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第83話:お悩み相談をしました。

 現在俺はミズキ、マグルと共に遺跡内を探索している。遺跡内ではソロで動き回る事が多い俺は、探索以外ではなるべく誰かと一緒に行動するようにしている。

 探索で行動する時独りな事が多いのは、単純に俺の動きについて来れる者が居ないという事。それと趣味の時ぐらいは自由気ままに動きたいからである。

 これが調査となれば話は変わってくるけど、俺にとって探索とは散歩のようなもの。気の向くままに動き回り、見たいものを見る。登山道を使った森林浴が感覚的には一番近い気がする。時には自分の知らない未知と遭遇したりするのが堪らないし、興奮するし快感なのだ。


 だからと言って皆を蔑ろにするわけじゃあない。趣味と日々の生活をバランス良くこなせてこそ、健全な充足感を得られると俺は思っている。


「・・・以前と比べて大分ついて来られるようになったなぁ2人とも」


 とある崖の上で景色を見るべく立ち止まると、少し遅れて2人もやって来る。


「はぁ・・・はぁ・・・っ・・・キツイ」

「・・・喋りたくないです」


 まぁミズキもマグルも息絶え絶えって感じだが。


 今回1人じゃないのは、2人がどれだけ成長してるのか確認する為なのとクランメンバー内でとある約束をしているからだ。キョウの探索に付いて行けるようになったら、ご褒美が欲しいそうで。

 何でもクランメンバーの間で俺の探索ペースに付いていくのが一つの目標となっていて、一番初めにキョウのペースに付いていけるようになった者は『キョウが1日何でもしてくれる』というとんでもない話になっているのを、とある筋から聞いたのだ。ちょっと待て、何でもはムリだぞ!?

 慌ててクランメンバーを集め『キョウが1日可能な範囲でアレコレしてくれる』に内容を改めさせ、どうにか被害の拡大を抑えた次第だが・・・アレ?これって俺のメリット無くね?どうしてこうなった。


 とはいえ、現状ではまだまだだ。何とかついて来られる程度では探索どころじゃない。


「以前にも言ったが合格ラインは探索しながら俺と雑談出来るようになったら・・・だぞ?まぁ、前回は途中で脱落してたから大分マシになったけど」


 因みにミズキとマグルは装備的に軽量な部類だから有利な方だ。アルが一番不利で、あのクソ重いランスと盾を持ちながら俺について来なくてはならない。『こんなのムリだよっ!ダメダメだよ~!』って泣き言を言っていたが俺は知らん。

 尚、シリカとツバキも不利な部類だ。他の面々と違って肉体面の疲れが無いから圧倒的に有利だと思われるだろうが、あの2人は体を得てからまだ日が浅い。気配の方は大分改善されたが、物理的に体を動かす面はまだまだ荒いと言える。

 ゆっくり丁寧に動くのであれば問題無いが、高速で動き回り瞬間的な判断を要する探索では、綿密なコントロールが要求される。つまり精神の疲労具合が半端ないのだ。この前なんて、俺の急な方向転換に付いていけずそのまま断崖に突き刺さっていたしな。

 現状一番有利なのはカシアだ。ブラッドシザーズに敗北してからのカシアは一皮剥け、行動の一つ一つにムラが多かったのが成りを潜めた。安定感が増したカシアはここ最近で急成長を遂げた。次の機会にはいい線行くかもしれない。


「次こそは・・・」


 両手に握りこぶしを作って気合を入れ直すミズキ。大分息が整ってきている辺り、次は確かに行けるかもしれない。


「・・・」


 一方マグルの方はいつもと違う感じだ。


「マグルどうした?何処か痛めたか?」

「いえ、そういう訳では・・・」

「そうか・・・何か悩んでいるのなら相談に乗るけど」

「・・・あるじは自分が成長している実感が湧かなかった事ってありましたか?」


 おっと、素直に話してくれるとは思っていなかった。内心驚きつつもちょっと嬉しいもんだな・・・それだけ信頼してくれているという事だろうし。これはしっかりと答えねば!


「・・・あるぞ。周りがすぐ出来るようになっているのに、自分は思うようにいかなかった事ってのはよくあった。そしてそんな時どう感じるかも良く分かる。その時俺がどういう行動を取ったのか教えてやろうか?」

「はい」


 横でミズキもジッとこちらを見ながら話を聞いている。こういう事は大なり小なり誰もが抱えている事だ。稀に一度見ただけで何でもこなせるようになる天才が居るがそれはそれで別種の悩みが生まれると、とある天才は言っていた。


「周りに付いていこうとして練習量を増やした。結果、こうなった」


 俺はそう言ってアンダーシャツの左腕部分を捲り見せてやる。そこには消えない傷跡が今でもクッキリと刻まれている。


「未成熟な体で無理な負担を掛け過ぎた結果、疲労骨折を起こして骨が飛び出してしまってな。後にも先にも親があんなに取り乱した事は無かったよ。幸い治療に長けた人が近くに居たから俺の腕は完治したけど、後遺症が残っていてもおかしくない怪我だった事は確かだ」


 俺の腕をマジマジと眺める2人。


「何が言いたいかと言うと、焦りは禁物だ。オーバーワークは身を滅ぼす。俺自身がソレを証明してる」

「では、一体どうすれば・・・」

「そういう時は一度動くのを止めて何故上手く行かないのか考えるんだ。近くに参考になる者が居るのならその人物を良く観察してみよう。自分の動きと何が違うのか?何が成功の起点となっているのか?その動作・方向性はそもそも自分に合っているのか合わないのか・・・合わないのなら、どうすれば自分に合うかだな」

「「・・・」」

「そっくりそのままコピーして出来たとしてもソレが自身の動きにマッチしているとは限らない。そこから自分ならどうすればより良く改善できるか試行錯誤を繰り返す事が大事なんだ」


 ・・・自分の失敗を話すのって恥ずかしい。けど、俺と同じ道を辿って欲しくないので我慢して話そうじゃないか。


「上手く行かない時ほど闇雲に動いちゃダメ。これは戦闘でも当てはまる。まずは情報収集。しっかりと情報が揃った所で如何にソレらを反映できるかだなぁ。これがしっかり出来ていれば、まぁ勝てなくとも負けはしないだろうね。あ、勿論引き際は謝っちゃダメだよ?逃げる時は逃げる。コレ大事」


 最後にこう言って締めくくるとしよう。


「以上、少しでも悩み解決の力になったのなら幸いだ。なに、その時は焦ってて上手く行かなかっただけだ。真面目なのはいいが、気持ちに余裕が無いといざという時よろしくない。どんな時も気持ちにゆとりを作る事をまず心掛けるといいよ。そうすれば見えていなかったモノが見える様になってくるからさ」


 そうして俺は2人の頭を優しくナデナデする。あぁ・・・マグルのこの気持ち良さそうな顔、堪りません。ミズキは恥ずかしそうにしながらもこちらが撫でやすいように角度調整をしてくる辺り、気持ちいいに違いない。因みに俺はサラッサラのミズキの髪がとても心地よい。


「さて、それじゃあそろそろ戻るとしますか・・・でもその前に」


 そう言って俺は後方を振り返る。そこには探索者らしき人物が2人立っていた。


「何か用か?って言っても答えられそうにないか・・・」


 何故ならその探索者達の顔にはフェイスイーターが張り付いていた。

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