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第78話:皆の武器に対する意識が変わってきました。

 フェイスイーターをバックパックに詰め込み、遺跡都市へと帰還する道中おっちゃんとシルヴィアからこんな話を聞いた。最近、武器を求める探索者が増えてきている・・・と。


「へ~いい事じゃないですか。遺跡都市の方々が武器の有用性に気づき始めたって事ですよね?」


 私が2人にそう聞き返してみると、


「いや、ありゃあ単にフェイスイーター相手じゃ自分の拳がイカレちまうってんで、代用品を探してるってだけじゃねぇかな」


 と、おっちゃんは仰せだ。


「でも、キョウさん達のクランの活躍を見て武器に対する認識が変わってきているような気もします」


 とシルヴィアがおっちゃんの見解に懐疑的な意見を発する。当のおっちゃんはどうでもよさげな感じで肩を竦めている。


「そういえば遺跡都市に来た当初と比べると、最近は武器を所持していても罵って来る探索者とか明らかに見下してくる貴族モドキな連中を見かけないかも」


 寧ろ、武器に興味を持ってアレコレ聞かれる事が多くなった気がする。この調子で武器に対する妙な偏見が薄らいでくれればこっちとしても動きやすくなってありがたいなぁ。


「まぁ、あれだけ派手にキョウ達が武器でモンスター共を蹴散らしていればなぁ・・・嫌でも認識は変わって来るか。かく言う俺も、今回自分の拳が全くの役立たずだったわけだしな。は~・・・今から武器の扱いを覚えろってか?めんどくせぇなぁ・・・」


 おっちゃんがゲンナリとした顔をしているが、いい機会だから言っておこう。


「武器を持つ持たない以前に、素手ってのはどうかと思うよ?せめて手甲とかガントレット付けて殴ろうよ」

「そうですよ。拳を痛めなくなりますし、普通に攻撃力も上がりますよ?」


 ロイさんもフェイスイーター相手に拳を痛めてからは、しっかりとガントレットを付けるようになった。私とシルヴィアにダメ出しを食らったおっちゃんは、凄く嫌そうな顔になって、


「以前付けた事があるんだけどよ、アレって身体強化した時に自分のフォースを吸われる感じがしないか?身体強化する上で感覚が狂うわ、余計に消耗するわでそれっきり付けなくなったんだが」


 あ~成程、装備品あるあるですな。革や牙や骨、鉱物などの素材は固有のマナを内包している。勿論、ソレらを加工して作られた装備品にも固有のマナが内包しているんだけど、稀にマナが抜けている一品と巡り合う事がある。

 どうしてマナが抜けるのか諸説あるらしいんだけど、素材そのものが長い年月を経てマナが抜けるという人も居れば、加工する過程での何かと反応して抜けるんじゃないかと日夜研究している方々が居るそうだ。

 現状、前者の説がリードしてるそうだけど、それだと複数の素材を使った装備品での説明が付かないと後者の説の方が反論しているそうで。

 シリカとツバキもその現象には注目していて、どうにか再現できないか調べる一方で時間経過で本当にマナが抜けるのか実験中だそうだ。


「おっちゃん、ソレは寧ろ当たりの装備だよ?装備品に使用されてる素材には固有のマナが含まれているんだけど、稀にマナを含んでいないのが存在するんだ。その装備品は身に着けると最初こそ自分のフォースを吸われるんだけど、自身のフォースで満たされたその装備品は凄く馴染んで、以後自分の手足と同じ感覚で身体強化すら受け付ける凄い装備になるんだ。一度自分のフォースで馴染んだら、他の人が使ってもその性能は引き出せないから最早自分専用の装備と言えるね」

「・・・マジか」


 スゲー話を聞いちまったぜって顔をするおっちゃん。そのおっちゃんを呆れた顔してシルヴィアが見つめている。


「遺跡都市にいる探索者の方でこの話を知らない人がまだ居たなんて・・・その希少さと有用性からユニーク品と呼ばれてて、探索者の方々なら喉から手が出る程欲しい一品なのに」

「装備なんざ二の次だったからなぁ・・・あんなのモンスターの攻撃を受ければ、即イカれる身代わり品ってのが俺の認識だな。最低限身に着けてて大事な箇所を守れれば御の字ってな」

「今回の一件で改めてください。良い装備は早々モンスターの攻撃を受けても破損しませんし、致命的な一撃から身を守ってくれる大事なパートナーです。もっとマトモな装備で身を固めていれば、全身血まみれの傷だらけな状況を回避できたかもしれないんです。まずは―――――」

