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第79話:大規模な展示&説明会となりました。

休みの間、時間を見つけて書き進めてたんですが、結局書ききれずに中途半端な

状態でアップする事に。ゴメンなさい。

「それじゃ、エミリさんもアルもヤバくなったらすぐ念話飛ばしてくださいねー。まぁ大分安定してきましたから、余程の事でも起こらない限り大丈夫そうですけど」

「そうだねー。新しく入った子達も即戦力になりそうだし、この分なら1週間もしない内にアルちゃんを解放できるかも」

「サポートがしっかりしてるから自分の仕事に専念出来る所が大きいかも。お陰で最低限の基礎は既に教え込めたし。後は経験と慣れかな~」


 私が食材を倉庫番をしていたカイムさんに引き渡した事を伝えた後、忙しいようならすぐ撤収するつもりでいたんだけど、思いのほか新人の子達が優秀らしく既にフロアの方を任せているようだ。

 丁度ピークが終わった時間帯というのもあるんだろうけど、軽い会話ができるくらいの余裕が生まれているみたい。


「とはいえ、新人である事に変わりはない。アルヴィス、悪いが・・・」

「おっけーキースさん、次は態度の悪いお客さんの対処法を教えればいいんだね?」

「よろしく頼む」

「それじゃねキョウちゃん」

「は~い、お仕事頑張ってね」


 キースさんがフロアで絡まれている新人のヘルプにアルを向かわせる。新しく入った子は2人でどちらも可愛い系の女の子。おニューの制服が初々しさを醸し出していて、一生懸命に働いている様に思わず庇護欲を刺激されてしまいそう。可愛いの大好きなアルが良く理性を保っていられるなと思ってしまう。


「こ~ら~!私の可愛い後輩に何ちょっかい出してくれてんの!?貴様、覚悟は出来ているんだろうな?」


 ・・・あ、アルの口調が。アレはマジですな。店に悪影響が出ない範囲で納めるんだよ?アル。


「まぁ、あれでも態度の悪い客の対応は俺以上に上手い。こちらは安心して皿を洗える」


 キースさんは先程から食器類を凄い速さで洗っている。よくそのペースを維持しながら会話ができるなと感心してしまう。


「んっふっふ、所でキョウちゃん、後ろの女の子はだ~れ?もしかして新たな新人さん候補?」


 そう言ってエミリさんが私の後ろにいたシルヴィアへと話しかける。


「えっと、その・・・初めまして、シルヴィアと言います。ごめんなさい、本日はご一緒しただけで、その・・・」

「あ~いいのいいの気にしないで。体の動かし方で探索をメインにしてる子だなって言うのは直に分かったの~。とはいえ、もし興味があるのなら遠慮なく来てね?好待遇で雇っちゃうから~」

「はい、その時はお願いします」

「話がちょっと変わるんだけど、うちのお店ってまだまだ食材の確保が安定していないの。もし良かったらなんだけど、毎朝倉庫付近で不足してる食材のリストアップをしてるから、キョウちゃん達と一緒に食材の確保をお願いできないかな?勿論、報酬は出るし時間に余裕がある時だけでいいんだけど・・・」

「え?そんなクエスト、バンクに張り出されてましたっけ?毎朝必ず確認してますけど無かったような」

「あ~バンクを通した正式なクエストではあるんだけど、うちの旦那がバンクで発行したクエスト用紙をその場で配っちゃうから張り出される事は無いんだよねぇ」


 そう、私達がお店裏の倉庫に来る頃には、リカルドさんは不足してる食材のリストアップを終えバンクでのクエスト発行を済ませているのだ。

 クエスト用紙は掲示板に張り出されるのが普通だけど、それだといつ受けて貰えるか分からない。そこでリカルドさんが取った方法は予め探索者を数人確保しておいて、倉庫前まで来てもらい、その場でクエスト用紙を配るなり選んでもらうなりしているのだ。

 今の所、うちのクランメンバーとリカルドさんのクランメンバー、後はロイさんやシエルさんやガルドさんの所で、その日時間を持て余してる人達が不定期でやって来る形だ。たまにロイさん達本人もやってきたりする。

 

 にしてもサラッとシルヴィアを勧誘してくる辺り流石エミリさん。日々消費される食材はかなりの量で、裏方方面でも人手不足は否めない。人材確保は主にリカルドさんが担当しているが、優秀な人材足り得る者にはとりあえず声を掛けておくその姿勢は経営者の鏡と思わざる負えない。


