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第77話:ちらほらと出没し出しました。

※2020/03/05 一部文章を修正。

 ガルドさん達との話し合いも終わり、フェイスイーター絡みの対策及び対処法の告知と注意喚起もバンクを通して行った。

 対策と言っても遭遇したら刺激せず逃げに徹してもらい、襲い掛かってきたら火を使って足止め或いは追払う。その間にバンクへと遭遇報告を行って貰い、対処できる私達の誰かにバンクから連絡が来るので後は現地に赴いてコレの討伐に当たる・・・こんな感じである。


 今の所は数件遭遇報告があり、無事討伐している。中には私達の手を借りずに討伐したパーティもおり、そのパーティには火の能力に長けた探索者が居たという報告を貰っている。

 が、全員無傷とはいかず中には重傷を負った探索者も居たそうで討伐の代償としては余りにも大きなものとなったようだ。

 そのパーティでの出来事も噂となって遺跡都市へ広まり、フェイスイーターと遭遇したら無理せず撤退すべきという意見が一応は浸透した。


 それでも好奇心旺盛な探索者、遭遇報告がもたらされると共にフェイスイーターがどれほどの存在なのか戦いを挑む者も少なくなく、大抵探索者の負傷報告ももたらされる。負傷報告であって死傷報告ではないのがせめてもの救いと言えるだろうか。或いは死なずにキチンと逃げおおせる辺り、流石と言うべきなのか。

 逃げる時ちゃんとフェイスイーターにマーキングも施しており、うちらが赴く事になってもマーキングした本人が速やかに案内してくれるので、見失う事はほぼない。


 そんなこんなで見事討伐し、バンクが高額で買い取ってくれるという話が広まるのは時間の問題だった。

 重傷者を出しながらも見事討伐してのけたパーティがバンクにフェイスイーターの亡骸・・・素材を持ち込み、大量の金判を受け取っていたのを見た探索者がこの話を広めたのだ。

 私達が手を貸して討伐しても一定以上の報酬が支払われるのも影響して、一攫千金を目論む探索者がフェイスイーターを探し回る事態に発展してしまった。

 それほど数はいないのか、頻繁に私達が狩り出される事はないけれども、一部の探索者達の間でフェイスイーターは宝箱の一種と認知されてしまい、腕に覚えのある探索者が日夜遺跡内を駆け回っている。若手や新人さん達は絶対に真似してはいけない。普通に死ねるから。

 それと地下遺跡で遭遇した最初の一体を除いて、マナダイトに似た謎石はフェイスイーターから出てきてない模様。最初の個体と何が違うのかサッパリ分からないけど、この分からない事を調べるっていうのが探索者の醍醐味だと私は思うんだよねぇ。


「キョウちゃん、まだ遺跡都市に来てそんな経ってないのにもうベテランみたいな感じになってるな」

「ん~・・・だって、ねぇ?事あるごとに呼び出されて協力を要請されたり、エミリさんのお店の事もあって毎日遺跡内を駆け回っていたら、そりゃあ慣れても来るってもんじゃない?」

「ちげ~ね~な!ガハハッ」

「だからと言ってフェイスイーター相手に単独で突っ込むのはマジでやめて。撃破して一山当てたいのはよっく分かるけども、死んだらそれまでだかんね?」

「いや~面目ない。寄生対象がホーンラビットだったからよ、つい行けるって思っちまってな」


 そう言うこの探索者は全身血まみれである。ホーンラビットから剥がれたフェイスイーターに体の至る所を斬られ、身に着けていた防具類も最早機能していない有様だ。

 エミリさんのお店に卸す食材を求めて遺跡内を走っていたら、偶々この探索者とフェイスイーターがやり合ってる場面に出くわしたのだ。


 血の匂いに引き寄せられたのか、その戦いの場周辺にはおこぼれに預かろうとしていたモンスター達が集まって来ていたので、まず私はこの連中を速やかに排除して背負っていたバックパックに放り込んだ。

 どれも食材として優秀なモンスターばかりだった上に、お目当ての獲物もその中に居たのでこちらとしては大変大助かりではあったんだけど、私が周囲の危険を排除している間にもフェイスイーターと探索者の攻防は続き、正直気が気じゃなかった。だってこの探索者、素手でフェイスイーターに殴り掛かってたんだもん。いくら武器が浸透していないとはいえ、無謀にも程があるというものだ。せめて手甲とかガントレットとか付けて欲しい。