「わかった!嬢ちゃんの言いたい事は良くわかった!さっきも違う理由でキョウにコッテリ絞られたばかりなんだ、勘弁してくれ!」


 おっちゃん、涙目である。いい機会だからその探索始め立ての人が身に着けてそうな初期装備みたいなのから卒業して欲しいものだ。


「・・・これ、凄く軽くて動きやすいからスゲー気に入ってたんだけどよ」

「何か言いましたか?そもそもですね―――――」

「何でもございやせん!」


 おっちゃんのボソッとしたボヤキに反応したシルヴィア。おっちゃん、更に涙目・・・まぁ自業自得だよね。


 因みに何で私が素材のマナが抜け落ちる云々の話を知っていたかというと、以前シリカ達が遺跡都市の衣服及び防具類全般を扱ってるお店を巡ってアレコレ教わった際に、自身らが作った衣服や防具を情報料として渡したら向こうさんもサンプルとしていくつか提供してくれた物があったのだ。

 その中にマナの抜けた衣服が混ざっていて、疑問に思って聞きに行った所、稀に出て来るユニーク品である事を教えて貰った。

 普段から身に着けていた衣服や防具には素材特有のマナが含まれていたのに、その衣服だけはマナが含まれていなかったものだから、見つけた時は驚いたもんです。


「それで、おっちゃんは死蔵されてる奴を引っ張り出すとして、シルヴィアは何か武器を持とうとか考えてないの?」


 おっちゃんに助け舟を出すわけじゃないけど、これからシルヴィアが武器を持つのならば何かしらのアドバイスはできるんじゃないかな。

 私から話を振られたシルヴィアは少し考える素振りを見せた後、


「武器を持とうとは思ってるんです。けど、自分に何が合っているのかが分からなくて・・・」

「なるほど・・・だったらこの後、おっちゃんをバンクに引き渡してエミリさんに食材を渡したら、シリカ達と合流して戻る予定なんだけど一緒に来る?そこでなら一通りの武器に触って自分に合っているのを探す事も出来るけど」

「え?いいんですか!是非お願いします!」

「そうか、俺はこの後バンクに引き渡されるのか・・・」

「当然。それともこのフェイスイーターの残骸、諦める?」

「それはない!」

「じゃあバンクでの状況説明および、フェイスイーターの素材売却手続き諸々よろしくお願いします」

「・・・めんどくせー!」


 流石にそこまで面倒を見る気はない。

 他所のパーティや探索者にモンスター討伐を移譲した場合、そのモンスターの第一発見者は一定の報酬を受け取る事が出来る。基本的には討伐者が全体の8、発見者に2割が渡される仕組みになっている。

 この報酬の比率は討伐者と発見者の間で調整する事が出来るが、討伐者側が発見者よりも比率が低くなる事はない。半等分も不可な為、発見者側はどんなに多くても4割が最大値となる。

 今回は正規の手続きを踏んでいない為、バンク側にはそこら辺の状況説明が更に必要となるんだけど、ハッキリ言ってこの手続きは凄く面倒臭い。なので私は、受け取る報酬比率を最低の6に設定する代わりに面倒な手続きは発見者側に委ねる事にしているのだ。

 因みに遺跡内で解体して互いが納得できる比率で分ける事も可能だが、分けた片方から後々激レアな素材が採れたとしても分けた段階で所有権は既に移ってしまっているので再配分は出来ない。

 こういう事故を防ぐ為にも上記手続きをするのだ。これさえやっておけば、バンクで解体が行われて報酬が確定した段階で比率に乗っ取って分けられる為、片方が一方的に損するという事は無くなる。詳細をしっかりと教えてくれるのでとても安心だ。


「まぁ、フェイスイーターの4割が手に入る代償という事で諦めて。ほら、寄生先のホーンラビットはおっちゃんが倒したから、こっちは問題ないよ」

「肉の美味さは認めるが、懐的には全くよろしくないんだよなコイツ。通常は2割しか入らない所を倍に出来る・・・ここでゴネるのはバカの所業だわな」


 よし、おっちゃんが折れた。これでバンクにおっちゃんと該当素材を預ければ問題ない。もうじきミリアさんが待ち受けるゲートに着く事だし、私はシルヴィアと一緒にエミリさんのお店に立ち寄って依頼された食材を卸しに行くとしよう。

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