第84話:襲い掛かってきました。
明けましておめでとうございます。今年もマッタリと更新させて頂きます。
「おめぇら、あの時のガキ共だな・・・」
「あれから俺達はいい笑いものだったぜ?」
「あぁ、これでようやく恨みが晴らせるってもんだ」
「そうだな、殺しちまおう」
まさか返事らしきものが返って来るとは思わなかった。あの時っていつの事だよ?俺達に絡んでくる連中は結構多かったから正直誰なのかサッパリ分らん。フェイスイーターで顔の上部がバイザーで覆われているから余計だ。
にしてもこの2人、自我を保っているのか?フェイスイーターに寄生されているのに?
情報が欲しいな。俺はミズキとマグルに様子見をするよう合図を送り、ジリジリと近寄って来る2人組に再度問いかけてみる。
「それ以上近づくな。で、お前らが行ってるあの時ってどの時だよ?あいにくこっちはお前らみたいなのを一々記憶している程暇じゃなかったんだ。教えてくれないか?」
「どうしようか、兄弟?野郎は八つ裂きにして俺らの餌で良いんだよな?」
「女は捕らえて巣に持ち帰ろう。でもちょっとくらい味見してもいいよなぁ・・・」
うんダメだ。会話にすらなってない。ただ単に人の話を聞いていないだけか?それとも人の言葉に奴らしか分からない言語でも乗せて発してるんだろうか?ちょっと好奇心が湧いてきているが今はそれどころじゃないな。
遺跡内で戦ったフェイスイーターは人体を全然上手く扱えていなくてまるでゾンビみたいな感じだった。最近出没していたフェイスイーターも寄生先のモンスターを扱いきれず変な動きをしているか、そもそも寄生していないかのどちらかだった。正直寄生していない方が厄介という認識だ。
が、どうもコイツ等は違うようだ。動きも人間のソレで、パッと見は趣味の悪い装備をしているガラの悪そうな探索者だ。まぁ単眼がギョロギョロ動いているバイザーを身に着けている奴を見かけたら、誰もが警戒するだろうけど。
更に距離を詰めて来る寄生体。俺は2人に合図を送り3人揃って崖を飛び降りる。途中何度か崖を蹴りつけて速度と態勢を保ちながら下まで降りる。すると―――――
「何処に行こうってんだよぉぉぉ~~~!」
寄生体の1人が垂直に近い崖を文字通り駆け下りて来た。
すぐさま俺達は崖底から離れる。数舜前まで俺達がいた場所に寄生体が着弾し、地面が抉れ破片が周囲へと盛大に飛び散る。
俺は小太刀を咄嗟に抜き、襲い掛かって来る破片を弾きながら更に距離を取る。
地面だったものの雨が降りしきる中、寄生体は自らが穿った穴から出て来る。見た目は地下遺跡内で探索者に寄生してたフェイスイーターと然程大差ないが、これはもう別の何かだ。あれだけ激しく地面に衝突して無傷な所を見ると、フェイスイーターご自慢の頑強さを寄生した生物に反映出来たりするんだろうか?
装備した存在に絶大なバフを齎す代わりに、2度と外せない上に自我を失う呪われた防具みたい。その実態は装備品に擬態したフェイスイーターであった!的な?
「へ、へへ・・・さいっこうの気分だぁ~。あの方が言った通りだ・・・これで俺は俺をバカにしやがった奴らに・・・目に物を見せてやれるぜぇぇぇっ!」
全身凶器と化している探索者の体を巧みに操作しているであろうフェイスイーターがこちらへ突っ込んでくる。歪なブレードと一体化した腕の一本を無造作に振るってくる。
俺はその雑な攻撃を小太刀で受け流してバランスを崩すと共に、寄生体の腹に思いっきりボディーブローを見舞ってやる。
「うっ!ぐげぇぇっ!?」
喉の調子が悪いカエルみたいな鳴声を伴って吹っ飛ぶ寄生体。流石の硬さだ。岩をも消し飛ばすつもりで放ったのに、吹っ飛ぶ程度で済むとは。にしても、今コイツ気になる事を言ってたな?本当に擬態してたフェイスイーターを装備したんじゃないかコイツ。しかも人伝いに渡されて。
そんな事を考えていたら、姿をくらましていたもう一体が奇襲を仕掛けて来た。
「隙だらけだぜぇぇぇ~~!」
「お前の目は節穴だな」
上空から振り下ろされたブレードを躱し、コイツにもボディーブローを見舞ってやる。ついでにさっき殴った奴と同じ方向に吹っ飛ばしてやろう。
「ぐっっはぁぁっ!?」
腹パンされたチンピラみたいな声を出して吹っ飛んでいく寄生体。どっちも寄生体じゃ区別しずらいな・・・前者のフェイスイーターは赤銅色をしてるからカッパー、後者は灰色っぽいからグレイでいいや。
岩壁に叩きつけられてフラついているカッパーに追い打ちをかける形でグレイが衝突する。
「馬鹿野郎!なにやってんだ!」
「おめぇには言われたかねぇ!」
何か揉め出したぞ。呆れて2体の事を眺めていると、ミズキとマグルが話しかけて来る。
「あいつら、私達に任せて」
「いい機会なので、自分が今どの程度なのか試させてください」
「・・・あんなだけど、結構強いぞ?早いし一撃も重い」
「望む所。いつまでも格下ばかり相手じゃ強くなれない」
「なのでやらせてください、あるじ」
「分かった・・・気をつけるんだぞ」
そうして俺は後ろに下がるのだった。
事前にマグルと話してどちらと対峙するかは予め決めておいた。お互い相性が悪そうな方と戦おうと。よって私の相手は目の前にいるコイツ。
「あぁ?ガキが後ろに下がってお前が出て来たって事は・・・女、覚悟は出来てんだろうな?」
こいつは何に対して覚悟と言っているのだろうか?
