第65話:謎の黒い鉱物の正体が判明しました。
大分落ち着きました。
これからはもっといいペースで更新できそうです。
「・・・それで、キョウはどうやってここまで来たの?」
ひとしきり泣いてスッキリしたのか、ティリアが私に聞いて来る。
「うーん、私も良く分からないんだよね。いつも通り寝たら草原が広がる丘の様な場所で目が覚めて、ここまで散策する感じで歩いて来たって所かな」
今までこんな経験はした事がない。正直、ここが現実だと言われたら信じてしまう位にリアルだ。唯一リアルとは違うのが痛みを感じない事。それ以外は現実と何も大差ないと私は感じている。
私の返した内容を自分なりに検証しているのか、ウンウン唸りだすティリア。
「キョウ、寝るまでの間で何かいつもとは違う出来事とか無かったの?」
いつもと違う出来事か・・・色々あった気がする。
「そうだなぁ・・・レオナちゃんやエミリさんに武器の扱い方教えたり、システムキッチン作ってエミリさん宅を改築したり、料理作ったり・・・ん~後は黒いモンスターやフェイスイーターとかから得られた謎鉱石を調べたり・・・あぁ、アレが原因かも」
あの日にあった出来事で思いっきりテンションが下がった事件があった。
「物置に武器のメンテ道具を取りに行った時にね、ドラゴン形態のミズキの牙に挟まってた黒い鉱石を見つけたの。それを調べていたら体内に吸い込まれるように入っちゃったんだよね」
私の話を聞いていたティリアもそれが原因かもと思ったのか、いくつか質問をしてきた。
「それが体内に入った時、何か声の様なものを聴いたりしなかった?」
「いや、特に。体に異変が起きたとかも無かったよ」
「・・・じゃあその時、周りに居たであろう『精霊になる前の子達』が何か言ってなかった?」
「あの時か~・・・私の迂闊さに爆笑してた奴の笑い声が大半で、それ以外は殆ど覚えてないんだよなぁ。あの子達の声に関しては明確にこっちへ語り掛けてこない限り、反応しないようにしてるんだよね」
顎に手をやって考え込むティリア。
「ここはキョウの精神世界だから、ある程度の事はキョウ自身で思い通りに出来るはずなの。例えば、現実世界に帰りたいって思えば戻れるし、今のこの温暖な気候の精神世界を秋にしたいと思えば秋になったりとかも出来るはずなの。あ、精神世界と現実世界の気候はリンクしてるから試しでもやらない方がいいの。現実に戻った時に精神世界側の気候を引きずって、体調を崩したりするの」
ほ~流石は精神世界という事か。私は試しにペットボトルのお茶が欲しいと頭の中で思い浮かべてみる。500mlの冷たい奴でお願いします。
すると、掌に冷たい感触と共にペットボトルのお茶が音もなく現れた。おぉ、凄いぞ精神世界!喉の渇きを感じていた私はキャップを捻って蓋を取ると、キンキンに冷えたお茶を飲み干す。は~生き返りますわ~。
飲み終えたペットボトルは役目を終えたとばかりに存在を薄れさせ消えて行った。
「凄いぞ精神世界、ここでなら私は何でも出来るって事なのかっ!」
途端にテンションが上がりだす私。自分用のテーブルとリクライニングチェアを呼び出して早速横になりつつ、テーブルの上にマクド〇ルドのビック〇ックセットと爽健〇茶を出す。
うぉぉっ!異世界に来てからというもの、ジャンクフードなんて口にする事は不可能だった。私はこの懐かしい味を噛み締めながら歓喜する。
つまりアレだ!ここなら丸〇うどんだろうが花〇の回転ずしだろうが何でもござれという訳だ!天国だぁぁぁ~。
「満喫してる所申し訳ないけど、いくつか試して欲しい事があるの」
苦笑してるティリアに意識を引き戻された。気持ちは分からなくもないという表情をしている。やだ、恥ずかしい。
「ゴメン、テンションが振り切れちゃった。それで、何を試してみればいいかな?」
