第45話:捜索開始です。
皆の遺跡に対する認識をキッチリ書き換えた所で、俺達は捜索を開始した。勿論シリカには放してもらいましたよ?
少し奥に進んだ所で、早速問題が発生する。
「・・・念話が使えない?」
そう呟いたのはシエルさんだ。恐らく、クランメンバーに定期報告でもしようとしたのだろう。その呟きを切っ掛けに他の方々も念話を試してみた。結果、同様の答えが返って来た。
「なるほど、レオナがクランメンバーと連絡が取れなくなったのもこいつが原因か」
「あまり時間を掛けるわけにはいきませんね。このままだと私達まで消息不明扱いになってしまいます」
「いや、この広さだ。何が潜んでいるかも分らん。どうしても時間は必要だ・・・仕方ねぇ、一旦使える所まで戻って状況を説明してくる」
お三方が問題に対して素早く判断を下していく。ロイさんが落ちた穴にまで戻ろうとした所で、
「待てロイ、俺も行く。穴がどうして塞がっていたのかが気になる・・・単独行動は控えるべきだろう」
「普段の探索でも単独行動を好むおっさんが珍しく慎重だな、何が引っかかってるんだ?」
「あぁ・・・穴を下って地下に降りてきた時、ロイが落ちた際に崩れ落ちた土の量と、下に溜まっていた土の量と合わないと感じてな。縦穴部分は俺らが触れても崩れないくらい頑丈だった。つまりはだ・・・」
「誰かが上から穴を塞いだって事か?」
「その可能性が一番高いと俺は思ってる。或いは下からでも穴を塞ぐ事が出来る存在の可能性だが・・・」
そう言ってガルドさんが俺の方を見てきたので
「上から降り注ぐ光が煩わしいとか、見つかりたくなくて塞いだかもしれませんね。遺跡で眠っている方々は往々にして存在を隠したがりますから。まぁ、封印されている方は別ですけどね」
俺の返答を聞いた面々は、
「との事だ。警戒しておくに越したことはない」
「良く分かったぜ」
そう言ってガルドさんとロイさんは状況報告と警戒の為、引き返していく。然程時間はかからずに戻ってくるだろうから、俺達はこの場で待機する事にする。
合流した俺達は捜索を開始する。ここに来て直に思った事だがかなり広大だ。今の所、敵意を向けられる事も無ければこちらへと向かってくる存在の気配も感じない。暫くは肝試しに近い捜索が続く。
「あるじ!血の匂いがする~」
カシアが鼻をスンスンさせながら教えてくれる。まだ気配は感じられない。俺達はカシア誘導の元、その匂いの元へと向かって歩みを進める。
「ついた!」
そう言ってカシアが指し示すその先には、夥しい量の血だまりが出来上がっていた。まだ乾いていない所を見るに、出来上がってからまだ然程時間は経っていないはず。
そこから奥の方へと血痕が続いているようだ。これがレオナちゃんのクランメンバーの誰かが負った傷によるものだとしたら、この量はマズイ。早く止血してバンクへ連れて行かないと失血死する。
血痕を辿る形で俺達は急ぐ、不意打ちなんてゴメンなので勿論警戒は怠らない。速度は落ちるがこればかりは仕方ない。
そんな事を考えながら進んでいくと、とある方向に人の気配を感じた。それと同時に普段は進んで話しかけてこない精霊さん達が警告をしてきた。
『あっちに行っちゃだめー』『その先は危険だ』『人のようで人じゃないのが居るよ』
ここまでハッキリと警告してくるのはとても珍しい。俺はその警告に対して精霊さん達にお礼を言って立ち止まる。
「どうした、キョウ?」
俺が急に立ち止まったので、ガルドさんが問いかけて来る。皆もそれにつられて止まってこちらを見て来る。レオナには結構焦りが見られる。早く行きたいのだろう。
「皆さん、ここから先は最大限の警戒で。シリカ、後ろを頼む。アルとマグルは左、ミズキとカシアは右の警戒を。ガルドさん達はこのまま前方をお願いします。俺とツバキ、レオナは中央で状況に応じて対処だ」
