第72話:想像以上に人気が出ました。
(うぁぁぁぁん!キョウちゃん、ヘルプミー!)
食事処アオイがオープンして数日、早朝に本日納品分の食材をお店に卸した後、ここ最近日課となっている遺跡内の散策、採取・採掘及び生態調査等々を鼻歌混じりに行っていた所、エミリさんから突如念話がもたらされた。
(ど、どうしました急に?ここ最近の酷使に耐えられずにオーブンがストライキでも起こしましたか?)
朝お店によって食材を卸した時、軽く設備の様子を確認したが異常は見られなかったはず。内蔵してる暖炉石や冷蔵石もピンピンしていたし、ついでにマナの補充もしておいた。
(設備は至って問題ないの!問題なのは押し寄せるお客様!途切れない!波が途切れないよ~!後、ピンポイントでローストボアの注文が殺到して早くも食材が切れちゃいそう!?って、キースから追い打ちが!?最悪売り切れゴメンなさいで凌ぐけど、サーベルボアのお肉は他のメニューにも使ってるからマズイにゃ~!)
嬉しい悲鳴なんだろうけど、マジで泣きが入って来ている辺りマジな救助要請なんだろう。この数日でエミリさんのお店は遺跡都市の人達に知れ渡り、今や知らない人等いない位の人気ぶりだ。
つまりそれだけお客さんが訪れるわけで・・・
(とりあえず落ち着きましょうかエミリさん、緊急で確保して欲しい食材はサーベルボアの他に何かありますか?後、語尾が何やら大変な事になってますよ)
(それ以外はリカルド達にお願いしたから何とかなりそう!サーベルボアのお肉が無くなった段階で、一旦ローストボアはストップして他の影響が出るメニューは別種のお肉で対応する事をお客様に説明して今納得してもらったから、暫くは持たせられる!けど、あまり長くは持ちそうにないからキョウちゃん!本当に申し訳ないけど、ちょっぱやでサーベルボアの支給をお願い!)
私の突っ込みにも返す余力は無さそうだ。でも、緊急対応の方は上々。お客さんが納得してくれているのなら、クレームも入らないはず。エミリさんのお願いに了解の旨を伝える。
私は既にサーベルボアの名前が出た段階で散策を中止し、生息域へと向かっている。このイノシシは繁殖力も凄いが周りの食えそうな物は何でも食ってしまう程食欲が旺盛だ。周りに食べれるものが無くなると機嫌が悪くなって狂暴になり、運悪く遭遇した探索者が襲われて食われてしまうなんて事もある位に危険な奴だ。
初めて遺跡に来た時ミズキが真っ先に喧嘩を売ろうとして止めたモンスターだけど、今のクランメンバーの実力であれば単独でも問題ないモンスターだ。
というのもこのサーベルボア、その食欲が原因なのか群れる事が無い。動きは直線的なので存分に走り回れる広場でもない限り、そのポテンシャルを発揮する事は出来ない。周りの樹木や岩、窪みを利用して動きを封じ、首を落とすなり急所を一突きすればアッサリと仕留められる。
一撃で仕留められなかった時は、そのサーベルの如き牙を振り回して盛大に暴れるのでちょっと厄介だが、何度か仕留めている内に私も含めクランの面々はコツを掴んだのか急所を外さなくなったので無問題だ。
因みに私はいつも通り気配を消して対象に接近できるので、不意打ちによる一撃で事は済む。その狩り方を卑怯だと言うメンバーはうちには居ないし、寧ろどうやって対象に気づかれない程の気配操作が出来るようになるのか、その方法を習得するべく私にアドバイスを求めてきたりする程だ。
そうこうしているうちに、サーベルボアの生息域に到着。早速気配を探り、一際大きい気配の存在を感知したので向かってみる。
おぉ、いたいた。デカいのが。通常サイズのサーベルボアは大体軽自動車くらいなんだけど、今視界に入ったサーベルボアは・・・4トントラック並のサイズはありそう。ここら辺の主か何かなのかな?