「そういう事でしたら、お力になれるかと」

「ほんと!?やったねキョウちゃん、新たな人材ゲット~だよ!」

「たくましいですね、エミリさん。後でリカルドさんに協力探索者が増えた事を伝えておきますよ」

「助かる~・・・おっと、新しいお客さんが来たみたいだね。それじゃまたね~」


 私とシルヴィアもそろそろ行くとしよう。近くにいたキースさんに撤収する事を伝えて私達は食事処アオイの裏口から離れ、一旦バンクに立ち寄る事にする。





「おっちゃん、終わったー?」

「キョウ、てめぇこの!すげー面倒臭かったぞ!」

「だからおっちゃんにぶん投げたんだよ。でも、その分いい額になったでしょ?」

「・・・まぁな」


 既にフェイスイーターはそれぞれの報酬に分けられており、私の分は素材そのままの状態で、おっちゃんは売却を選んだ模様で結構な量の金判が積まさっていた。


「これで4割だって言うんだから、暫く空いた口が塞がらなかったぜ」


 おっちゃんは目の前に積まれた金判を見ながら終始笑顔なご満悦状態だ。周りの探索者達も羨ましそうにこっちを見ている。

 さて、余りおっぴろげていると周りからの視線が辛くなってくる。さっさとしまって面倒な連中が絡んできたりする前に撤収撤収。

 私がフェイスイーターの素材をバックパックに仕舞いだしたのと合わせて、おっちゃんも必要な枚数分の金判を手元に残し、後は全てバンクに預け入れる。


「さて・・・この後キョウは仲間連中と合流して帰るんだったか?シルヴィアの嬢ちゃんはそれに付いていくと」

「そうだね。これからバンクに寄ってくって念話で伝えた時に近くにいるって言ってたから、もうじき来ると思うよ」

「はい、ロドニーさん」


 今更だけど、おっちゃんの名前はロドニーって言うのだ。ガルドさんをコンパクトにしたような感じの人で、一見細身に見えるんだけどその体はよく鍛えられており、無駄な肉は見当たらない感じ。

 角はバッファローというよりはミノタウロスの様な弧を描いた形状をしており、鋭い先っぽが天を向いている。


 3人で雑談めいた会話をしばし続けていると、バンクの入り口付近に見慣れた姿が目に入った。


「お父様、お待たせしました」

「やぁキョウ、待たせたかい」

「いや、ついさっき用事が済んだ所だよ。さて・・・特に何もないようならこのまま帰ろうと思うけど?」

「あっお父様、1か所寄りたい所があるんです」

「ほら、以前私達が衣服や防具関連で情報交換したお店。その一つの『カラミティ』から相談を受けたんだ」

「ほうほう」


 こっちの世界の衣服関連のお店は何でかカラミティとかフォビドゥンとかフェイタルといった物騒な意味合いの名前が付いている。謎だよね。まぁ今はそんな事を考えてる場合じゃないか。


「それで、相談の内容というのは?」

「何でも最近武器に関する相談を受けるようになって、初めは防具や衣類専門で武器は専門外だと断ってたんだ。けど、余りにも武器を求める声が多いから試しに作ってみようかって話になったんだけど、武器に関する知識が無さ過ぎてどうしていいのか分らんってなって、私達に誰か武器に詳しい人を紹介できないかってなったんだ」


 ツバキが内容を教えてくれる。にしても中々タイムリーな話だね。丁度おっちゃんやシルヴィアと話していた武器関連の話がここで繋がってくるなんて。


「それで私って事ね」

「武器絡みの技術及び知識に関してはお父様からの許可を頂かないと他の方に話すのは難しいですし、何よりも武器に関してはお父様の右に出る者は居ないじゃない?」

「という事でキョウも一緒に『カラミティ』に来て欲しいんだ。出来ればそこで武器に関する情報提供をしてあげて欲しい」

「・・・ん~、それってどんな武器が存在してるのかの説明と取り扱いについて話せばいいのかな?」


 いや、それだけじゃダメか。最低限の使い方もレクチャーしないとお客さんがどんな武器を求めていて、どれが該当する武器なのか説明できない。となると、実際に武器と触れて貰いながら私が武器を使った実演をするべきかも。


「あ~・・・思った以上に説明が大変かも。うん、まぁ何処まで公開するかは私の方で考えればいいか」

「ご迷惑をお掛けします、お父様」

「いやいやシリカ、別に迷惑じゃあないよ。ただこの後シルヴィアに武器のレクチャーをする予定だったんだけど・・・おっとそうだ、こちらロドニーさんとシルヴィア。2人共ヘリオスっていうクランに所属してる探索者だよ」


