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第82話:あっという間に武器が普及しました。

 いやぁ、分かっていたけど遺跡都市に住まう人達は飲み込みが早い。好奇心旺盛な子供の如く、或いはスポンジが水をグングン吸うかのようにこちらが公開した知識・技術を取り込んでいく。


 鍛錬場で武器の大展示会を行った後、各武器を創ると名乗り出た方々の要請で何度かシリカと一緒にアドバイスをしたけど、最早その必要はない。

 既に独自の技術を抱えていた各店舗は俺達のアドバイスを取り入れ、融合させ今現在も進化し続けている。シリカにお願いして渡した見本はあっという間に追い抜かれ、その事でシリカにも火が付いたのか、現状で作り上げる事が出来る最高の一振りを店舗の特色に合う武器種で創り、見本を渡した時と同じく各店舗に一振りずつ提供。

 その至高の品とも言える武器を渡された各店舗は、最初こそ魅入っていたがすぐさま獰猛とも言える笑みを伴ってこちらを見返して来た。そしてこう一言『必ずコレを超える武器を創って見せよう』と。デストロイのあの人だけは『まずはアオイに在るハルバードを超えなきゃ話になんねぇな』とも呟いていたが。

 シリカからの挑戦状を受け取った各店舗は現状でも凄いペースで成長していたというのに、ニトロを燃料に差し替えたかの如く急激な発展を見せた。その要因は試行錯誤の多さ、これに尽きる。

 何度も試作を繰り返し、失敗作でも実用に耐えれそうな出来であるならば積極的に店頭に並べ、格安で販売された。どの店も競うかのように失敗作を放出し、成功作は店内で考察が行われ成功点及び改善点を抽出された後に店内のショーケースへと並べられる。


 武器に興味を持った人達は格安で出されるソレらで扱いを覚え習熟する。B級品を使いつぶす頃には知識・技術共に熟成され、より良い武器を求めて店にやって来る。この時一定以上の技量を身に着けた探索者達は初めて武器の良し悪しが分かる様になったと口々に言うそうな。

 中にはいきなり店内の武器達に手を伸ばそうとする者が居るそうだが『馬鹿野郎!武器のぶの字も知らねぇ奴がいきなり扱える訳ねぇだろう!?まずは店頭に並んでるアイツらで最低限の知識と技術を身に着けやがれ!』と製作者に蹴りだされる。

 店内で武器を見繕えるのは一定の技量と知識を身に着けた者だけという暗黙のルールみたいなものが出来上がり、一種のステータスとなった。


 定期的に鍛錬場で武器の大展示会と武器の説明が行われるようになった事もあって、武器の印象の悪さは一気に薄れ爆発的な広がりを見せた。

 その影響を受け、今まで注目されていなかったクエストに日が当たる様になった。主に武器製作に使用される鉱石採取系や特定のモンスター素材等がそうだ。

 暫くはバンクでの買い取り額が急変動する事だろう。探索者達はこの流れに乗り遅れないよう、バンクでの買い取り額に目を光らせると共に自身の新たな相棒である武器との親睦を深めて行くだろう。


 武器が流行る一方で素手を貫く探索者も居る。今までは文字通り素手でモンスターと戦っていた方々だが、武器の登場に合わせてガントレットを身に着けるようになった。

 始めこそ感覚が狂うと言って嫌がる者が多かったが、使うにつれて慣れて来た影響かその利便性に気づき始めた。

 何より拳を痛めにくくなったのが大きかった。格段にモンスターを倒すペースが上がり、拳を痛めないとなればその有用性は認めざる負えないだろう。

 ガントレットは武器でもあるが防具でもある。探索者によっては頑なに武器とは認めない者がいるようだが、それは些細な事だろう。

 こうして素手派の人達と対立する事なく、武器は遺跡都市の人達に受け入れられたのだ。





 ある日、ロドニーのおっちゃんとシルヴィアからこんな話を聞いた。最近、フェイスイーターの強力な個体がいるらしいとの事だ。

 何でもそいつは他のモンスターに寄生していないらしく、遭遇した探索者は寄生先を失った個体だと勘違いして奇襲をかけたそうだ。

 結果、返り討ちに合い、今度は自分が寄生先になるのかと思いつつ木に体を寄り掛からせた状態でフェイスイーターと睨み合っていたら、ソイツは興味を失ったかのように森の奥に消えて行ったそうだ。


 俺は食事処アオイで一角魚の香草焼きを頂きつつ2人の話を聞いていた。一角魚とは最近新たに遺跡内で見つかった魚で立派な角が特徴の魚だ。その身は何処となくカジキマグロに似ている。今度は刺身で頂きたいものだ。

 この魚の発見者は目の前にいる2人。おっちゃんとシルヴィアだ。最近何かと一緒に行動してる2人だが、相性はあんまりよろしくないようだ。2人の戦いぶりを何度か見た事があるんだけど、自由に動き回るおっちゃんをシルヴィアがサポートしているという形で、常に振り回されるシルヴィアは苦労が絶えない模様。


