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第53話:皆、会得しました。

「よし、何事もトライ&エラーだ。カシアとマグルの様子を見た限りでは悪影響とか無さそうだけど、もし気分が悪くなったりしたらすぐに教えてくれ。カシア、マグル、そっちもミアンとニーナの様子に気を配りながらやってくれな」

「は~い」

「わかりました」


 元気よく二人が返事をしてくれたのを確認すると、俺はレオナと手を繋ぐ。


「俺からアプローチしてみるから、レオナはそのままマナの体内循環を続けて」

「はい」


 俺もそうだがレオナも緊張しているようだ。カシアとマグルはさも簡単な事の様にやっていたから俺もすぐさま出来る・・・なんておめでたい思考はしていない。

 レオナの体内を流れるマナと俺の体内を流れるマナは別物という考えは払拭しよう。お互い大気中にあるマナを取り込んだだけだ。

 そして手を繋いだその先のレオナを意識するのではなく、レオナも俺の体の一部だと思ってみる事にしよう。

 カシアとマグルが成し遂げたソレを自分なりの解釈で試す。上記2つを念頭に置いた上で俺はレオナの体内を巡っているマナの流れに、自身の体内を流れるマナを、繋いだ手のその先へ合流させるように流した。


「!・・・んっ」


 レオナが僅かに身動ぎすると同時に声が漏れた。うん、失敗したな。


「・・・何か壁にぶつかったような感覚があったな。レオナちゃんはどう?」

「はい。キョウさんの方からマナが流れ込んでくるのを感じたんですが、その・・・反射的に拒んでしまいました」

「なるほど・・・俺らが繋いだ手はさしずめ流れを堰き止めている水門といった所か。レオナちゃん、もう一度同じ感じで流すから今度は拒まずに受け入れる事って出来そう?」

「や、やってみます!」

「・・・大丈夫?何か我慢とかしてない?」

「えっ!?だ、大丈夫ですよ!?ちょっと凄くてビックリしただけですからっ」


 声がちょっと上ずってるな・・・凄かった?何が凄かったのだろうか。


「?とりあえず、今さっき感じた感覚がまた来ると思うからお願いね」

「はいっ」


 再度同じように繋いだ手のその先へ流そうと試みる。


「んんっ・・・」


 何かレオナちゃんから漏れる声がちょっと色っぽい・・・お?さっきと同じで何やら壁みたいなものを感じはするけど、今度は少しずつ流れ込んでいくのを感じる。その瞬間、互いに繋いだ手の辺りでマナが合わさり一瞬で混ざり合って一つの流れになったのを知覚する。


「おぉ~・・・繋がった。色々と違和感とか不快感とかあるのかなと思ってたけど、特に感じないな。単純にマナの保有量が増えたって所か・・・おっとゴメンよ、レオナちゃんの方はどんな感じだい?」

「・・・凄かったです。キョウさんから流れて来る圧倒的なマナ、その濃さと言うんでしょうか?それが繋いだ手を通して混ざり合った瞬間・・・その、気持ちよかったというか・・・あぅ」


 途端に顔を赤くして俯いてしまうレオナちゃん。ゴメン、ゴメンよっ!そんなつもりで聞いたんじゃなかったんだ!・・・ちょっと、リカルドさん!そんな怖い面しながら後ろから肩を掴んで笑いかけて来るの止めてもらえません!?


