第8話:2匹に名前を付けました。
投下。なかなか満足いくものが書けません。難しい・・・。
翌朝、手軽な果物で朝食を済ませた後、俺は柴犬に見えなくもない子狼達に名前を付ける事にした。
パッと見た感じ、耳が垂れ気味でアクティブ性能低めで何処となく縁側で日向ぼっこをしつつお茶を飲んでいるご高齢の方・・・よく言えば落ち着いた雰囲気を醸し出しているのが1匹。
残りの片割れはというと、耳が常におったっていてアクティブ性能高めで落ち着きが無く、好奇心旺盛・・・悪く言えばどこぞの悪ガキ的なそんな感じ。
ものの見事に正反対な2匹である。
因みに毛並みはどちらもフサフサで全体的にダークシルバーなのが老成してる方。柴犬的なツートンカラーで背中側がダークシルバー、腹側が白に近いライトシルバーなのが悪ガキ。
目はどっちも綺麗な銀色。うん、ここは狼っぽいな。尻尾はキツネのようにボリューミーだ。モフりたい。
性別は・・・大人しいのがオス。落ち着き無いのがメス・・・あ、こら!甘噛みして引っ張るんじゃない!唯一の衣服が破けたらどーする!?
つーか、たった一晩でお前ら馴染みすぎ・・・ギャー!袖が伸びる!やめて、マジで止めて!
大人しい方は我関せずで日当たりのいい所に行って気持ちよさそうに伏せてやがるし!代わってくれー。
「キョウ、楽しそうだね」
「この状況がそんな風に見えますかね!?あぁ・・・袖が涎でエライことに」
どうにかアクティブなのから解放されたが被害は甚大である。おのれー!
「で、名前を付けるって話に戻るけどなんか候補的なものはあるのかい?」
「あ~・・・俺って結構センスないからさ、基本的に名前とかって他についている物やら偉人さんから頂いたりしてるんだよね」
「因みに現状はどんな感じで考えてるんだい?」
「もう見たまんまで、銀色から連想できるもので候補を絞っているが」
銀さん、シルバー、ナイフ、フォーク・・・あれ?銀って意外と連想できるもの少ない?俺が単に知らんだけか?
「うんダメだ。碌なもん浮かばない」
「じゃあ他の要素も加えてみよう。キョウは何か趣味とか好きな物ってあるかい?」
「盆栽!」
「はい?」
「盆栽!」
「キョウはあそこで日向ぼっこしてる子狼の事はどう感じてる?」
「じじくさい」
「うん、君にもその言葉をそっくりお返しするよ」
「自覚はある。が、好きなのだからどうしようもない!」
「・・・まぁ趣味嗜好は人それぞれだけどさ」
「まぁ、別にわかってもらうつもりはないさ。自分の趣味を他人に押し付ける気もない」
「話が逸れちゃったね、という事はある程度花木や草花の名前もわかるという事だね?」
「それなりには。銀色で狼で花木類から連想できそうなものは・・・」
しばし考え込む。そうだなぁいくつかあるにはあるが、
「パっと思いついたもので、銀葉アカシアとヤマボウシ・・・かな」
「前者は名前に銀が入っているけど、後者はどんな理由で挙がったんだい?」
「ヤマボウシは別名でヤマグルマとか言われていて、確か品種の中にウルフ・アイとかシルバー・ウルフというのがあったはずだから、そこからだな」
「は~なるほどねぇ」
「というか、俺から情報引っ張り出してるんだからそこら辺容易に想像がついたのでは?」
「全部が全部、見させてもらったわけじゃないからね。特にプライベートが関わる所は避けて見ていないし、重要度が低そうな所も後回しにさせてもらっているよ」
「にしては、こっちの漫画やらアニメの情報は即座に読み取ってたよな」
「いや~面白いよねぇ。君の世界に行く機会があれば、是非とも秋葉原なる所に行ってみたいよ!」
「・・・まぁ俺も人の事は言えんが、椿も大概だよな」
「おっと、また逸れちゃったね。とりあえず、今さっき挙げたのから貰えばいいんじゃないかい?」
「そうだな・・・」
ここから名前にするとなると、何がいいかねぇ・・・名前だからな、適当な付け方はしたくないな。
「・・・カシアとマグルってどうだろ?」
「僕は問題ないと思うよ。因みにどっちがどっちだい?」
「カシアが元気な方で、マグルは大人しい方かな」
「うん、いいんじゃないかな」
よし決定!俺は2匹の近くに行って話しかける。
「お前達の名前を考えてみたぞ。お前がカシアで・・・お前がマグルな」
そう名前を呼ぶと同時に頭を撫でてやる。嫌がっている素振りを見せない事から問題なさげだ。
それにしてもこいつら、こっちの言葉が分っている素振りをちょくちょくするんだよな。
「なぁ、椿。カシアとマグルってこっちの言葉が分っているんじゃないかって思うんだが?」
「僕も見ていてそんな気がしなくもないんだよねぇ。この子達が凄いのかこの世界の動物達が凄いのか」
「他の動物連中もこんな感じだったら、この世界の潜在能力の高さ半端ないな」
「進化できるように促したとはいえ、これはちょっと想定外だね。まぁまだ断定するのは早いけど」
「今後、狩猟対象相手に命乞い的な行動をされた日には・・・俺はソイツを食えるかどうか分らんわ」
「想像するだけで、ゾッとしてきちゃうね」
あ~どうか、カシアとマグルが凄いって事で落ち着きますように!
