表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/89

第87話:引導を渡しました。

 カッパーとグレイの変異が終わった。どちらも既に人としての形は失っている上―――――


「イヒ、イヒヒヒっ」

「ぐ、ぅぅ・・・あぁぁ」


 表情は変わらずフェイスイーターのバイザーで覆われていて分かり難いが、とても理性が残っているとは思えない。


 元々フェイスイーターはサソリに近いフォルムをしている。あくまで形状だけはね?サソリも結構人によっては受け付けない形をしてるけど、フェイスイーターはもっとこう・・・生理的に受け付けない見た目をしている。

 で、目の前にいる2体は人の肉体で無理っくりフェイスイーターという形状にトランスフォームしたわけなんだけど、ハッキリ言おう。元のフェイスイーターが可愛く見えるくらいグロい。

 そこそこのグロ耐性が付いた程度のアルが見たら卒倒するんじゃなかろうか。良かったなぁアル、この場に居なくて・・・ん?前にもこんな事思ってた時があった気がする。まぁいいか。

 というか、フェイスイーターが絡んでくると大抵気持ち悪い光景と出くわすんだよなぁ・・・よし決めた。コイツ等はサッサと片付けよう。


(というわけでこれからこのキッショイ2体を片付けるんだけど、2人の戦闘を見た感じ、攻撃面は問題ない。共通の課題として挙げられるのは防御面。避けられない攻撃が来た時の対処法をこれからいくつか実践して見せるから参考にして欲しい)

(うん、わかった)

(はい)


 俺からの念話にミズキとマグルから返事が来る。


(それと対人戦の経験が少ないのは俺のミスだ。対峙する相手がモンスターばかりだったから、対人戦特有の駆け引きとか思考の読み合い等々がおざなりになっていた、スマン)

(別にキョウが謝る事じゃない。私がまだまだなだけ)

(そうです。自分が未熟なのは分かっていた事ですし、早い段階で気づけて良かったです)

(そう言って貰えると助かるよ・・・)


 さぁて、見せるもん見せて。ちゃちゃっと片付けよう。俺は警戒心剥き出しで近づいて来ようとしない2体に向けて歩き出す。

 すると、カッパーだったものが耐えかねたようにこちらへと飛び出して来た。動きがトランスフォーム前と比べて更に早くなっている・・・が、人特有のフェイントや駆け引きが存在しない獣感丸出しな動きだ。

 更に分厚くなったブレードを振り回して来たので、様子見も含めて大きく回避してみる。

 振り回されたブレードが数舜前まで俺がいた地面に叩きつけられる。激しい音共に地面が盛大に抉られる。


 うん、全体的に身体能力は上がっているっぽい。けど、理性が吹っ飛んじゃった所為か動きは直線的で攻撃も全力全開の大振りぶっぱのみって感じかな?


 今度はグレイだったものがこちらに向かって突っ込んできた。うん、こっちも猪だな。尚、こちらは折れたブレードの箇所が鈍器のように膨れ上がっている。アレの直撃は避けたい所だけど今回は敢えて受ける。


 大振りなハンマーのような一撃を受ける。防御も何もしていない、傍から見れば致命的な直撃だ。凄まじい衝撃で足が浮きかけるがどうにか踏ん張り、地面を盛大に足裏で抉りながら滑る程度で済んだ。


「キョウ!?」

「あるじ!」


 ミズキとマグルが慌ててこちらに駆け寄ろうとしたが、俺はソレを手で制す。


「大丈夫だ。今のが見せたかったものの一つな。攻撃が来る箇所にピンポイントで身体強化を集中させる事により攻撃を防ぐ方法だ。これは本当に最終手段」


 攻撃が当たった事で勢いづいたのか、更なる追い打ちを仕掛けるべくグレイだったものが体当たりをして来る。俺はこれも受け砲弾が打ち出されたかのように吹っ飛ばされるが、上手く空中で態勢を変えて着地を決める。


(今、俺が何をやったか分かったか?2人共)


 念話に戻った俺からの質問に考え込むミズキとマグル。


(攻撃が当たる瞬間、後ろに飛んで威力を殺した?)

