第6話:生態調査へと乗り出しました。
おふぅ・・・遅くなりました。ごめんなさい。
もっと多彩な表現ができるようになりたい今日この頃です。
※2019/03/17 一部次話に続く上でおかしい箇所を見つけた為修正。
あれから10日ほど経過。今ではすっかり異世界を満喫しております。
個人的にあるなら欲しいと感じていた石鹸に関しては、気の運用練習過程で薙ぎ倒してしまった樹木が解決してくれました!
というのも薙ぎ倒してしまった木全体から石鹸のような香りがしてきてですね、調べてみた結果この木の形成層がスポンジみたいな感じになっており試しに切り取って川辺で石鹸代わりに手を洗ってみた所、まんま石鹸の代わりを担ってくれた次第ですよ!やったね!これで現状着てるものしかない衣服の洗濯ができるってもんです。
そして、この10日間でどうにか気を運用している状態でも石を消し飛ばしたり木を薙ぎ倒さずに済むくらいにはコントロールできるようになったですよ。
まさかマナの濃度の濃さが変わる事でこうも力加減がかわってしまうとは・・・異世界恐るべしです。おかげで元の世界のマナがどれだけ薄いのか良くわかりました。
元の世界でマナを自分の感覚で10使ったと仮定して、どうにか石を消し飛ばす程の出力が得られたんですが、こっちだとマナを1使っただけで石が消し飛ぶ出力が出てしまうのです。ざっくり計算で10倍ですよ10倍!界〇拳!!
食事事情もこっちの世界は凄かった。もうね、調理する必要がないレベルなんです。その場で採って食ってもよし!持ち帰って保存するのもよし!マナが濃いせいか腐ったり痛んだりするのが極端に遅い上に、味も最高ときました。ココナッツオイルみたいな油が池レベルで湧いていたり、煮立ったコンソメスープが間欠泉のように噴き出したり等々。
あれですね、調理する必要がないですけどこの世界の食材集めてまともな調理器具を造って料理してみたい!現状未加工で十分美味しんですけど、手を加えたら更に美味しくなると確信できます!あぁ・・・今後が楽しみでしょうがない!
あとあと、冷蔵庫的な物も欲しくなっちゃいますね!何か代わりになるものを見つけ出さなくては・・・それに寒くなってきた時の為に暖を取る術も探さないといけませんね・・・熱を発する鉱石とか冷気を醸し出す植物とかそんなのどっかにないですかね?
「おーい、そろそろ現実に帰ってきておくれ?」
はっ・・・いかんいかん、椿の呆れた声を皮切りに思考ループから脱出する。
「ごめんごめん。ここ最近の出来事を振り返っていたら、なんか帰ってこれなくなっちゃった」
「まぁ、控えめに言っても出来過ぎな現状だからねぇ」
まさにその通り。上手く行き過ぎてて、この後なんかトンデモナイ事でも起きるんじゃないかと不安になってきちゃうほどに。
だからと言って停滞する気は更々ないんですが。
「さてさて、今日は遂にというべきなのか、ただ肉が食いたくなったからなのか、今まで避けに避けてたこの世界の生態調査へと挑みたいと思います」
「遅かれ早かれ直面する事態だしねぇ」
「というわけで、レッツゴー!肉が俺を待っている!」
はい、そんなわけで遺跡の裏側の斜面を登りまずは近場でなんか居ないか探っていこう。
色々と聞きなれない鳥の鳴き声っぽいものは聞こえるが姿は見えず。
更に奥へと進んで小さな沼がある広場へと行ってみる。と、そこに水を飲みに来たのか羊と鹿を足したようなそんなモコモコを発見。茂みに隠れつつしばし様子を見てみる事に。
「あれって、草食ですかね?」
「見た目はそう見えるけど、何とも言えないね。もうちょっと観察してみよう」
「らじゃー」
初めて遭遇した生き物だ。息を殺して観察していると、いつの間にやら2匹3匹と増え後からきたモコモコどもは辺りを警戒し始め最初の奴が水を飲み始めた。
なるほど、ああやって複数で行動して安全を確保しながらって感じか。
猟銃とかそういう武器があれば確保しやすいだろうが、現状接近戦オンリーだからな・・・とはいえ、近づく術がないわけでもない。さてさてどうやって捕まえてくれようか。
と、そんな事を考えていた時だった。
水を飲んでたモコモコが急に顔を上げ、他の2匹と一緒に警戒しだす。こっちに気づいたのかなと思った矢先、そいつは現れた。
