表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/89

第63話:良く分からない世界に招待されました。

 エミリさん宅での夕食が終わり、我が家である遺跡に戻って来た私達は温泉に入り各々のタイミングで寛ぐ。


「お、あったあった」


 温泉から上がった私は物置から2つの鉱石を見つけ出していた。黒いモンスターとフェイスイーターから採れた謎石だ。その2つを通常の小型バックパックに移し、私が個人的に使用させて貰っている一室へと移動する。


 机の上に小型バックパックの中身を広げる。先程の謎石2つと今日エミリさんから報酬として頂いた赤い謎石だ。

 見た目はやっぱりというか、マナダイトに酷似している。謎石から感じる雰囲気というか存在感の様なものが、通常の鉱石とは違うんだぞと訴えてきているかのようだ。

 武器庫で見つけた黒い謎石の時は不用意に触れてしまった所為で自分の体内へと消えてしまったが、2度も同じ過ちは繰り返さぬ。赤い謎石は一度触れて問題無かった事を確認しているが、次も問題ないとは言い切れない。

 これ以上の厄介事はご免である。細心の注意を払いながら私はコレらを調べ始めた。


 まずは黒いモンスターから出て来た謎石。形状は歪な卵型で大きさは大体野球ボールより少し大きいと言った所かな。色は黒に近い青。光を当てると水晶の様に透き通っているのを確認した。形状と大きさ、色が違うだけで武器庫で見つけた謎石と類似している。

 フェイスイーターから出て来た謎石も見てみよう。こちらは扁平で星形に見えなくもない形状でサイズは5cmあるかどうかと言う所。色は淡い緑でこちらも透き通っている。

 最後に赤い謎石。こちらは不定形で大きさはバレーボールくらいあるかな?机に置いても安定感があって置物としていいかもしれない。

 眺めて得られそうな情報はこれくらいかな。さて、どのような検証をしてみようか・・・そう考えだした所で、


「あるじ~?もう寝ようよ~」


 カシアから消灯の催促が来てしまった。寝床からは結構離れているが機密性の高い一室では無い為、灯りが寝床の方まで届いてしまうようだ。

 遺跡内部の照明はヒカリゴケの様なものが担ってくれている。触れる事で明度の調整ができる優れもので、夜暗くなっても灯りに困る事は無い。欠点は環境にかなり左右される点で、ちょっと外に持ち出してライト代わりにしようとしたらカラッカラに干からびて枯れてしまった。


「おっとゴメンよカシア。今いく~」


 ここまでかな。私は灯りを消して寝床へと向かうのだった。





 ・・・知らない空と風景が見える。具体的には見知らぬ丘の上にある草原に今、私は居るっぽい。空は見渡す限りの青空で快晴という他ない。

 それにしても、確実に私は自分の寝床で寝ていたはず・・・そうだ!定番の夢かどうかチェックをしてみよう。

 と言う訳で、自分の頬をギュムっと掴み引っ張ってみる。


「おぉ・・・痛くない?ってことは夢かなこれ?」


 他にも足の小指を何処ぞにぶつけて悶絶するアレとかも試してみたけど、やっぱり痛覚らしきものを感じない。でも意識はハッキリしているのでコレは明晰夢という奴なのかもしれない。


「普段私って夢を見ないタイプなんだけどなぁ・・・それが今回に限って起こるとなると・・・嫌な予感しかしない」


 嫌な事が起こるフラグを何本か立ててしまっているので、ある程度の覚悟をして動いてみるとしよう。何かの映画かアニメとかでこのまま目が覚めずに夢に囚われたり、こっちで死んだりしたりすると現実の私も死んじゃうとかは勘弁して欲しいなぁ。

 とりあえずこのまま丘の上にある草原らしき場所に居てもどうしようもないので、辺りを探索してみるとしよう。


 丘を下り森の中へと入ってみる。生物とかが居る気配は無し。けど、周りの木々や他の植物もリアルさが半端ない。樹木の幹に触れてみたけど、ゴツゴツザラザラとしていて現実で感じる情報と大差が無いように感じる。

 改めて現実との差異を調べてみた。結果、痛みを感じないだけでそれ以外は現実とほぼ同じという結論になった。水を飲んでみればシッカリと喉が潤ったし、木に実っている果実を食べてみれば、私の舌はしっかりと旨味を捉えてくれた。風の流れや川のせせらぎ等もしっかりと感じるし聞こえる。