ん~・・・あのサイズだと首を一撃で落とすのは難しいかな。かと言って私の小太刀の刃が心臓などの急所にまで届くかというとそれも難しそう。暫し考えた結果、一撃目で首と胴体を繋ぐ骨を斬って即死させ残った首周りの肉を斬って落とす事に。むやみやたらと苦しませる気は無いので、初撃で殺しきる。
樹木下に群生しているキノコを無警戒に食んでいる所申し訳ないけど、エミリさんとその料理を待っている腹を空かせた人達の糧となって貰う。気配を消した状態でソッと手を合わせると、小太刀に手をかけて飛び上がる。
落下の勢いを加えて小太刀を抜き放ち、その勢いのままサーベルボアの首へと斬り付ける。着地したと同時に返す刃で斬り上げ、小太刀の刃が届かなかった部分を切り裂きバックステップで距離を取って様子を伺う。
一瞬のタイムラグの後、頭が前方に落ちると同時に切断面から血が噴きあがり4本の脚で支えられていた胴体から力が抜け、横倒しとなった。
手早く血抜きを済ませたサーベルボアをバックパックに入れて、遺跡都市へと足を向ける。遠くで私がサーベルボアを仕留める所を目撃した者達が居たが、今は時間が惜しい。この場にツバキは居ないので、解体はバンクに持ち込んで行うとする。私がやるよりもバンクの解体専門のゴーレムさんにお任せした方がキレイだし、何よりも早い。
キロ単位の肉塊にバラシて、皮と牙と頭はバンクの方で買い取って貰った。骨は豚骨ならぬ猪骨としてエミリさんが使用すると思われるので、肉と一緒にバックパックに入れて貰う。
「ちわ~サーベルボアのお肉をお届けに参りました~」
そんな掛け声を食事処アオイの裏口を開けて発すると、すぐさまエミリさんがやって来て、
「待ってたよキョウちゃん~!かなりギリギリのタイミングだったけど、これで何とかなる!本当にありがと~!」
そう言ってエミリさんは私にお店専用のバックパックを差し出してくる。そのバックパックを受け取りつつ、
「中に骨も入ってるんで、上手く活用してください。なんなら、骨だけ備蓄庫の方に移します?」
「うん、お願い~」
エミリさんから許可を貰ったので、自身が使用しているバックパックからお店専用のバックパックへと肉のみを移す。
「・・・これでよし。また何かあったら念話ください」
「助かります。備蓄庫の方に今、リカルド達が居ると思うから保管場所は向こうで確認してもらっていいかな?」
「了解です。それじゃあこれにて」
「はい。店が終わる頃にまた寄って?何品か包むから~」
そう言って私達は各々が今すべき事をするべく動き出す。すぐさま使う食材は店内の冷蔵庫及び冷凍庫にて保管するが、それ以外は備蓄庫の方にバックパックごと保管してある。大量に仕入れる食材は主に備蓄庫であり、必要に応じてここから取り出す仕組みになっている。
きちんと名前毎に整理整頓されているので、何処に何があるのか分からなくなる事もない。
「こんちわ、皆さん。大変ですね?」
私が備蓄庫に到着するとエミリさんの言う通り、リカルドさん達スルトの面々がせっせと食材を運び込んでいる所だった。
「あぁキキョウ君、エミリから話は聞いたよ・・・急に済まなかった。丁度皆出払ってしまっていたんだが、いやはや・・・まさかここまで人気が出るとは。探索のついでにこなせると楽観視していたんだが、これは早急に手を打たないとダメだね」
リカルドさんも予想外だと苦笑い。でもそこは夫婦、互いの役割は事前に決めていたようで、厨房から動く事が出来ないエミリさんの代わりにリカルドさんが裏方に回り、様々な雑務を引き受ける事にしたそうだ。