・・・結論から申しますと、カシアとマグルがスペシャルでした。
あれから子狼達と一緒に探索や食料調達をするようになったわけだが、理性を感じさせる動物は見受けられなかった。初っ端にエンカウントしたドラゴンと狼親子を襲っていたあのイノシシが例外だと思われる。
それにしても流石は異世界、ネズミやウサギっぽい小動物もいればユニコーンを赤くしたような見るからにヤバそうな存在もチラホラ見受けられる。3倍かどうかは調べる余裕が無かった。何が3倍なのかと聞かれると正直困る。
で、だ。最初は自分の狩猟の仕方を子狼達に見せるべく、気配を消して死角から出来るだけ近づき獲物を仕留めるという工程を徹底して行っていた所、次の獲物は自分らがやってみたい!的な雰囲気で熱くこちらを見つめてきたので、
「よしやってみろ!骨を拾うような事態になる前には救出しよう」
と話しかけ、次の獲物を探し始めた。程無くして、羊と鹿を合わせたようなアイツに出くわす。
相変わらず3匹一組で行動している模様。黒い〇〇〇みたいだよなって考えてしまった俺は結構末期なのかもしれない。
さてさて、モコモコとカシア達じゃ体格にかなりの差がある。そもそもどうやって仕留めるのかって話である。噛み付こうにも毛が邪魔で肉まで届かないだろうし、爪による攻撃も以下同文。お手並み拝見である。
モコモコ達は前回と同様、水場で代わる代わる喉を潤している所だ。
俺が実践した通り、気配を消して死角から接近していく。音も立てずいい感じに近づけている。すると、
「ねぇねぇ椿さんや、気のせいかな・・・俺あの2匹がマナを取り込んで気を運用してるように見えるんですが」
「キョウさんや、奇遇じゃのぅ・・・僕にもそう見えてたんだ。おかしいなぁ、マナそのものを取り込み運用するなんていう変態、キョウだけでお腹一杯なのに」
「おいこら・・・でもマナを直接力に変えれるのって、今の所俺と精霊達だけだって言ってたよな」
「そうだね。それってつまり生物としてはキョウだけしか出来ないって事だったんだけど」
「新たな使い手現る!」
「うーん、これも進化を促した結果なのかなぁ・・・それとも何か外的要因でもあるのかなぁ」
「サラッと流されたぜ」
「該当しそうな外的要因となると、やっぱりキョウしか考えられないよねぇ」
「・・・俺がマナを取り込んでる所を見て学習し習得したと?」
「あぁ、ゴメンごめん。でも、そうとしか考えられないんだよねぇ。とはいえ・・・」
「そんな簡単に出来るようになるもの・・・じゃないんだけどな」
「だよねぇ・・・何か要因があると思うんだけど、さっぱりわからないね!」
「・・・何か自信無くなってくるわ。でも、覚えたてなのか扱いがすっげぇ雑だな」
「それこそだよ。覚えていきなりキョウのレベルで運用できたら天才とかそういう次元じゃないよ」
なんて茂みに隠れながら話し込んでいたけど、ちゃんとカシア達の事は見守っていましたとも。
あの後、モコモコが水場に一番近づいたタイミングでカシアが飛び出し、気による全身強化で体当たりを慣行。水場に突き落とされたモコモコは慌てて陸に上がろうとするが、そこにマグルが飛びつきモコモコを水場に沈めていく。えげつない・・・。暫く脱出するべくもがいていたが、更にカシアも飛びついてきた事でモコモコの運命は決してしまった。美味しく頂くので安らかに眠ってほしい。無理だろうが。
狩りが上手くいった後、2匹の子狼達はこっちにやってきて「どう?褒めて褒めて~」って感じで尻尾を振りまくるもんだから俺は、
「よ~し、よしよし。お前たち凄いぞ~いつの間にあんなの覚えたんだこのやろ~」
と、満面の笑みで撫でまくってやった。モフモフは素晴らしい・・・。