 そういやおっちゃんとシルヴィアの紹介をしていなかった。


「キョウに名前で呼ばれると違和感スゲェな・・・ロドニーだ、よろしく頼む」

「シルヴィアと言います。よろしくお願いします」

「私はシリカよ。よろしくね」

「よろしく。僕はツバキって言うんだ」


 しばし親睦を深めてもらう場を設け、互いに雑談が出来るくらい距離が縮まった所で私はこの後どうするかを話し始める。


「シルヴィア、本当は戻ってゆっくりと選んでもらう予定だったんだけど、私と一緒に来てもらっていいかな?そこで色んな武器を実際に見て触って貰いつつ、自分に合いそうな武器を選んで欲しいんだけど」

「私は全然構いません。寧ろ部外者の私が付いていってもいいのでしょうか・・・」

「秘密の会合という訳でも無いし、大丈夫っしょ」


 そんな私の軽い態度を見ていたおっちゃんが、今の話に乗っかってきた。


「お、なら俺も付いていっていいか?フェイスイーターの脅威に晒された身としちゃあ武器がどれ程のモンなのか、この目で見ておきたい」

「じゃあ皆でカラミティに行きますか」


 という事で、この場にいる全員で件のお店に行く事が決定。すぐさま移動を開始し、カラミティに着いて早速ツバキとシリカがお店の人と話をすると再度移動する事に。

 なんでも、武器の実演をして貰うのなら広くて被害が出ても問題ない場所が良いだろうという事で、遺跡都市の方々ならば誰でも使用可能な鍛錬場でする事になった。


 この鍛錬場、ちょっとした競技場並に広い。屋根とかは無くだだっ広い空間を頑丈そうな石壁でグルっと囲った場所だ。

 入口は一か所で扉は無い作りをしている。中にはチラホラと鍛えていると思しき探索者が見受けられた。


 お店の関係者が武器に興味がある人達にも声を掛けたのか、鍛錬場に着く頃には結構な大人数に膨れ上がっていた私達。うん、普通にカラミティ以外のお店の人達も混ざっとる。中に入ると鍛錬をしていた人達が何事かとこちらへ視線を向けて来る。お騒がせしてしまい、申し訳ないです。


 鍛錬をしている人達の邪魔にならなそうな一角で、シリカに鉄製の武器を即興で用意してもらい地面に突き立てて行く。

 用意してもらった武器群は短刀、小太刀、大太刀、刀、西洋剣、刺突剣、双剣、大剣、弓、槍、斧、ハンマー、ランス、ハルバード、ガントレット。今回は鎖鎌、薙刀、トンファーにはご遠慮頂いた。

 もしシルヴィアがこの中に合う武器が無いようなら省いた武器達の事を教えようと思う。


「今回用意した武器群はあくまで一例です。今後お客さんの要望を聞いて製作する際の参考としてください」


 という訳で、私は集まった人達に各種武器群の特長と最低限の取り扱いを説明していく。切れ味が落ちたらどうするのか、研ぎとは何か、折れたり欠けたり破損したら修復は可能なのか、普段のメンテナンスはどうすればいいのか等々、本当に多岐に渡って教えた。


 説明を終え、今は地面に突き刺した武器群を実際に見て貰いつつ、試しに扱ってみたい人が居れば別のスペースに移動してもらい、これまたシリカに即興で用意してもらったお試し用の武器を用いて案山子相手に試してもらっている。

 これらの案内をシリカとツバキに任せる。ロドニーのおっちゃんとシルヴィアは、現在武器を見て回っている最中だ。


 私は私で良い武器を作るにはどうすればいいのかとか、武器に使用する鉱物の配合率を聞いて来た人達の対応をしている。とはいえ、鍛冶に関して私はサッパリ分からない。なのでその事を伝えた上で「こちらも手探りで武器を作り使用しながら日々研究しています。通常の鍛冶で武器を作っている訳ではなく極めて特殊な方法なので、説明は困難です。ですが、鉱物を提供して頂けるのなら、各武器1つに限ってそれを使用し皆様の目の前で見本を作る事は可能ですので、気になる方は実際に見て頂ければと思います」と伝えた。


 すると各種お店のオーナーさんだったのか、傍にいた人に何やら指示を出し走らせる。その人らが戻ってくるまでの間になにやら話し合いを始めた。程無くして先ほど走らせた人らがバックパックを背負って戻って来る。そのバックパックを受け取ったオーナーさんらしき人達が私の元にやって来て、