「まずは現実に戻れるかどうか試して欲しいの。もし戻る事が出来てまたここに来たい場合は、寝る前に精神世界に行きたいと思いながら寝るの。そうすれば、私がキョウをこっちへと引き寄せるの」
私は頷くと同時に帰りたいと強く思う。がしかし、戻る気配は無し。
「何者かがキョウを戻らせまいと妨害してるの。恐らくは・・・」
「私に入り込んだ謎鉱石がって事だね・・・じゃあその妨害してる奴をこっちへ引き寄せてボコれば良いって訳だね~」
私は妨害しちゃってくれてる存在をこっちに引き寄せるイメージをする。
「どんな存在か分からないから、気をつけるの!」
了解。近くに突き刺して置いた小太刀を手に取り、再度イメージを強くする。すると、
「え?ちょっと!今度は何な訳!?キャァァァァァッ!?」
そんな声が上の方から聞こえ、空を見上げると1人の女の子が落ちてきて・・・そのまま湖へと落下した。盛大に水柱が上がると同時にかなりの着水音が辺りへと響き渡る。
「・・・ティリア、空から女の子が」
「多分、あの子が今回の元凶なの。捕まえてキリキリ吐かせるの!」
そう言ってティリアは女の子が落ちたらしき場所に手を向けると、湖の底を隆起させたのか岩が湖面から顔を覗かせた。
そこに磔にされたような感じで引っかかっている女の子が1人、目を回した状態でサルベージされるのだった。
「本当にもう色々とご迷惑をお掛けしました」
空から落ちて来た女の子は目を覚ますなり深々と頭を下げて来た。
「一応確認するけど、あの黒い謎鉱石の正体は君という事であってる?」
「間違いありません」
「私を精神世界に誘った理由は?」
「無断で貴方の中に侵入した事への謝罪と、今後貴方の精神世界に住まわせて欲しい旨を説明する為です」
「・・・もし、私が住む事を拒否した場合は?」
「そこをなんとか!精霊である私と相性のいい存在はそうそう見つからないんです!」
はい、この子も精霊だと確定しました。涙目で必死そうに訴えて来る様は本当に余裕が無さそうである。
「ここに居るティリアも精霊だけど、君達は現実世界の方ではどうやって存在を保っていたんだい?」
「基本的には相性が合う人の精神世界に住まわせて貰うか、相性のいい樹木や鉱物に宿るかなの」
「訳合って宿った存在から抜け出すと、精霊は急速にその存在が薄れていくんです。抜け出てから1週間も経てば自分が何者なのかもわからなくなって最後は消滅してしまいます」
ティリアの説明に繋げる形で女の子が引き継ぐ。成程、ソレは確かにヤバイ。
「でも『精霊に成る前の子達』って普通に現実世界をウロウロしてるっぽいけど、なんであの子達は平気なの?」
「あの子達は役目を与えられていない真っ新な状態なので、周りのマナから幾らでも自身の存在を補う事が出来るんです。けど役目を与えられて精霊となれば、波長の合うマナからでないと自身の存在を補う事が出来なくなるんです」
「つまり相性のいい存在というのが、自身と合致するマナを保持している存在な訳だね。それが私であったと?」
頷く2人。この場合は2精霊と言うべきなのだろうか。
「本来は次の宿り先を見つけてから引っ越すのが普通です。けど私の場合、とある岩盤の奥深くで眠りについていた所をあのドラゴンがピンポイントで私の住居であった岩盤をぶち抜きまして・・・その衝撃でドラゴンの牙に挟まり、しかも宿り先の鉱物に傷がついて私の存在が徐々に薄れだす始末」
女の子が涙ながらにこれまでの経緯を教えてくれた・・・あ~確かにミズキは獲物に襲い掛かる時、岩盤とか物ともせずに突き破って噛り付いていたね。にしても、これは流石に同情を禁じ得ない。不幸にも程があるだろう。
「私は前の宿主さんに存在がバレた事が原因なの。元々家賃として私の可能性を気づかれない程度に譲渡してたんだけど、ある時、力の流れを私が譲渡してた可能性で探り当てられて見つかっちゃったの。それから際限なく私の力を欲するようになった宿主さんが、もっと私から力を引き出そうと悪意を持ち始めたから慌てて逃げだして来たの」