私はリカルドさんに猪骨の保管場所を聞き、指定箇所にしまいつつ今後の方針を聞いてみた。
「そうだね・・・まずは人員の確保が急務だね。エミリのサポートができる人員を最低でも2名、次に食材の安定供給を図る為、店専属の調達屋として探索者を4名程雇う必要があるかな」
妥当な所じゃないかな。問題なのは・・・
「因みに人員確保の伝手はあるんですか?」
「そこなんだよね・・・ぶっちゃけ、調達屋の方はどうとでもなるんだけど、エミリのサポートとなると一から育成しないといけない。今、エミリとキースはとてもじゃないが新人育成にまで手が回らない・・・そこでお願いがあるキキョウ君。君かアル君、どちらかを一時的にエミリのサポートに付けて、これから雇う新人の育成をお願いしたい」
うん、まぁそうなってくるよね。エミリさんのサポートとなると、現状でソレが務まるのは私かアルくらい。ツバキやシリカでも洗い物はこなせるけど、エミリさんの補助をするとなると話は変わってくる。
「期間は新人が入るタイミングで1週間。報酬として・・・コレを渡そう」
そう言ってリカルドさんが差しだして来たのは・・・なんだろうかコレ、鍵?私が首を捻っていると、
「コレは例の地下遺跡から脱出した2人の探索者の内の1人が持っていたもので、何でも遺跡の奥にある祭壇にあったそうだ。恐らく何かの鍵だと思われるが、現状その使用用途は不明だね」
「・・・正直、余り受け取りたいとは思わない報酬ですね」
「気持ちは分からなくもないが、コレを所持した状態であの地下遺跡に行っても問答無用で襲い掛かられたりはしないから安心してくれ。そこはちゃんと確認済みだよ」
確認したんだ。リカルドさんよくそんな危ない橋を渡る気になったなぁ・・・。
「言いたい事は分かるよ。実際コレを持って地下遺跡に行ってきた事をエミリに話したら、簀巻きにされて超説教されたからね」
「そりゃそうでしょう。そんな危ない物よく受け取る気になりましたね・・・下手すればリカルドさんは今頃、地下遺跡内で白骨に変わっていてもおかしく無かったんですよ?」
「どうしても調べたい事があってね・・・結果、コレを持って地下遺跡にまで行く羽目になったけど空振りに終わったよ。そしてエミリに2度とコレ持って地下遺跡に行くなと誓わせられてしまったので、もう持っていてもどうしようもないんだ・・・で、どうだろうか?」
・・・う~ん、別段地下遺跡側の怒りを煽る代物ではないっぽいし大丈夫だろうか。これを断って報酬がお金に代わっても正直使い道がない。それも断ったら、自分の身を差し出すとか言いそうだし。
「厄介物を体のいい報酬に仕立てた感が否めませんが、それで手を打ちましょう。とりあえずアルと話し合ってみますので、少々お待ちを」
リカルドさんの依頼を受ける以上、話は直に済ませた方が後々動きやすいだろうという事で私は早速アルに念話を飛ばす。
(アルさんや、今よろしいですかの?)
(・・・キョウちゃんや、わしゃあ今大丈夫じゃぞい。それでどったの?)
(うん、リカルドさんから仕事の依頼。エミリさんのお店が思った以上に繁盛してるから、急ぎで新人を2人雇いたいって話になったんだ。でもエミリさんもキースさんも自身の仕事で手一杯だから、私かアルのどちらかをサポートに付けて新人の育成をお願いしたいってお話。さて、アルはどうしたい?)