「おらリカルド、その程度で一々反応してんじゃねぇよ。だから親バカって周りから突かれるんだぞ」


 ガルドさんが般若面と化しているリカルドさんの襟首をつかみ引きずっていく。


「離せガルドっ!レオナが!うちのレオナがぁぁぁぁっ」

「たくっ結婚前は遊び人と大差なかったヤツが、エミリの尻に敷かれた途端これだ。全く、俺はお前の管理人かっつーの」


 どうやらガルドさんもマナの体内循環を会得したようだ。ありがとうございます!脅威は取り除かれた。


「・・・よし、互いのマナ循環も安定してきたし、気を纏う段階に進んでみようか」

「はい・・・スイマセン、家の父が」


 恥ずかしそうに、そしてちょっぴり申し訳ない感じでレオナちゃんが謝ってくる。


「ハハハ・・・いや、うちの父親も似たような者だから気にしてたらキリがないよ?」

「そうなんですね・・・普段はちょっと面倒くさがりな所があるけど、ここぞという時は頼りになる父なんですが」


 お互いの父親トークで苦笑いをする俺とレオナちゃん。父親というのは娘を持つとどうにも過保護になる傾向が強いようだ。


「さて、気を取り直して・・・今から俺主導でレオナちゃんの掌に気を纏わせるから、腕を伸ばして」

「はい、お願いします」


 ある意味リカルドさんのおかげで変な緊張が解けて良かったのかもしれない。俺は自分の体の延長と化しているレオナの伸ばした腕の先、掌に気を纏わせる。


「あっ!この感じ・・・なるほど・・・こうやって気を纏うんですね」

「さっきも言った通り人によって向き不向きがあるから、俺のやり方に囚われず自分に合ったやり方を試行錯誤してみてね」


 そう言って俺は纏った気を霧散させ、互いに繋がっているマナを別けるイメージをする。するとすぐさま互いのマナが繋がる前の状態へと戻った。なるほどね~色々勉強になるわ。

 繋がっていた手を俺から離していくと、何処か名残惜しそうな顔をしてるレオナちゃんと目が合った。すぐに目を逸らされてしまったが、恥ずかしがるレオナちゃんは結構可愛らしい。


「じゃあレオナちゃん、早速気を纏ってみようか」

「はい!」


 レオナは一度目を閉じて深呼吸をした後、腕を伸ばす。しばしその姿勢で静止していると、薄っすらとだが掌に気が纏いだす。

 その光景を見て俺は思わず拳を握りしめてしまった。よし!これで俺が触れずとも気を纏う事が可能って事が証明された!あっ因みに俺はツバキ作の極薄な手袋を身に着けているので、例の厄介な能力は発動しない。アレはあくまで素手の状態で触れないと発動しないのだ。


「レオナちゃん。今気を纏っている訳だけど、纏っている掌に圧迫感とか締め付けられる感覚ってあるかな?」


 俺からの質問に対し、レオナは気を纏っている自身の手をマジマジと見つつ、首を横に振った。


「いえ、特にそのような感覚は無いです」

「それは良かった。もし気を纏った状態でその箇所に圧迫感やら締め付けられる感覚が出たら要注意だよ。その状態で身体強化を発動しようものなら、最悪その箇所が負荷に耐え切れずに自壊するからね。十分に注意する事」

「わかりました」

「よし、でわ少しずつ纏っている気の出力を上げて行ってみよう」


 俺の指示に従ってレオナの掌に纏っている気が濃くなっていく。薄っすらからボンヤリに、ボンヤリから徐々にハッキリとした輪郭に・・・と言う所で、


「・・・掌に痺れを感じます」

「ストップ。その感じを忘れないでね。今のレオナちゃんだとこの濃度のチョイ下辺りが限界って事ね。さっきも言ったけどその状態で身体強化はご法度だよ。他の能力もどんな悪影響が出るか不明だから禁止」


 俺の説明に静かに頷くレオナちゃん。いい子である。


「限界も分かったので今度は鍛錬方法なんだけど、まずはマナの体内循環を意識せずに行えるようになる事。それこそ呼吸をするようにね」

「はい」

「それが出来るようになったら、気を纏った鍛錬に入る。まぁ鍛錬って言っても一定の気を纏った状態を常に維持して、寝る時と人と接触する時を除いた時間はずっと身体強化を全身に掛けておくってだけの事なんだけどね」

