝。大輝でいいよ。

桃太郎:オレは、梶山。梶山重信。ノブとか、好きに呼んで。

(三人の視線が犬に集中する)

犬:私は犬のままで。

(三人、微苦笑)

桃太郎:本物みたいなもの、か。

猿:なんて?

桃太郎:うん。なんでもない。

ナレ:こうしてお兄さんの旅路は、栄光と汚辱の葉境にて、ひとまずの終わりを迎えたのでございます。めでたしめでたし。



(終幕)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