 その反面、生物の気配が微塵も感じないのが凄く不気味である。森の中だというのに、群がってくる虫とか藪の中から飛び出す蛇とかまるで居ない。

 私1人がこの世界に取り残された様な感覚が突如襲ってくるが、1人で何日も探索したり遺跡に籠った経験がある私にとっては慣れた感覚だ。虫等のお邪魔虫がいない分、楽ですらある。


 暫し森の中を探索していると開けた場所へ辿り着いた。目の前に結構なサイズの湖畔が広がっている。どうやら森の中で見つけた川がここに繋がっているようだ。

 辺りを見渡すと湖畔の奥側にログハウスのような建物を発見した。ここから出る手がかりが有りそうな分、厄介事が待ち受けていそうで正直近づきたくない。

 重い足取りでログハウスに近づいていくと、大きなビーチパラソルが湖のそばに突き立っておりその下にリクライニングチェアが敷かれ、そこに寝そべっている女の子を発見した。

 第一村人発見!とでも言えばいいのかな?水着ではなく白のワンピースを着ており、リクライニングチェアの横に麦わら帽子を引っ掛けた状態でお休み中のようだ。

 金髪セミロングの見た感じ中学生くらいの女の子だ。こっちの人達特有の角は無い。赤いリボンでデコレば、不思議の〇の〇〇スに居そうな女の子に見えなくもない。


 私の接近に気づいたのか、リクライニングチェアから体を起こしこちらへと振り向く。そして何故か分からないが驚愕した表情となる。


「どうして貴方がここにいるの?」


 そう呟いたのを私は聞き逃さなかった。


「君はここが何処で私が誰なのか分かっているみたいだね。教えてくれないかな?ここから抜け出す方法。おっと、その前に自己紹介でもしようか?君は私の事を知っているみたいだけど一応ね・・・私はキキョウっていうんだ、よろしく」

「・・・」


 何やら向こうさんは私の事をすっごく警戒してるみたい。これ以上は近づかない方がいいかな・・・私は歩みを止めて敵意が無い事を示す為にバンザイをする。


「ほら、別に何も持ってたりしないよ?危害を加えるつもりはないから、まずは君の名前でも教えてくれると嬉しいな?」

「・・・」


 女の子は無言でリクライニングチェアから立ち上がり、こちらを睨みながらビンビンに警戒中。いつでも逃げれる様な態勢だ。

 私は溜息を一つするとバンザイしてた手を降ろし、今度は腰に手を当てる。


「名乗りたくないのなら別にそれでもいいよ。けど、知っているのならここから出る方法を教えて欲しい。そうすれば、何もせずに立ち去るよ」

「嘘よっ!」


 即座に嘘と断言された事に驚く。私の本心なんだけどなぁ・・・この子はどうも私の事を異様に怖がっている様に見える。何でだろうか。どう対応すればいいのか分からないぞ?


「今すぐここから出て行って!」

「それが出来ないから困ってるんですけど・・・って、うわっと!?」


 私が言い終わる前に、女の子がこちらへと攻撃を仕掛けてきた。何やら手をこちらへと向けて光の矢みたいなものを撃ち出してくる。


「お~い、危ないじゃないか!?」


 光の矢を避けて非難の目を女の子に向けると、その視線で敵認定されたのか今度は大量に光の矢を撃ち出してきた。

 問答無用ですか!?流石にあの量の攻撃を武器無しで躱し続けるのは、億劫なんですけど!そう思って普段使い慣れているシリカ謹製の小太刀が欲しいと願ってみたら、いつの間にやら自分の手に見慣れた小太刀が。流石は夢の中、何でも有りだね!この調子でここから抜け出してさっさと目覚めたいと願ってみる!・・・はい、ダメでした~早々都合よく行かないっぽいよ!?

 私は素早く小太刀を鞘から引き抜き、避けずらい光の矢を小太刀で弾いていく。


「ほら、やっぱり私の事を殺すつもりだったんじゃない!」

「いやいや、どう見ても正当防衛じゃないかな!?こっちは攻撃すらしていないし!」


 何というか思い込みが激しい子なのだろうか?正直この手合いは面倒なので、あまり関わりたくないなぁ・・・話し合いは無理っぽそうだし。なので、他の手段を探そうと撤退を考え始めた時だった。


「私が貴方をこっちの世界に転移させたから・・・元凶である私を排除すれば元の世界に帰れると考え、素知らぬふりをして私に近づき殺そうとした・・・そうなんでしょ!?」


 そんな女の子のヒステリックな叫びが聞こえてきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