モコモコの後方にあった岩壁が吹き飛び1匹のドラゴン・・・ドラゴン!?が現れ、吹っ飛んできた岩壁の破片に運悪く巻き込まれた1匹に噛り付いた。
あ~・・・凄い光景だわ・・・慟哭ともいえる鳴声を上げながらもがき暴れてドラゴンの顎から逃れようとしていたが、必死の抵抗も空しくミチミチッという嫌な音と硬い物が無理やり砕かれる音、そして吐き出される大量の血・・・中身入りのペットボトルが潰れるが如く、様々な物を撒き散らしながら1つの命が散る所を目撃する。グロイ。
余りにもあんまりな光景に軽く思考がストップしかけていたが、
「こらっ呆けているんじゃない!アレがこっちに気づいたら今度はこっちの番だぞ!」
という切羽詰まった小声で我に返る。
目の前という程近いわけではないが、モコモコが美味しく頂かれている内に離れるべき状況である。
状況ではあるのだが、俺はそんなモコモコを食ってるドラゴンから目を離せずにいた。
一言でいうと見惚れていたのだ。
漆黒で艶のある毛で覆われ、大型車両並みのサイズでありながら重量というものを感じさせない流線型の体躯をしており、刃のような翼を広げれば何物をも寄せ付けない威厳とどこか気品ともいわれる美しさを醸し出している。
解りづらい表現で申し訳ないが、刀とか包丁・・・柳刃包丁が一番近いかな。その刀身を初めて見た時に感じた衝撃とも言える感激を、今また味わっている。刃物が出す独特ともいえる美しさを、そのドラゴンから感じるのだ。
「おぉい!今初めて恋という感覚を知りましたとでも言うようなその顔はなに!?状況わかってる!?こんな所で『わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!』というアナウンスを流すのはごめんだよ!?」
うん、そいつは俺もごめんだ。だがしかし、
「椿、声のボリュームもうちょっと抑えようか。あ~・・・うん残念!メッチャこっち見てるわ、あのドラゴン」
「ガッデム!!」
モコモコを綺麗に平らげ口をモゴモゴ動かしてる光景は、口周りと辺り一面が血の海と化していなければ多少は愛嬌を感じたかもしれない。
ドラゴンと俺の視線が交わう事しばし、こちらには興味がわかなかったのかフイッと顔を背け自らが作り出した道をノシノシ歩いていき、程無くして空という己のテリトリーへ帰っていった。
「・・・見逃されたな」
「見逃されたね。丁度満腹になったのかね・・・はぁ~寿命が縮むかと思ったよ」
「突っ込みは入れないぞ?」
「腕輪なのにってかい?」
「あぁ」
「いいさ、そんな事より・・・僕が眠っている間にこの世界はどのような進化を遂げたのか、俄然楽しくなってきたよ!」
「そういや特に聞いちゃいなかったけど、椿が寝る前ってどんな世界だったんだ?」
「ん?自然以外は何もない所だったよ。そこに僕が生物が誕生しうる『可能性』をまき『進化』していくように促した。途中でGから始まる奴らが空から飛来してきたけど、この世界に危害を加えるわけじゃないから泣く泣く見逃したよ」
「本当にどこ行っても嫌われてるな、あいつら」
かく言う俺も嫌いですが!
「なにわともあれ、探索を続けるとするか。ちょっと肉を食うって気分じゃなくなったが」
「そうだねぇ、この程度で滅入っていちゃ探索なんて続けられない」
というわけで、今回は拠点である遺跡からはあまり距離を取らず遺跡を中心としてグルっと周ってみた。
結果、モコモコ以外にもオオカミらしきものやウサギ、ネズミ、空飛ぶニワトリ、恐竜のような連中、爬虫類みたいな魚等々かなり多種多様な生態が構築されているようだ。
人間に近い動物とかは今回見当たらなかった。勿論人が暮らしていそうな集落なども見つからず。残念。
あの後、ドラゴンらしい生き物はあれっきり見受けられなかった。数が少ないのか、アイツが特別なのか判断するには情報が足りなさすぎる。要調査ですな。ちなみに精霊さんたちにお伺いを立ててみたら、ここら辺一帯の主的存在!って楽しそうに仰っていました。ハイ。
日もだいぶ傾いてきた、そろそろ我が家へ帰ろうと森の中を歩いていた時だった。
「なんか争っているような気配と何物かの声・・・というより鳴声か?」
「そうだね。行ってみるかい?」
「妙に気になるんだよな・・・よし、行ってみよう」
自分が感じた好奇心に逆らわず、森の奥へと入っていく。そこでみたものは・・・