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第56話:地下遺跡へと突入する事になりました。

 ガルドさんがバルガスのオジサマ方を抑え込んでくれている間に、私達はサッサとゲートを潜り抜けた。ゲートの近くでやり合っていなくて本当に助かったよ。横を通りがかる時にチラッとガルドさんの方を見やったけど、思いのほか感情を抑え込んで対処していた。

 バルガスのオジサマとクラウドに所属してる様子の如何にも身なりの良い人達に取り囲まれて、ある事無い事騒ぎ立てている様子だったけど、連中の話を聞きつつ地下遺跡に赴く準備を平行して行う様は素直に凄いと思います。


 状況が状況なので、必要最小限の装備と物資を持って速度重視で私達は走る。私達の速度にリカルドさんは始めこそついて来れていたが、途中から目に見えて失速しだした所で


『俺は置いてけ!今は一刻も早く地下遺跡に辿り着く事が最優先だ!遺跡都市に着いたら、俺はガルドの援護に回る!』


 そう言って徐々に遠ざかって行ってしまったので、置いて来た次第です。なので今、私達はクランメンバーのみで行動している。


 以前辿ったルートをなぞる様に走り、地下遺跡に続く断崖前に辿り着く。


「お願いします!そこを通してください!父が!クランメンバーが中にいるんです!」

「何度も言ってるだろうが!今は入口を開けられない!中の状況をお前達も知らないわけじゃねぇだろ!?」


 そんな言い合いをしている場面に出くわした。

 ロイさんに詰め寄っているのは複数の若い探索者だ。警告を聞かずに地下遺跡でやらかした連中の関係者って所かな。


「ロイさん、レオナちゃん、おまたせしました」

「!キョウか。見ての通りだ。こいつらが中に入れろとよ」

「お願いします!貴方からもこの方を説得してください!」


 レオナちゃんが入口へと繋がる蓋を死守し、ロイさんがその前に立ち塞がっている。他にもこの場所を監視してくれている人達がいるはずなんだけど、姿は見当たらない。寄って来るモンスター達を追払ってくれているのかな?

 ロイさんが聞く耳を持ってくれないせいか、矛先がこっちに向けられちゃったよ。やれやれ、仕方ないなぁ。


「あのね、そもそもこんな事態を招いたのは誰なのか分かっているよね?私達やそこにいる2人も、これ以上被害が拡大しないように動いているの。今、その蓋を開けたらどうなる?言うまでもないよね?」

「・・・分かっています。でも、それでも!皆を助けたいのっ!お願いします!私達だけでいいんです、中に入れてください!」


 このグループを率いているらしい女の子が頭を下げてお願いしてくる。気持ちは分からないでもないが、それではリスクばかりで何も益が無い。


「もういい・・・こうなりゃ力ずくでもっ!」

「おいよせアントン!周りをよく見ろ!俺達が敵う訳ねーだろ!」

「止めるなテリー!早くしねーと、親父達が!」

「・・・っ!おい、ロバート!見てねぇでお前も手伝えよ!」

「スマン」

「はぅ、はぅぅぅっ・・・シルヴィアちゃんどうしよう!?」

「・・・貴方達、今はそんな事してる場合じゃないでしょう!メルティも落ち着きなさい」


 我慢の限界が来たのか、アントン青年が強硬突破しようとした所をテリー青年が後ろから羽交い絞めにし、抑えきれそうに無いから手伝い要請した相手がロバート青年・・・青年?アワワしてる子がメルティっていう女の子で、率先して私達と話し合っているのがシルヴィアという女の子。

 パッと見は私と見た目の年齢は近そう。寧ろ私の方が年下に見えるかも・・・。一言でこのグループの面々を表すのなら、アントンはイノシシっぽく、テリーは鹿だろうか、ロバートは・・・クマだね。一人だけガタイが飛びぬけているし。女性陣はシルヴィアがキツネで、メルティが馬かな・・・どっちも特徴的な尻尾とお耳をお持ちだから分かりやすい。


「・・・終わった?どの道、考え無しに入れてくれじゃミスミス育ち盛りの探索者達を死なせるだけ。そんな馬鹿な話、通るわけないでしょ」

「・・・つまり、貴方がたを納得させるだけの代案を出せって事ですか?」

「その通り。私と蓋を死守してる2人を納得させる事ができる案なら、勿論耳を傾けるよ」


 私とシルヴィアがそんな話をしていると


「初級者の癖に何言ってやがる!偉そうにしやがって!呑気に話し合いなんざしてられねぇ!時間がねぇんだ!どけよっちくしょぉぉぉっ!」


 テリーとロバートに抑え込まれているアントンが尚も噛み付いてくる。


「状況分かって言ってるのかな?正直な話、遺跡内部だけじゃなく遺跡都市の方まで被害が出るかもしれない事を、貴方達のクラウドはしでかしたんだよ。ハッキリ言おうか?お前らの勝手な都合でこれ以上事態を悪化させるな。話を聞いてくれるだけでも有難いと思え。強行突破を試みるつもりなら・・・それ相応の覚悟で掛かって来なさい」


 ちょびっとだけ殺気を込めて威圧する。瞬間、アントンだけでなく他の面々も蛇に睨まれたカエルの様に身を竦ませる。

 やれやれ、これだから若い者は・・・って、私も成年すら迎えていないってのに何言ってんだか。好き好んでこんな役回りやってるわけじゃないってのに・・・後でガルドさんに愚痴ってやる。