「分かんねぇって顔だな・・・女は負けたら悲惨だぜぇ?モンスターにやられて食われるだけじゃ済まねぇからなぁ。こちとら勝った後にご褒美があるんだからよ、ただでさえ高いテンションが限界突破しちまって抑えが効かなくなるじゃねぇか!」
そう言って私に斬りかかって来る。成程確かに早い。私もこの刀で敵の斬撃を受け流す。
瞬間、手に衝撃が伝わって来る。鍛錬刀ではないシリカ渾身の刀とはいえ、まともに受けてしまってはおかしくなるかもしれない。キョウの様に私も相手の攻撃を受け流す動きをするんだ。
様子見と言える一撃を受け流し、お互いがすれ違う。かに見えたが―――――
「あめぇよ!」
灰色の寄生体は分かっていたとばかりにもう片方のブレードで突きを繰り出して来た。
刀で受ける?間に合わない!回避―――――
ブレードによる突きに対して私は体を捻ってとっさに避けたが、
「ぐっ!?」
敵はこれも分かっていたという体で膝蹴りを腹に見舞ってきた。嘔吐感に苛まれ動きが鈍った所を両腕のブレードによる同時斬撃を繰り出して来る。
堪らず刀で受けてしまう。叩きつけるような同時攻撃で地面に縫い留められてしまった私は再度蹴りを腹に入れられる。
「・・・っ!」
体が数メートル後ろに滑ってしまったが、2度目の蹴りは来る事が分かったのでどうにか対処出来た。対処と言っても腹に力を入れて歯を食いしばる程度だが、先ほどのような嘔吐感は襲ってこない。スキを見せず相手を見据える。
「チッ!武器に救われたな。その武器ごと俺様の両腕で切り裂くつもりだったんだけどなぁ」
灰色の寄生体は多分に嘲りを含んだ声音でそう言うと、急に声のトーンを落として怒りと憎しみの感情をぶつけてきた。
「お前、対人戦の経験殆どねぇだろ?後ろに下がったガキは慣れてるようだが、女、お前は違う・・・蹂躙してやる。テメェらの所為で俺の人生は滅茶苦茶だ。楽には死なせねぇ。手足をバラして食ってやる。そして俺らの苗床にして散々死んだ方がマシだ殺してくれって鳴かせてやる!ハハハハッ!」
寄生したフェイスイーターと探索者の意識が混ざっているのか、灰色の寄生体は気味の悪い事を言ってくる。違う意味で吐き気がしてくるが、コイツが言ったように私は対人戦の経験が少ない。だからこそ戦う事を願ったわけだけど。
「ダンマリか?所詮、後ろのガキが居ないと何も出来ないヘタレって事だな・・・見掛け倒しも―――――おっと!」
余裕ぶって口を動かしてるスキを付いて斬りかかってみたが、上手く躱された。きっとコレも灰色の寄生体の手口なんだろう。こっちの感情を逆なでして思考力を削ごうとしているに違いない。
誰が大振りなんてするものか。お前の思い通りになんてなるものかという意志を持って寄生体を睨み付ける。
「おぉ怖い怖い。まるでドラゴンに威圧されたみたいだ~おじさんチビっちゃいそう~ギャハハハッ!」
・・・分かっているけどイラっとする!元の姿に戻れば、こんな奴一捻りだけどそれじゃ意味が無い。キョウと同じ場所に居続ける為にも、私は一から強くなると決めたんだ。そう易々とドラゴンの力を振るいたくない・・・が、本当にムカつく!
(落ち着けミズキ。相手のペースに飲まれ過ぎだ。実力が拮抗してるように感じてるんだろうが、今のミズキは普段の動きがまるで出来てない。もっと相手をよく見て冷静に対処してみるんだ)
(・・・ごめん)
(謝る必要なんて何処にも無いさ・・・そうそう、今ミズキが戦っているソイツ何か灰色っぽいからグレイってこれから呼ぶわ。マグルが相手取ってる方は赤銅色っぽいからカッパーね)
(わかった)
キョウからの念話で怒りに染まりそうになった心を今一度落ち着かせる。そして灰色の寄生体、グレイの事を今一度観察しだす。
「チッ、いい感じに視野が狭まって来てたんだがなぁ・・・あのガキが何かしやがったのか?まぁいい。格の違いってもんを教えてやる」
「まがい物の力を貰って勘違いしてる奴がよく吠える」
「・・・言ってくれるじゃねぇか。青二才の癖によぉ。これは先輩として指導しないといけねぇなぁ~~!?」
戦いはまだ始まったばかりである。