「・・・迂闊ね。人間に私達の力を知られたら欲望に歯止めが利かなくなる事は分かっていたでしょうに」
ティリアが自身の失敗を嘆き、それを諫める女の子。
「返す言葉もないの。私は未熟者だって実感した瞬間だったの。それからは急速に存在が薄れていく事に焦り、どうしようもなくなる前にキョウをこちら側へ転移させて今に至っているの」
ションボリしながら独白するティリア。大丈夫だぞ~私はもう怒っていないし、もう許した事だからね。ティリアの頭を撫でながら最後の質問をするとしよう。
「因みに消滅しちゃったら、君達が司っている力はどうなるの?」
「精霊に成る前の子達の誰かに受け継がれます。役目を与えられた子の近くには必ず波長の合う存在がいるので、受け継いだものの住家が無くて即消滅なんていう事態は起きません。まぁ、その物件がお気に召さない場合は自力で探す事になりますけど」
なるほどなるほど。粗方聞きたい事は聞けた。
「よし、事情は大体わかったよ。今の話しぶりで十分誠意は伝わって来たし、謝罪もして貰った。君の気が済むまでここに居るといいよ」
「っ!ありがとうございます!」
心底安堵したのか、若干硬かった表情も和らぐ女の子。おっとそうだ、肝心な事を聞いて無いね。
「自己紹介がまだだったね。私は藤堂 桔梗。キキョウでもキョウでも呼びやすいように呼んでくれていいよ」
「私はナギと言います。不束者ですが、よろしくお願いします」
深々とお辞儀をしてくるナギ。礼儀正しい子はそれだけで好印象である。因みにナギは黒髪黒目で大和撫子の様な女の子だ。全体的に容姿端麗で巫女服とか着たら凄く映えそう。現在は何かの神官服なのか黒を基調とした衣服を身に纏い、錫杖の様なものを右手に持っている。
「さて、こっちでの用件はこんな所かな。もう戻りたいって思えば現実の方に戻る事は出来るんだよね?」
「はい、大丈夫です・・・あの、私がどんな力を司っているのかとか聞かなくてもいいのですか?」
ナギが遠慮がちに聞いて来る。
「ん~・・・特に興味は無いかな。現状の自分に不満があるわけでもないし、そもそも自分が持ってる能力すら十全に引き出し使いこなしてるとは言えないからね。あ、力と言えばティリアから逆流してる力って今どんな感じなの?」
ナギからの質問に答えた後、触れただけで対象の願望を可能性の範囲内で叶えてしまう自身の手についてティリアに聞いてみる。
「さっき直接キョウに触れた時に調整しておいたの。思った以上に私の力がキョウに馴染んじゃってるから、取り除いてストップさせる事は出来なかったけど、これからはキョウの意思で力を使うかどうか決められるの」
「それって今後は素手で者や物に触れても勝手に力が発動しなくなったっていう意味で合ってる?」
「それで合ってるの~」
いよし!完全除去がムリなのは正直残念だけど、こっちの意思に沿ってオンオフが出来るのならば問題ない。これでウザい手袋から卒業できる、やったー!
思わずガッツポーズをしてしまう位である。そんな私が意外過ぎるのか、ナギが
「私達精霊の力を求めない人って初めて見ました」
「そう?過ぎた力なんて、自身そのものを危険に晒すだけでなく周りも盛大に巻き込んで破滅するイメージしか持てないんだよねぇ」
「・・・それでも世の理を覆すような能力を手に入れられるんですよ?」
「その能力を隠し通しながらコッソリと必要に応じて扱う自信が私は無いかな。何処かで何者かにバレてその力目当てに有象無象が寄って来る・・・考えるだけでも嫌になる」
「隠さず盛大に使用してしまえばいいのでは?」
「結果、私は自由を失う事になる。生活には困らないだろうけどそんな窮屈な人生、私はゴメンかな」
「・・・私、キョウさんに凄く興味が出てきました」
何やら私の返す内容がナギにとっては凄く好印象だったようだ。目をキラキラと輝かせて、積極的に私と話をするようになった。