 何か後ろの方でヒソヒソと『キャー、キョウちゃんってばカワカッコイイ!』とか聞こえてくるんだけど、緊張感ないな~君達。

 その時だ。閉じていた蓋に下から突き上げるような衝撃が加わり、怒鳴り声の様な物が聞こえてきた。


『おい!何で入口が塞がってやがる!誰が閉めやがった!』

『何やってる!早くこじ開けろ!』

『うるせーな!今やってんだろうがよっ!』


 そんな声と共に蓋をこじ開けようと数度殴りつけるような衝撃が加えられる。私達は直にロイさん達と連携をとり、シリカにこちらのタイミングで蓋を開けてもらうよう位置について貰う。

 こちらの合図に合わせ、シリカが蓋を開ける。それと同時に飛び出て来た探索者をロイさんと協力して即座に捕縛する。


「ぐあぁっ!?」

「な、なんだてめぇら!?」


 どうやら男の探索者2人だけのようだ。シリカにすぐさま蓋を閉じて貰う。


「さて・・・シルヴィアだっけ、この2人に見覚えは?」

「・・・あります。クラウドに所属してるクランに居た人達です。確か所属しているクランの名は・・・ゴライア」


 私がシルヴィアに確認を取ると以外でも何でもない答えが返って来た。バルガスのクランね。


「頑張って逃げて来た所悪いんだけど、中の状況を教えてくれないかな?」


 私からの質問に2人の探索者は苦い顔になり、


「もはや死屍累々だ。どっかの誰かが祭壇らしきものを発見して、そこに安置されていた箱の様な物をこじ開けようとしたんだ。そしたらよ、急に辺り一面が殺気で充満して隙間と言う隙間から虫共が湧き出てきやがった」

「皆止めたんだ。止めとけって。なのにあの野郎『そんな迷信めいたものが怖くて、探索者なんざやってられるかよ』と言いやがった。結果、このざまさ。箱をこじ開けようとしてたソイツが真っ先に虫共に集られていたよ」


 そしてその場に居た人達も敵認定されてしまい、巻き添えを食らったわけだ。


「教えて下さい!父は・・・いや、ゴルゴーンの皆さんはどうなったのですか!」


 シルヴィアが2人の男探索者に詰め寄る。残りの面々もそれに追随し、固唾を飲んでいる。ふむ、巨人の次は怪物の名か。おっと、今はそれどころじゃなかったね。


「お前ら、あのクランの関係者か・・・スマン、分からない。俺らも無我夢中だったからな」

「一団を率いて撤退しようとしていた所は見た。けど、その後までは・・・」

「そうですか・・・」


 シルヴィア達は落胆を隠せない。無理もないか。通知が来ていないのなら、まだ死んではいないという事。まだ生きている・・・希望が残っている。だから余計に焦る。早く助けに行かないと死んでしまう。それが身内となれば、なおさらだ。


「一つ確認なんですけど、この入口付近に虫達は来ていましたか?」

「・・・いいや。そういえば、一定以上は追いかけてこなかった・・・かもしれない。俺らも冷静じゃなかったからハッキリとは言えないが」


 私からの質問に、曖昧ではあるが朗報がもたらされる。どうやら地下遺跡の主或いは管理者は、地上に出て来るつもりは無いようだ。とはいえ、テリトリーに侵入すれば襲い掛かってくるだろうな・・・どうしたものか。

 私は溜息を一つ付くとロイさんと話し合う。


「どうやら最悪の事態は避けれそうですね。どうしましょう?こうなってくると、救出するかしないかって話ですよね?」

「そうだな・・・ぶっちゃけ俺らが救出する義理なんざ毛ほどもないんだが」


 そう言って、シルヴィア達を見やるロイさん。若干気圧され気味ではあるが、ちゃんとロイさんの方を見やって結論を聞く姿勢を取っている。


「・・・俺らが行かねぇって言ったら、コイツ等絶対に特攻するよな?」

「まぁ、そうでしょうね」

「なら、やれる事はするか。キョウ、ガルドのおっさんに状況の報告を頼む。その間に残りの面々で突入するメンバーを厳選しとく」

「分かりました。お願いします」


 という事で、私は早速ガルドさんに念話で状況の説明を行う。向こうも向こうで動き出した模様で、既にこっちへ向かってるそうだ。足の速い者をこちらへ走らせたそうだから、その者に脱出してきた2名とシルヴィア達を任せろとの事だ。


「おう。了解。という事で、お前らはここでお留守番だ」

「・・・わ、私達も」

「それはダメ。お荷物を抱えた状態で救出活動とか、勘弁して」


 ロイさんのお留守番発言に食い下がろうとしたシルヴィアだったが、有無を言わさず私がシャットアウトする。

 ここまで来れる実力はあるみたいだが、それとこれとは話は別。強さも分からない虫達を相手取りながら、連携を取れない連中と一緒に動くのはゴメン被る。

 私の発言に反論したそうな顔してるのが殆どだったので、これまたハッキリ言ってあげよう。


「君達と私達は会ったばかり。連携して動く事が難しい。そんな連中を連れてちゃこっちまで足を掬われかねない」


 実力が近ければまた変わってくるけど、それを一々調べてる時間はそもそも無い。私達の動きに付いて来れなけば、最悪仕事が追加となる。

 悔しそうに項垂れるシルヴィア達だが、ここは譲るわけにはいかない。


「よし、行くのは俺とキョウとミズキの嬢ちゃんとレオナだ」


 どうやって決めたのか、真っ先に行くと言いそうなカシアが大人しい。やるなロイさん。


「カシアとマグル、シリカとツバキ、アルは周囲の警戒をお願い。もし私達が突入した後に虫達が地上に出て来ようとしたら迷わず蓋を閉めてね」


 皆が頷いたのを確認した後、私達は蓋を開けて地下遺跡へと突入するのだった。

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