(ミズキ正解。2人はある程度身体強化で身を守れてはいるけど、それは体全体に施している薄い守りに過ぎない。それだと致命的な一撃が来た時、回避以外の手段が取れない。刀やガントレットで受け流せる内は問題ないが、もし不意を打たれてガードや回避が間に合わない場合は?さっきミズキが遭遇した場面のように余計な動作を挟むと相手の攻撃に対処できない場合は?さっきマグルがカッパーに猛攻を受けその場に縫い付けられてしまった場合は?そんな時、この2つを習熟していればノーダメージと行かないまでも最小限のダメージで乗り切る事ができる)


 俺はすっかり調子づいてしまったグレイだったものの攻撃を往なしながら説明を続ける。この往なす動作は多種多様で先ほど体当たりの時に後ろに飛んで威力を殺したのもその一つ。途中からカッパーだったものも混ざってきたが鬱陶しかったので、一撃拳を食らわして吹っ飛ばす。


(とはいえ、攻撃の直撃を身体強化の集中で乗り切るのはその者の練度に依存する。これからも日々の鍛錬を怠らず精進して欲しい)

(うん、頑張る)

(はい、あるじ!)

(よし、今から身体強化の局所集中による防御法と日々の鍛錬で培った身体強化、この2つが一定レベルに到達するとこんな事も出来るよっていう実演をするから、ちょっと見ててくれ)


 俺はグレイだったものの攻撃の一切を受け流すのを止める。次々と相手の攻撃が俺の体にヒットしていくが、衝撃で体の内部がシェイクされてちょっと気分が悪くなるくらいでダメージらしきものは一切無い。

 相手の攻撃よりも身体強化が上回っている場合、こんな嘘みたいな芸当も可能となる。普段の俺なら絶対しない事だが今回は教える為だから仕方ない。相手からすれば悪夢だろう。

 だというのにこのクリーチャーはそんな常軌を逸した場面に遭遇してるのに、狂ったように攻撃を浴びせ続けてくる。いい加減無意味だと悟って欲しい所だが、肝心の本体だったグレイは―――――


「あぁぁぁ、ご、ゴロ・・・すぅぅぅぅ・・・」


 ・・・この通り。グレイの頭部らしきものが発するのは最早言語と言えるソレではなく、理性など望むべくもない。ただただ目の前にいる存在に襲い掛かる獣・・・と言ったら野生の動物達からクレームが入りそうだ。ん~・・・あれだ、壊れた機械が暴走して暴れ回っている感じが一番近いかも。完全に生きる者として破綻してしまっている。


 流石にちょっと哀れに感じて来た。この2人が選んだ結果とは言え、望んだ結果とはかけ離れているだろう。迷惑極まりない存在ではあったが、いい加減終わらせてあげるべきだろう。


 俺は小太刀を構える。相も変わらず両手のブレードと鈍器でボコられているが、俺の局所的な身体強化によって全て無効化されている。一際大振りになった攻撃が来たタイミングで俺は小太刀を引き抜き、一閃ともいえる一撃を放つ。


 グレイだったものが半分に分かたれ物言わぬ骸へと果てる。最期にグレイの頭部が何やら言っていた気がするが、気のせいだろう。


 さて残るはカッパーだったものだが、俺が殴って結構遠くまで吹き飛んだ所までは確認したが戻って来る気配が無いな。

 戻って来ないだけで、茂みの奥に居るのは分かっている。片を付けるべく、俺はそちらへと歩みを進める。

 すると、あろうことかカッパーだったものは巻き添えを食ったとおぼしきモンスターを咀嚼してる所だった。


「・・・」

「ギヒ、ギヒャヒャッ」


 あれか、理性が消し飛んで3代欲求に忠実な僕と化したとか?なにわともあれ、こんなのを野放しにしたら遺跡都市の人々から血祭にされるのは火を見るより明らかだ。食事中の所悪いけど、始末されてくださいな。

 俺は気配をその場に残した状態でカッパーだったものへと近づく。俺の得意分野は不意打ちによる暗殺といっても過言じゃない。真正面から戦う必要がないのであれば、コレが一番効率がいい。


 こちらの間合いに入った瞬間、再度小太刀を鞘走らせカッパーだったものを切り捨てる。


「ひゃははははははっ」


 両断された事に気づかず、奇声を上げながら食事を続けようと動いた辺りで自身の異変に気付いたカッパーだったものは、体がズレ落ちるのを自らの手で押さえるような仕草をした所で血が噴き出し―――――


「ギィヤァァァァァァッ!?」


 そのまま左右に体が分かれて果てたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