「にしてもこのフェイスイーターってモンスター、硬ぇのなんの。身体強化には自信があったんだけどよ、見ての通りこの様さ!ガハハッ」


 周囲の危険を排除し終わったと同時にすぐさまフェイスイーターに向けて踏み込み、居合と斬岩を組み合わせて真っ二つに切り捨てて、私は全身ボロボロの探索者に怒りを込めてポーションをぶっかけた。

 直に2本目を取り出し栓を抜いた口部分を探索者の口へと突っ込んで抗議を封じ、今さっきまで説教をしていた所だ。


「こっちの攻撃が効かないと分かった時点で、なんで逃げないのさ?そもそもフェイスイーターがすっごく硬いって事は、バンクからの情報で分かってた事でしょ」

「そんなの、自分自身で調べる為に決まってんだろ。バンクから公開される情報に嘘が無い事は皆知ってるが、それが全てじゃないのも分かってんだ。折角レアモンスターと遭遇したんだ、情報は集めれるだけ集めたい」

「それで死にそうになってたんじゃ本末転倒だよ・・・折角いい嫁さん捕まえて子供も生まれたんだから、もうちょっと自重した探索を心掛けて。嫁さんを泣かしたくないでしょ?」

「けど、おかげで大金が手に入る。これで当分、生活面の心配はしなくていい。安心して探索が出来るってもんよ」

「・・・それ、絶対に嫁さんの前で言っちゃダメだからね?」


 このおっちゃんバンクで知り合ってからというもの、チョクチョク遺跡内で遭遇するんだよね。性格もサッパリしていて話しやすく色々と気が合う面も多いんだけど、いかんせん探索に人生を捧げすぎている。ほぼ毎日探索してるんじゃなかろうか。いやまぁ、私もそうなんだけどね。

 おっちゃんの所属してるクランの人達も子供ができる前までは好きにさせてたっぽいんだけど、子供が生まれてからは常に誰かがおっちゃんと組んで行動してたはず。なのに、今日に限って何故ソロで動いていたのか。

 気になったのでおっちゃんにその事を聞いてみると、


「ん?そういや居ねぇな。アイツ何処行ったんだ・・・あ~そういや、フェイスイーターと遭遇した時には既に居なかったな」

「・・・」


 つまりおっちゃんは、相方を撒いたわけだ・・・おっちゃんと遺跡内で遭遇した時、相方さんの息が上がっていたのってつまりはそういう事か。おっちゃんの動きに付いていくのが困難なのね。身体強化が得意と言っていたのは伊達じゃない訳だ。

 そうこう話している内に遠くから、


「み~つ~け~ましたよ~!」


 そんな声が遠くから聞こえてきて、土煙を上げる勢いで走って来る探索者が1人。


「お~シルヴィア、やっと来たか。おせぇぞ。残念ながらもう終わっちまった後だ」

「また独りで突っ走って!うぅ、これじゃお目付け役の意味がないじゃないですか・・・」

「だから言ったろ?俺について来るのは容易じゃないって。それより見ろ!噂の宝箱と遭遇したぞ!」

「宝箱・・・?って、フェイスイーターじゃないですか!?しかもよく見たら、全身ボロッボロじゃないですか!?って、キョウさん!?何でここに?」


 うん、こんなにせわしない子だったろうか。シルヴィアは以前、地下遺跡の入り口前で私達に中へ入れてくれとお願いしてきた5人の内の1人だ。


「偶々。食材を求めて遺跡内を駆け巡っていたら、騒がしい箇所を見つけてね。近づいたら、おっちゃんとフェイスイーターが激闘を繰り広げてたの。おっちゃんがヤバかったから周りの危険を速やかに排除し強制介入してこのとおり。シルヴィアこそ、いつの間にクランを移ったのさ?」

「えっと、あの後所属してたゴルゴーンは解散する事になったんです。私達5人は別々のクランに移る事になったんですけど、私を受け入れてくれたクランがここだったんです」

「へ~そんな事になってたんだ・・・って事はつまり―――――」

「・・・遺体は最後まで見つかりませんでした。大量に運び出された遺品の中にも父の物は見つからなかったので、まだ希望はあると思ってます」

「・・・そっか。見つかるといいね」

「はい・・・」


 私ら2人がちょっと気まずい雰囲気を作ってしまったその後ろで、


「所でキョウちゃんよ、フェイスイーターの取り分ってどうなるんだ?発見者って事で、多少は融通してくれんだろ?」


 あくまでマイペースなおっちゃんがそこにいるのだった。

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