「ですから、もう少し考えて動いてくれませんか?ロドニーさんに合わせるこちらの身にもなってください」

「だから言ってるじゃねえか。無理に俺に合わせなくていいってよ。アマンダから俺を見張れと言われてんだろうが、それは監視であってサポートじゃねぇんだろ?」

「そうですけど、ロドニーさんは危なっかしすぎます。アーマーベア相手に何で正面から突っ込んで行くんですか」

「んなもん、その方が面白そうだからに決まってんだろ~」

「・・・はぁぁぁぁ」


 この通り、おっちゃんは連携というものが出来ない。だからこそ今までソロで活動していたわけだが。因みにアマンダという人はヘリオスのリーダーを務めている。会った事は無いけど、中々の女傑だそうで。

 そんなおっちゃんの傍らには少々デカめの斧が置かれている。あの後おっちゃんが選び出した武器が斧だったのだ。両刃で柄が短めのバトルアックス。ドワーフが持っていそうな斧と言えば分かりやすいだろうか。そして手には、例のグローブというかガントレットを着けている。ようやく馴染んだそうで、今ではコレ無しとか考えられんわという程の溺愛っぷりだ。尚、斧はデストロイさん作のものを使用している。


 一方シルヴィアが選んだ武器は西洋剣。セ〇バーが持ってるあんな感じの剣と言えば伝わるかな。刀とは違って叩っ切る事を重視した剣で、シルヴィアは見た目が端麗である事が相まって良く似合っている。

 最初はシリカ作の西洋剣を渡すつもりだったんだけど、そこで西洋剣を担当する事になったフェイタルさんから待ったが掛かった。


 何でもシルヴィアに西洋剣の試作品を提供するから、使用感を教えて欲しいそうな。こちらとしてはシルヴィアがそれでいいのなら全く問題ない事を伝え、本人であるシルヴィアもコレを快諾した。

 そして現在、シルヴィアが使用している西洋剣は試作品の8代目。名前は無い。形状こそシンプルな西洋剣だが使用されている素材は何と驚きのフェイスイーターだ。何をどうやったのか俺は分らんが、あのクッソ硬い甲殻を見事な刃へと加工したフェイタルさんの技術は素直に凄いと思う。シルヴィア的には『良く斬れるんですけど、重さが全くなくて頼りなく感じる』との事だ。


「キョウさん、何とかできませんか?」

「ムリ。おっちゃんは自由に動かないと力が発揮できないタイプ。所謂場を荒す役割になるんだけど、パーティで採用するとしたら、おっちゃんが突っ込んでそれを残りの面々でサポートする感じかな。タイマンだったら基本おっちゃんに任せて、危ない時だけ適宜援護してあげるくらいでいいんじゃない?集団戦なら、おっちゃんが突っ込んで乱れた相手を各個撃破って所。何にせよ、おっちゃんが中心になるから前衛タイプのシルヴィアは常におっちゃんと付かず離れずの距離を保って、おっちゃんに不意打ちを届かせないように立ち回るしかないかなぁ」

「・・・ですよね。せめてこちらの動きを考慮してくれればいいのですが―――――」

「それが出来るのなら今頃パーティの主軸として活躍してるかな」


 俺とシルヴィアからのダメだしに当の本人であるおっちゃんは、


「獲物と対峙したら突っ込んでねじ伏せる。これ程シンプルなもんはねぇだろ」


 この通り、考えを改める気ゼロである。シルヴィアは頭が痛くなってきたのか両手で頭を抱えだし、


「それで負傷されると私がアマンダさんに怒られるんですよ・・・あぁっもう!安請け合いするんじゃなかった~・・・」


 遂にはテーブルに突っ伏してしまう。ガンバだシルヴィア。因みにおっちゃんもシルヴィアも最初だけ俺に武器の基本的な使い方を教えて貰って、以降は独学で技術を磨いている。武器のメンテは各店舗で行ってくれる。

 本当はメンテも自身で出来るようになって欲しい所なんだけど、探索者は毎日のように遺跡へ赴く者が殆ど。少しでも自由に出来る時間が取れないか考えられた結果、今の形で落ち着いた。


 メイン武器が破損した時は直対処できるようにサブ武器を持ち歩く事を推奨してはいるけど、そのままガントレットやグローブで従来の格闘に持ち込む者も居る。丁度シルヴィアが前者でおっちゃんは後者の部類だ。


「話を戻すんだけどさ、結局その新種?のフェイスイーターってどうなったの?」

「今現在も捜索中だそうだ。フェイスイーターそのものがレアモンスターだからなぁ・・・武器を扱うようになったからリベンジしてみたいんだが、中々どうして出会えん」

「そんな簡単に遭遇してたらレアモンスターなんて呼ばれませんよ・・・お願いですから私が担当期間中は出会わないでください」

「それこそ時の運と日頃の行い次第だろうよ。因みに俺の勘ではそろそろ会える気がしてるぜ」

「詳しい日時は分かりますか?私が全力で阻んで見せますから」

「ガハハッやれるもんならやってみろシルヴィア~」


 ・・・うん、意外とこの2人相性がいいのかもしれん。俺は一角魚の香草焼きを綺麗に平らげると伝票を掴み席を立つ。


「支払いは俺が済ませとくよ。情報ありがとな」

「おうわりぃな、今度は俺が奢るぜ!」

「すみませんキョウさん」


 俺は気にするなと言う体で手を振ると、レジを担当している接客の子に伝票を渡し支払いを済ませ、さり気なくエミリさんやキースさんに挨拶をして食事処アオイを後にする。


 この後はミズキとマグルの2人と合流して遺跡内を探索する予定だ。ついでだ、その新種だか強い個体だかのフェイスイーターを探してみるとしよう。

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