「・・・はい?」

「あ、身体強化を掛ける時は、さっき測った限界の5分の1くらいでいいからね?その状態で一日過ごせば、恐らく階段上り下りするのも億劫な程にシンドイから」

「・・・」

「で、ソレを1週間も続けた頃には体が負荷に慣れるから、再度限界を測って5分の1の部分を修正して以下繰り返し・・・かな!因みにこの鍛錬を繰り返しても、なぜかマッチョにはならないんだよね・・・ミステリー」

「あ、あのっ質問なんですけど・・・キョウさんはその鍛錬をどれくらい続けているのですか?」

「ん?そうだなぁ・・・かれこれ7~8年って所かな」

「凄いです・・・」


 カシアとマグルが俺と出会って間もない頃にも似たような事をやっていたが、今回はソレに少し手を加えた内容だ。

 と言っても寝る時もマナ循環するのを止めたり、限界ギリギリでの身体強化維持から5分の1にダウンした位だ。

 ギリギリから5分の1に落としたのは、体に掛かる負荷が半端じゃないというのと、万一コントロールをミスっても大丈夫なよう安全マージンを取った為だ。


「経験上、いきなり1日維持するのは難しいから、徐々に時間を延ばす形で行っていくといいと思うよ」

「そうですよね・・・流石に1日は・・・自信ないです」

「あっはっは!な~に、すぐに良くなってくるよ?ちゃんと続けさえしていれば、日々の成長を実感できるからね」


 何処となく不安な表情が抜けきらなかったレオナちゃんだが、ミズキお気に入りのサムズアップで返答として返す。

 さてさて、こっちは一段落したぞ。カシアとマグルの方はどうなったかな?


「ミアンねーちゃん、こう!」

「こ、こう?」

「・・・何をやっているのかな?」


 良く分からないポーズをとってドヤ顔してるカシアとそれを模倣してるミアン。一体その態勢にどんな意味があるのだろうか?


「カシア、それってどんな効果があるんだ?」


 わからなければ聞けばいい。丁度そこに本人が居るのだから。


「あ、あるじ!こうするとね、なんでか分からないけど身体強化でヒヘイした体のつかれが取れてくるの~」


 マジでか。そのジョ〇ョ立ちみたいな奇妙なポーズで?何か背景にゴゴゴゴゴとかズキュウウウンとか幻視しそうだわ。


「ほう・・・どれどれ」


 悪ノリ大いに結構!こういう息抜きも人生には必要だよね~。って事で俺もその奇妙なポーズを取ってみる。あ、背景は是非メギャンで。ついでに本当に疲れが抜けるのなら一石二鳥。


「「「・・・」」」


 傍から見れば、中々シュールな光景かもしれない。ニーナは腹を抱えて爆笑しているし、マグルは呆れているのか恥ずかしいのかちょっと判別付かない表情だ。

 それ以外のオーディエンスも十人十色だ。ここで恥ずかしがったら負けである。


「・・・お?」


 驚いた。原理や理屈は分からないが、確かに強張った筋肉の緊張が和らいでいくのを感じる。クールダウンとかストレッチのような効果があるのかもしれない。凄いぞ〇ョジョ立ち!いや、凄いのはコレを発見したカシアだな!


