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第9話:洞窟を発見しました。

あぁぁ、日が変わってしまった。遅くなってスミマセン。

「調理器具が欲しい」

「突然どうしたんだい?」

「こっちの果物とかは未加工でも十分に上手い。肉とかも塩振って焼くだけで満足できる程だ。一部の野菜類も生で食えるっちゃ食える。けど、卵とかはどうしようもない。さすがに生で食う勇気が出ませんです、はい」

「つまり?」

「茹でるとか揚げるとかしたい!油とか文字通り湧き出てる位あるのに、それを有効活用できないとか歯がゆい!ぶっちゃけ、鍋が欲しいとです」

「鍋か・・・でも、どうやって作るんだい?」

「そこなんですよ」


 この世界に鉱物はある。詳しく調べたわけじゃないけど鉄っぽいものや銅っぽいものもあるのだ。けど、それを精製加工する環境及び技術が俺には無い。無いったらない!大事な事なので2度言ってみた。


「最終手段で岩の塊を力業でくり抜いて、鍋っぽい形に成形してはみたんだけど、分厚過ぎて火が全く通らなかった。因みにそれ以上薄くしようとすると割れる。タガネと石頭ハンマーがあればなぁ・・・」

「現状だと難しいねぇ」

「温泉の源泉を使えば、卵を茹でる事はできるかもしれんが遺跡内には無い上に場所が遠いと来た」

「あ、依然見つけたコンソメスープが噴き出る間欠泉はどうだい?」

「あれは・・・危なくて近づけません。離れた所で溜まっているのじゃ温度が足りない」

「ままならないとはこの事だねぇ」


 ちっくしょう!折角ジャガイモっぽいものやレンコン、お化けみたいな茄子やシイタケが実っている?樹木なんてもんを見つけたっていうのに・・・素揚げしたい!天ぷらとか超食いたい・・・。


 もうねまさに、orzって感じなんです。


「所でちびっ子共はどこ行った?」

「あそこの岩の上で日向ぼっこしてるよ」

「あぁ・・・気持ちよさそうに腹まで出しやがって、しかもあの顔!野生の欠片もへったくれもねぇな」

「あの子らにとっては、ここは楽園だろうからねぇ」


 因みに気を運用出来るとわかってからは、カシアとマグルには常にマナを体内に循環させておくように教え込んだ。いざという時に即運用出来なければ危ないからだ。

 マナはただ呼吸をしていれば取り込めるわけではない。意識して初めて取り込むことができる。そして取り込む時は煙を吸ったような感覚がある為、慣れないうちはよくむせるのだ。

 最初はあの2匹も頻繁に咽ていたが、半日もしないうちに通常の呼吸と変わらないくらい上手くなった。全く子供の吸収力は凄まじい。

 寝てる時は流石にまだ両立する事はできないみたいで、今現在2匹の体内にはマナが無い状態だ。

 マナは常に循環させていないとすぐに体から出て行ってしまう、なかなか難儀なモノなのだ。


「・・・とりあえず起きてる時は問題なく循環させられているようだし、そろそろ運用させて慣らしていくか」

「常に肉体の限界を超えるギリギリの所まで出力を上げて、体に負荷をかけて鍛えるのかい?」

「いや、流石にそれはまだ早すぎる。まずは自分の限界を見極めて、そこから任意に出力調整が出来るようになる所からだな」

「そうだね。限界が分らないと危険極まりないものね」

「あぁ、自滅するだけじゃなく周りにも甚大な被害が出る。幸い、あの2匹は獣とは思えんくらいこちらの言う事に対して素直だ。教えた事はきっちりこなそうとしてくれるから事故はないと思うが・・・」

「人ではないからねぇ、そこは注意深く見守っていざという時は暴発しないよう対策を練っておくしかないね」

「そうだな」


 さて、今日のご飯でも確保しつつまだ見て回っていない箇所の探索でもしてくるとしますか。


「おーいカシア、マグル。飯取りに行くぞー」


 声をかけると耳がピクピクっと動きこちらに顔を向けてくる。

 何やら、今日はなに狩りに行くのー?と言いたげな顔をしている。


「そうだな・・・最近肉続きだからな、魚と何か果物でも取りに行くか」


 そう声をかけてやると、体を起こし一度体を伸ばすとこっちにやってきた。


「おし、行こうか」


 今日は遺跡の裏側、以前あのドラゴンと遭遇した場所のその先に行ってみるとする。川があればそこで魚でも取ろうと思いつつ道なき山を登っていく。

 途中、イチゴのような実を大量につけたヒマワリ?みたいな花を見つけた為、食後のデザートにしようと切り倒そうとしていたら、何やらもうちょっと登った所でカシアが吠えている。因みにマグルは俺の足元で小さめのイチゴヒマワリを食べている。こら、食後のデザートだっての。