「これで見本を作って頂きたい。私のお店・・・カラミティは短刀、小太刀、大太刀、刀の4種類を」

「こちらは西洋剣、双剣、大剣をお願いしたい。店の名前はフェイタルと言う」

「我が店はフォビドゥン。刺突剣、槍、ランスの見本製作を頼めるか」

「うちはデストロイって店なんだが、斧、ハンマー、ハルバードの3つを頼むよ」


 ・・・そう来たか。各お店で種類を限定し競合を防ぐつもりだね。

 私はシリカを呼んで各お店が提供してくれた鉱物を元に見本を作って欲しい事を伝え、オーナーさん達の目の前でやってもらう。傍から見れば、シリカが鉱物に触れたと同時に消え、数秒後には武器となって出て来る理解しがたい光景だ。

 その光景を見て各お店のオーナーさんは始めこそ驚いていたが、やがて納得したような顔になり、1人が代表として皆の総意を伝えて来る。


「なるほど・・・こうやって君の所は武器や防具を作っているのか。先程の説明前も一体何処から武器を取り出したのか分からなかったが・・・これは確かに説明できないか」

「ご理解頂けて何よりです」

「・・・となると、鉱物の配合率も彼女独自のものなのかい?」

「はい。私は武器の使用感を伝えているに過ぎません」


 うん、嘘は言ってないよね。


「そうか・・・これは本当にゼロからの挑戦となりそうだ。因みに君の所で武器を売り出したりはしないのかい?我々に態々こんな面倒な説明をせず、独占してしまえば君の人生は安泰だったのではないかと思うのだが」


 こちらの真意を計りかねているのか、探りを入れてくるオーナーさん。表情こそ柔らかいが、その目はとても真剣である。

 別段こちらは隠し事をしている訳でもない。なので、私は思っている事を口にする。


「今の所身内の分だけで、外に放出する予定はありません。何故武器に関する情報を公開したのかについては、遺跡都市に住まう人達にもっと自衛力を付けて欲しかったからです。遺跡都市全体を巻き込む大事が起こった時、素手で挑むよりも武器で武装してくれてる方が相手は脅威に感じるはず。そしてそんな出来事が起こった時、私達だけでは武器の供給が追い付きません。折角武器に対しての偏見が薄れてきている事ですし、これを機に皆さんに協力してもらって一気に武器の有用性を広めつつ、遺跡都市に住む人達全員から武器に対する悪感情を払拭できればと考えました。因みに私は商人として立ち回るよりも生涯探索者でいたいと考えてる人間でして・・・正直、机の上の書類と戦うのは苦手なんです」

「・・・はっはっは!そうかそうか。となれば、今後も武器に関してのアドバイスはしてくれるのかな?」

「私が教えられる事であれば」

「それが聞ければ私は十分だ。他の者はどうかね?」


 代表として話していたオーナーさんが振り返り、残りのオーナーさんに確認を取る。


「聞きたい事は聞けた。何も問題はない」

「こちらもだ」

「・・・一つ聞きたいんだけど、最近流行っている食事処アオイってお店に寒気がするようなハルバードがあったんだけど、アレはその子の作品かい?」


 デストロイのオーナーさんである小柄な女性が、私の後ろで成り行きを見守っていたシリカに視線を向けて問うて来る。


「はい、そうですが」


 私が答える前にシリカ自らが答えた。するとデストロイのオーナーさんは不敵に笑ってシリカにこう言った。


「あたしの目標はあのハルバードを超える事さ。いつか必ずあれ以上のモンを作ってアンタに見せてやるよ」

「えぇ、楽しみにしているわ。でもまだまだ私も成長する。果たして貴女に追いつけるかしら?」

「言ってくれるねぇ・・・俄然やる気が出て来るってもんさ!」


 周りのオーナーさんも2人のやり取りに触発されたのか、商人風な感じから一気に職人の顔へと変わっていた。

 どのオーナーさんもシリカの事をライバル視している感じだ。今は差があり過ぎて比べるべくもないが誰も届かないとは思っていないようだ。寧ろ追い抜き更なる高みを目指そうと言う挑戦者のソレだ。

 大人気だねぇシリカ。モテモテじゃん。


 さて、作る側の方は一段落付いた事だし今度は使う側・・・探索者の方々に武器の有用性を示すとしようかな。今も別スペースで素振りしたり案山子相手に試して貰っているけど、しっかりと修練した者が武器を振るうとどんな事になるのかその目に焼き付けて貰うとしよう。


