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鬼が島  作者: 犬山 猫海
2/7

桃太郎の日常2

場面2。自宅(マンション暮らし)。


(自室のドアを開けて)

桃太郎:ただいまー。って誰も居ないけど。お帰りーって返ってきたら怖いわ、泥棒かよ。あはは。

(通勤鞄を床に置き、座卓に座る。リモコンを操作してテレビをつける)

桃太郎:ニュースは……いっか、もっと楽しいもの見よ、楽しいもの。うわ、ヤクルト対ベイスターズやってる。0対11って。もう見なくてもいいような試合だな。

(台所に行き、電子レンジで飯をチン。居間の座卓に戻る)

桃太郎:ピッチャー、誰だこれ。……伊藤ハム男。知らない奴だな。バッターは、大田原か。こいつは知ってるな。あ、今の失投だったのに。大田原も耄碌したか。

(飯を食べながら観戦)

ナレ:あ、今の失投だったのに、などとのたまうお兄さんは別段野球の目利きではなくよくいる半可通のお仲間で、ずぶの素人のくせにやたらとそしるのは日頃から仕事でお客様にそしられているからでしょうか、いえ、そのような悲劇的背景は一切なく、これもよくあることの一つですが、人間、独り身が長いとついつい独り言が多くなる、というだけの話でして、要するにお兄さん、寂しいから他人に文句をつける点では電話口で身の上話を始める老爺と同じなのでございます。

(飯を食べ終わる。机に置いてあったはがきに気づく)

桃太郎:いい加減、去年の年賀状、片付けないとなあ。謹賀新年、本年もよろしくお願いします、か。こいつとは、入社当時は友達だった気がしたんだけどなあ。さっさと昇進しちゃって、遠くなったっていうか、向こうはもうオレのこと、友達だと思ってないんじゃないかなあ。本年もよろしく、ねえ。なんか儀礼的っていうか、嘘くさいなあ。

(後方床に両手をついて、少し深刻な顔で)

桃太郎:本物が欲しいなあ。

(間)

桃太郎:仕事も電話ばっかりで手応えがないっていうか実態がないっていうか。ま、いっか。仕事はどうにもならんけど、友達なら、オレにはSNSがあるし。

(スマホを取り出し、指でいじる)

桃太郎:お、ITさん、今日も綺麗な写真アップしてるなあ。うちのマンションから見える夜空の汚いこと! 大関のゆるふんさんはアレだな、今日もポエム読んでるな。……エモいな。ふはは、フードファイターは胃袋に復讐されろPはまたどうでもいいこと書いてんなあ。くだらねえ。あはは。あはは。あはは。

ナレ:安アパートに響くは笑い声ばかり、ヤクルトの四番骨川が死球に倒れ両軍揉み合っての痛々しい乱闘模様がテレビ中継されようとお兄さんはスマホを注視してへらへら笑っていたのでございます。


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