 気になるのでカシアが吠えている辺りに行ってみる。そこには、


「洞窟があるな」

「洞窟だねぇ」

「・・・なんか奥まで続いてそうだな」

「明りになりそうなものが欲しい所だねぇ」

「ん~、ちょっと進んでみるか」

「何がいるか分かんないから気を付けるんだよ」

「あいよ」


 ちょっと進んでみた所、中は暗く・・・はなかった。どうも、コケみたいなものが発光してるっぽい。ヒカリゴケって奴だろうか。なにこれ、すっごく欲しんですけど。でも、これがヒカリゴケだとしたら環境の変化にとても敏感なんだよなぁ・・・持ち出すのは現状無理ですな、無念。

 更に奥へと進んでみる、しばらくすると広場に出た。その奥には何やら明るく光っている石?が鎮座している模様。

 近づいてその光っている石を観察してみる。水晶か何かだろうか?薄い水色で奥の壁がぼんやりとだが見えるくらい透き通っている。中々幻想的な光景である。因みにちびっ子2匹は全く興味が無いのか暇を持て余し、俺のズボンに噛み付いたりしている。色々と台無しだ!


「うーん、触っても大丈夫・・・だよな?」

「周りに有害物質を出したりはしてないから、問題はないとは思うよ」

「実はスライムの擬態で、触れた瞬間取り込まれるとか無しでお願いします」

「カシア達が全く反応してないから、大丈夫・・・かな?」

「その疑問形な所に一抹の不安が」

「じゃあ、なんか適当な小石でも投げつけてみたらどうだい」

「そうしよう。それがいい」


 というわけで、適当な石を拾い軽く投げつけてみる・・・何も起こらない。ふぅ、脅かしやがって。

 安心しきって石に触れたその瞬間、辺り一帯が光に包まれた。


「ぬぁぁぁぁっ!?目がぁぁ~目がぁぁぁぁぁっ!!」

「何というか、鉄板ネタお疲れ様です」

「こっちはそれどころじゃねぇ!なーんも見えん!おのれ、〇〇〇!これがラ〇ュ〇に伝わる滅びの言葉の威力か!」

「なんだかんだ言って余裕たっぷりだよねぇ」


 なんて、いつも通りのやり取りをしていたらである。


「ふ~、これでやっと喋れるわ。それにしても石を投げつけるとか酷い事してくれるわね」

「・・・椿、今何か言ったかね?」

「僕は何も言ってないよ」

「こっちよこっち!こっち見なさい!」

「「・・・」」


 ぼんやりと見えるようになった目で声が聞こえる方へと向いてみると、先ほどの水晶?がやんわりと光り、


「私よわたし!」

「「どちらさまでしょうか?」」


 何か、オレオレ詐欺みたいな事をのたまっている水晶がそこにおわします。


「え~っと、私の名前は・・・そう!私の名前はまだないわ!」


 と何処ぞの小説に出てくる猫みたいな事を言っている。


「そうですか、名無しの水晶さん初めまして。俺は藤堂 桔梗、こっちは腕輪の月見野 椿です」

「あ、これはどうもご丁寧に」

「でわ、これにて失礼します」

「って、ちょっと待ちなさい!」

「うち、テレビ見てないんで」

「テレビって何よ!?」

「・・・済まんがその石を・・・しまってくれんか。わしには強すぎる・・・」

「あんたが何を言いたいのか、私には理解不能だわ!?お願いだから、話を聞いて!」

「そろそろ真面目に接してあげたらどうだい?なんだか可哀そうになってきたよ」

「ごめん。悪ノリが過ぎたよ、済まなかった」


 この後、泣きじゃくる水晶を宥めるという不思議な光景がしばしの間広がっていました。



 


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