(お~順調ですな~・・・うん、特にこれといった予定も無いし私が受ける方向で話して貰っていいよ)
(りょ~かい。詳細は追って伝えるね~)
(はいよ~んじゃ、また後で~)
最早電話だよね、コレ。
「よし、話は纏まりました。アルがこの依頼受けます」
「交渉成立だね。じゃあコレを受け取ってくれ」
私とリカルドさんは握手を交わすと、報酬である遺物をリカルドさんから受け取った。とりあえず、バックパックに入れて我が家に戻り次第厳重に保管しておくとしよう。
「新人の確保が出来次第、念話で連絡するよ。早ければ今日明日にでも直動いて貰う事になると思う」
「分かりました。いつでも動ける様にしておきますね」
こちらの話が終わった辺りで、備蓄庫への補充が終わったのかミアンとニーナ、カイムさんとレオナちゃん、ミズキがこちらへとやってきた。
「父さん、終わったよ」
「おう、ご苦労さま。こちらも今話が纏まった所だ。ミズキちゃん助かったよ、お陰で食材確保がスムーズに進んだ」
「いえ、レオナ達と一緒に探索できてこちらも良かったです」
カイムさんが作業終了を知らせ、リカルドさんが労う。ミズキはどうやらレオナちゃんと鍛錬していた所、お声が掛かったようだ。
最近は鍛錬刀を実戦で使用するようになったミズキ。ここ最近折らなくなってきた辺り、技術も着々と身につきつつある。
見た感じ、カイムさんやミアン、ニーナ姉妹もマナの運用による鍛錬の効果が出てきているようだ。レオナちゃんからも話は聞いていたけど、日常生活に落とし込んだ鍛錬をし始めてからは己の成長っぷりを実感しやすくなったようで、日々マナによる身体強化のコントロールを欠かしてないそうだ。
マナの体内循環に慣れ、呼吸するのと変わらなくなったら常に薄く身体強化を掛けて体に負荷をかけていく。これを日々行い少しずつ身体強化を強くしていく事で体を慣れさせると共に肉体の限界を引き上げて行く。
以前にも説明した事だけど、あれから皆の感想を聞いて更に鍛錬法に調整を加えてみた。
始め立ての頃は1時間程で全身が筋肉痛のような状態になる。そうなったら一旦身体強化を解除し、痛みが取れるまで体を休め、また身体強化を掛ける。これを何度も繰り返すと体が身体強化に耐えようとして見えざる筋肉をつけ始める。徐々にかけ続けられる時間が伸びて行くので、目標の時間に到達した辺りで身体強化の強度を少し高め、再度1時間程で筋肉痛になるよう調整する。これをひたすらに繰り返す。
正直地味で常に筋肉痛のような痛みに体が苛まれる為、辛い。これを日々繰り返す事が出来る者のみが強さを得る事ができる。強さに近道など存在しないのだ。
私がマナの運用による鍛錬法を教えた面々で泣き言を言った者は存在しない。寧ろ、先に言った通り徐々に強くなっていく自分がハッキリと分かって喜々として続けているくらい。
そんな感じで、私の周りに居る人達は着々と自身のパワーアップを行っている。最早そんじょそこらのモンスターに後れを取る事は無いんじゃないかな。
「よし、私は早速新人確保に動くとしよう。また緊急要請があるかもしれないが、それまでは自由にして貰って構わない。皆、ご苦労さん。ゆっくりしててくれ」
リカルドさんは自らのクランメンバーにこの後は自由行動である事を伝え、去っていった。そういえば、リカルドさんに聞きたい事があったんだけど、聞きそびれてしまった・・・まぁ、カイムさんでも問題はない。
「カイムさん、今まで触れないようにしてたんですけど地下遺跡の騒動ってあの後どうなったんですか?」
あの事件の後はレオナちゃんやエミリさんに武器関連の手ほどきをした後、すぐさまお店作りに移行してしまった。個人的にもティリアやナギとのゴタゴタもあった影響で、すっかり後回しになってました。
因みにティリアもナギも私の精神世界で元気に暮らしている。時々PCやゲームのログみたいにこの2精霊が私の中で何やっているのか、頭の中でアナウンスみたいなのが響くようになったんだよね。
例えば今さっき流れたアナウンスだと、
<<ナギが"和風家屋"を建築しました>>
とか。この頭の中で鳴り響くアナウンスの声、どっかで聞いた事があるんだけど今一思い出せない。凄く有名な声優さんの声な気もするんだけど、何か違う様な感じもする。