「ね?つかれ取れるでしょ、あるじ?」

「あぁ、カシアは凄いな~。良く気づいたもんだ」


 俺はポーズを解除し、カシアの頭をナデナデする。カシアが気持ちよさそうに目を細めながらはにかむ。癒されるわ~。


「ところで2人共。気は纏えるようになったのかな?」


 俺はミアンとニーナに向けて問いかけてみる。


「はい、そこは問題なく。カシアちゃんの纏い方は凄く独特だったけど、とても参考になった」


 こちらは姉のミアン。


「うん、マグル君から手取り足取り教えて貰った~。私とすんなりマナを合わせたの凄かったんだから!」


 そしてこっちが妹のニーナ。そうかそうか、ちゃんと出来るようになったみたいで何よりだ。

 丁度マグルもこっちに来たので、カシアと一緒にナデナデしよう。


「よしよし、お疲れさん2人共」


 目一杯撫でちゃうゾー。カシアとマグルをナデナデしながら、双子姉妹にもレオナに伝えた注意事項を伝える。


「はい、気をつける」

「わかったぞ~」


 2人共、ザックリとであったがカシアとマグルからやっちゃいけない事は教えて貰っていた。お陰で説明はすんなりと終わった。

 さ、後はこの子達の頑張り次第だ。カシアやマグルと年が近いのもあり、性格的にもさっぱりしてるせいか接しやすい。このままレオナと同じようにうちのクランメンバー達と仲良くなってくれると有難いな。

 さて、お次はリカルドさんかな?それともガルドさん?そう思って振り返ってみたら、リカルドさんは娘であるレオナにマナを合わせてくれと懇願していた。


「こらリカルド、レオナちゃんが困ってるじゃねぇか。ちょっと落ち着け」

「くっ!ここは譲れねぇ・・・俺の初めてはレオナに捧げる!」

「お前は何を言っているんだ!?」


 本当にナニを言っているんだか・・・ガルドさん大変っすね。ん?何やらレオナちゃんがこっち向いて助けて欲しそうだ。


「キョウさん。覚えたての私でマナを合わせても大丈夫なんでしょうか?」

「別段、失敗したからと言って危険があるわけじゃないから・・・レオナちゃんが良いのならリカルドさんの事は任せるけど。もし不安なら近くでガルドさんとマナ合わせをしようか?」

「はい、それでお願いします」


 というわけで、ちゃっちゃと済ませましょうガルドさん・・・え、恥ずかしい?そんな事言ったら俺まで恥ずかしくなるじゃないですか!


「えぇい!いい年して何恥ずかしがってるんですか!」

「いや、だってなぁ・・・さっきのキョウとレオナのを見ちまうとな・・・凄いんだろう?」

「・・・」


 あ、ダメだ。流石にもう俺もムリ。俺が白く燃え尽きそうになってると、そこに救世主がやってきた!


「ガルドのおっちゃん!じゃあ私とマナ合わせしようよっ!」


 そう言って立候補してくれたのはカシアだ。おぉ、我がメシアよお救いください!ガルドさんもカシアなら大丈夫か・・・と、コレを承諾。

 カシアは俺を見捨てなかった!今度俺が作れる最大限の料理でお返しするとしよう。というわけで、ガルドさんはカシアに任せ俺はリカルドさんとレオナちゃんのマナ合わせの方を監修しよう。

 あっちには覚えたてではあるがミアンとニーナも居るし、何よりマグルが付いている。危険な事は起こらんでしょう。万一があっても、マグルなら即座に俺へと知らせてくれる。


 こうして残りの面々もマナの体内循環を会得したタイミングで手の空いている人の協力を得る形で気を纏えるようになった。

 尚、カイムさんとマナ合わせをするのがミアンかニーナかでちょっと揉めたり、ロイさんも結局俺とはしたがらなかったので、丁度リカルドさんとのマナ合わせが終わったレオナちゃんにお願いした。

 意外な事に、最後だったのがシエルさん。フォースの感覚が一番染みついてた影響なのか、本当に時間が掛かった。シエルさんがマナの体内循環を会得した頃には皆、気を纏えるようになっていたので大層悔しがっていた。

 けど、その後の気を纏うのが誰よりも早かった。なんと、マナ合わせをせずとも独力で気を纏ってみせたのだ。これには皆が驚き、称賛の拍手を送っていた。


 一方その頃、ミズキ、シリカ、ツバキやアルは何をしていたかと言うと、フェイスイーターの残骸を使用したアルのグロ耐性向上の特訓をやっていたのは別のお話。時たま会議室の隅っこの方から絶叫が聞こえたりしていたがアルの尊厳を守る為、詳しい内容は省く事にする。

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