俺の雰囲気がガラっと変わったせいか、周りがピリっとした空気へと切り替わる。
簡易的な陣形を組んで進んでいく。もう血痕を辿る必要はない。既に皆この先の気配に気づいている。
突き当りの角を曲がったその先で複数の人の気配が感じられる。声の様な物も聞こえてきた。
はやる気持ちを抑え込み、俺達は突き当りの角を曲がる。
奥はどうやら袋小路になっているようで、行き止まりの所で複数が固まっているのが見受けられる。追い詰められたのか、グッタリとした人物を治療している人が1人、それを守る形で3人が壁を作っている感じだ。
そしてその集団の手前付近、丁度俺達と奥の集団の間に挟まれる形でソイツは立っていた。
大分目が慣れたとはいえ、流石に奥に居る連中の顔までは分からない。俺としてはギリで間にいるソイツの全貌が分かる程度だ。けど、他の面々は違ったみたいで。
「おい、リカルド!無事かっ!?」
「お父さん!お母さん!皆、無事なのっ!?」
どうやら目的の捜索対象のようだ。にしても、よくこの暗さで奥の方まで見通せるな。流石は異世界の住人という所だろうか。基礎能力が段違いである。
「ガルドか!?気を付けろ!目の前にいるソイツ、人じゃない!レオナ!スマン!母さんがやられたっ。早くバンクに連れて行かないとマズイ!」
先ほどの血だまりはレオナの母親の物のようだ。という事は、あそこでグッタリしてるのがそうか。
倒れている母親が目に入ったのだろう、泣きそうな表情になったかと思ったら今度は怒りの形相となり、目の前にいる正体不明の存在を睨みつける。
「・・・お前が、お前がお母さんをっ!」
そう言って飛び出そうとした所を俺が首に腕を回して抑え込む。
「離してっ!アイツをっアイツがっ!」
「落ち着け!怒りで我を忘れた状態で敵に突っ込もうとすんじゃねぇ!死にたいのかお前!まずはその怒りを抑えろ。お前の勝手な行動が事態を更に悪くするかもしれねぇんだ。感情に任せて動く奴は周りを危険に晒す・・・大事な事だからもう一度言うぞ?レオナ、落ち着け」
ガラにもなく、声を荒げてレオナを諫める。そんな珍しい光景なせいか誰も口を出してこない。そしてそんな俺の叱咤を受けたレオナは、
「!・・・っスイマセン」
ピンと上を向いていた耳がへにゃっと垂れ、ビンビンに逆立っていた尻尾も又の内側に挟まってしまう。ちょっと委縮させてしまったかもしれない。
「・・・とはいえ負傷者がいる以上、余り時間が無いのも確かか。ガルドさん、ロイさん、シエルさん、アイツを牽制して抑え込めそうですか?無理そうなら無難にシリカを差し向けます」
レオナの首に絡めていた腕を外しつつ、俺からのオーダーにお三方は、
「・・・まぁ、大丈夫だろう」
「むしろ、俺一人で十分だ」
「ダメよ。ロイだけとか、不安過ぎるもの」
またそうやってロイさんとシエルさんは直に睨み合う。まぁ、見た所お相手の動きはド素人のソレだから大丈夫だとは思うが、油断はしない。その為の3人だ。
「でわ、お願いします。アルとマグル、ミズキとカシア、シリカはそのまま周囲の警戒をよろしく頼む。敵は1人とは限らないからな?気を抜くんじゃないぞ。ツバキとレオナはガルドさん達が敵を抑えている間に向こうと合流。ポーション類を詰め込んだバックパックを預けるからこれで応急手当を。それが済んだら、スキを見て全員でこちらへと撤退してくるんだ・・・ツバキ、レオナのサポートを頼む」
「うん、任されたよ」
ツバキにバックパックを渡しつつ、俺達は行動に移してゆく。ミズキとカシアが凄く戦いたそうにソワソワしていたが、今回はダメである。
「俺は適宜相手の動きを見て行動します・・・では皆さん、健闘を祈ります」