「それでは皆さん、私はこれから武器の実演を行うので最後までお付き合いして頂ければと思います」


 そう言って私は案山子が設置してある別スペースへと移動を開始する。


 まずは短刀から行ってみようか。こっちの人達は短刀がモンスターを捌く為のナイフと差して変わりないと感じたようで、殆どの人が目を向けていなかった。私の説明が上手く伝わらなかったのかなぁ・・・一部の人が食い入るように見ていたくらい。

 少ないながらも短刀を試していた人達は、案山子の表面に薄っすらと傷をつける程度だった。中には刃が欠けてしまったり折れたりしてシリカに謝っていた人も居たけど予め想定していた事なので、直にシリカが新しいのを用意し気にせず思い切り試して欲しい事を伝えていた。

 人気という意味では無い部類に入るだろうけど、でもまぁ、私の動きを見れば少しは考えが変わるはず。お試し用の短刀を受け取ると案山子の前に立ち、私は素早く斬り付けた。

 用途にもよるけど、短刀は中途半端な振り方じゃその性能を引き出す事は出来ない。如何に早く振り抜けるか・・・ここが大事な要素になる。

 案山子の左腕右腕と分かりやすい斬り傷を付けて最後に案山子の中心部に突きを放って終了。お試しの短刀は深々と案山子に突き刺さり、自身の存在感をこれでもかとアピールしていた。


「短刀はその小回りの良さを活かす武器です。狭い洞窟などで扱い易いのは勿論の事、素早く動く小型のモンスターを良く相手にする方には相性がいいと言えます。ガントレットがクロスレンジでの打撃とすれば、短刀はクロスレンジでの斬撃という位置づけです。最後にお見せしたように刺突も可能です。ですが、コントロールを謝ると刃が折れてしまうので突きを繰り出す時は気を付けましょう」


 その光景を見ていた人達は顎が外れるんじゃないかと思ってしまう位あんぐりしていた。フフフ、この位でそんな驚き方をしていたら最後は顎が地面についちゃうぞ?


 私は次々と武器の実演を披露していく。大太刀や大剣は言うに及ばず、斧やハンマー、ハルバード等の重量武器も結構な人気があった。

 槍の攻撃範囲の広さに注目していた人もいれば、西洋剣の力強さに惹き付けられた人もいる。ランスの貫通力に惚れ込んだ人も現れたりした。

 刺突剣の優雅さの虜になって早速フォビドゥンさんに製作を依頼していた人も居たなぁ・・・意外だったのは人気が出るだろうと予測していた双剣がそうでもなかった事。

 双剣の感想をいくつかリサーチしてみた結果、誰もが「難しそう」と言ってきた。うん、全くもってその通り。よく見ていらっしゃる。


 一通りの実演を終えて再度武器の観察やお試しを再開する。始めは人気の無かった短刀も実演で度肝を抜いたせいか、ちょっとした人だかりが出来てしまっている。小太刀や刀も実演前とは比べ物にならない程の人が集まっていた。


 よしよし、皆いい感じで武器に興味を持ってくれた。これなら武器を作ってくれるお店も気合が更に入るはず。実際、ちらほらとお店に依頼している探索者が出てきているしね。

 私が内心で計画通りって感じでほくそ笑んでいたら、小柄な男の子が遠慮がちに話しかけて来た。


「あ・・・あの、こちらの武器の実演ってしないのでしょうか?」


 そう話しかけてきた男の子の手には弓が収まっていた。


「おっと。弓は製作店がいなかったから敢えて実演はしなかったんだけど・・・見てみたい?」


 私が男の子にそう問いかけると、力強く首を縦に振ったので男の子が持っているお試し用の弓を貸して貰って、弓専用のスペースへと移動する。

 弓は短刀以上に人気が無く製作店も名乗りが無かった上、全く人が寄り付いていなかったので除外していたんだけど、いやはや反省しないとダメだね。気になる人が居る以上、しっかりとやらせて頂きます・・・あれ、ってことはガントレットも一応実演しといた方がいいのかも。各お店が防具として普通に取り扱っているから、実演は不要と思っていたんだけどな・・・弓の実演が終わった後、皆に聞いてみようか。


 私は後ろから熱い視線を向けて来る男の子の期待に応えるべく、お試し用の弓の感触を確かめ始めるのだった。

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