とりあえず、今日という一日が終わったらティリアとナギに会いに行こう。今まで流れたアナウンスのログによれば、ナギが住む所を作っているのは分かっている。どんな感じに進んでいるのかちょっと楽しみである。
カイムさんは自前のタオルで額に浮かんだ汗を拭き取りつつこちらへとやってくる。今のカイムさんは作業着のズボンと上はTシャツの様な肌着が一枚の状態だ。程よくバランスの取れた筋肉がシットリと汗を浮かび上がらせ、Tシャツがその汗を吸い込んで張り付き、体の輪郭がクッキリと出ている。
見る人が見たら鼻血を噴き出して恍惚の表情で倒れるんじゃないかな?カイムさんはとても容姿端麗だ。その証拠にミアンとニーナはカイムさんの後ろ姿をガン見していたりする。正面からは無理でもせめて後ろだけは!といった所かな。カイムさんを慕ってリカルドさんのクランであるスルトに入ったと言うんだから、推して知るべしである。
「あの後かい?要点を纏めて言ってしまえば、ヘカトンケイルが規模を縮小して探索推進勢は事実上消滅。今は初期組勢が汚名を返上するべく奔走中と言った所かな。詳細を語ると、遺品や遺骸は無事家族の元に返されて火葬を済ませ、遺跡都市の石碑に亡くなった者達の名前が刻み込まれた。遺族達はこれまでヘカトンケイルがどれだけ遺跡都市に貢献していたかを知っているから表立って糾弾はしてないけど、一部暴徒と化した遺族が探索推進勢の幹部達に襲い掛かる場面があった。その時は大事にならず済んだけど、今回の大規模探索を決行した幹部達への怒りは相当な物だね。頑張って初期組勢が遺族達を説得しているけど、大事な家族を失った者達の怒り・憎しみは簡単に晴れるものじゃない。ただでさえ、危ないから近寄るなっていう警告が遺跡都市全体に出されていたのに、それを無視した形だからね。納得なんてできるわけがないよ。既に一部の幹部達は、己の身可愛さで自身の屋敷に引き籠っている始末だ。初期組勢達も頭が痛いだろうさ・・・ふぅ、ざっとこんな所かな。当分ヘカトンケイルは身動き取れないだろうね」
おおぅ、なんというか修羅場ですね。こちらが出来る事はもうないので、ヘカトンケイル初期組勢の奮闘を祈るばかりだ。進んで関わりたいとも思わないし。
「ありがとうございます、カイムさん。私達が関わる事はもう無さそうですけど、一応状況は把握しておきたかったので・・・大変助かります」
「いえいえ、こちらこそ母のお願いを聞いて貰っていますし、これくらいお安い御用です」
カイムさんは爽やかな笑顔でそう返してくれた。にしても、汗と笑顔が良く似合う。ミアンとニーナもこのスマイルにやられたのだろうか?
カイムさん、ミアン、ニーナの3人は少しばかりの休憩を取った後、お店の様子を見て問題ないようなら探索に向かうそうだ。
ミズキとレオナちゃんは、と思っていたら
「キョウさん、スミマセン。さっきの狩りでこの通り・・・」
そう言ってレオナちゃんは折れてしまった鍛錬用の双剣を見せてくれた。両方共、物の見事にポッキリ逝ってしまっている。
「うんまぁ、始めはそんなもんだよ。ミズキも事あるごとにボキボキ折っていたし」
シュンとしているレオナちゃんは可愛いなぁ。よし、頭をナデナデしてあげよう。近くにリカルドさんが居なくて良かった。
「最近は折らなくなったし」
頬を膨らませたミズキも可愛い。どれ、こちらの頭もナデナデだ。あぁ・・・手袋無しでナデナデ出来るって素晴らしいなぁ。
既に私は手袋無しで触れるようになった事をクランメンバーに話してある。今までは四六時中身に着ける羽目になっていたけど、そのストレスはもうない。大事な事だからもう一度言っちゃおう、素手って素晴らしい!
2人をナデナデし終わった後、私は我が家にいるであろうシリカに念話でレオナちゃんの鍛錬用双剣の作製をお願いする。
(こんな事もあろうかと、予備を何セットか用意してあるわ。こっちに戻ってきたら声を掛けて。すぐに用意してあげる)
(わかったーお願いしやす!)
そうして私達は我が家である遺跡に一旦戻る事になった。折角だから、ここ最近のミズキとレオナちゃんの成長具合でも確認しよう。そんな事を思いながら我が家へと足を向けるのだった。




