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第43話:押し切られてしまいました。

「ちょっレオナちゃん!?不用意に近づくと危ないぞ!」


 俺は慌ててレオナちゃんを止めようとするが、そんな俺をガルドさんが引き止めて来る。


「大丈夫だキョウ。俺達がなんで会議室であの子に近づくのを躊躇ったのか、その一端を見れるぞ」


 そんなやり取りをしていたらレオナちゃんが野球ボールサイズの石を拾い、その柱に向かって投げつけた。ガムテープで開口部を塞いだ段ボールを踏んだ時のような音を立てて、その柱に穴が空く。

 一瞬の静寂後、風に吹かれた樹木が奏でる葉音に類似した音と共に黒い何かが穴の空いた柱から出てきた。それも大量に。


「うわ・・・なんだアレ」

「あれはフォレストアントってモンスターですね。アレに集られたら5分と経たずに骨にされます」


 何それ超怖いんですけど。教えてくれたシエルさんも恐々とした表情をしている。


 巣を破壊した存在がレオナだと認識しているのか、アリたちがレオナに向かって殺到してくる。対するレオナはというと・・・ただ立っているだけ。

 おぉい!流石にそれはマズイだろうよ!そう思ってレオナに近づこうとした時だ。


 レオナの周囲の温度が急激に上がった。もうそれは近づけない程に。レオナの周囲から陽炎の様なものが見えたと思ったら、殺到してきていたアリ達が突然燃え上がる。


 燃え上がったアリ達はそのまま導火線の如く延焼していき、遂には巣まで到達しあっという間に焼き尽くしてしまう。

 残りもアリの巣であろう柱を同じ要領で穴を空け、駆除していくレオナ。辺りに落ち葉を燃やしたような匂いが漂ってきたが、それが気にならないくらい衝撃的な光景だ。


「驚くだろう?あれがレオナの能力なんだよ。全く・・・規格外もいい所だぜ」


 ロイさんがため息交じりにボヤいているが、先ほどみたいな後ろ暗い感情は見えない。気持ちの区切りをつけるのに俺のアドバイスが役立ってくれたのなら幸いだ。にしてもだ・・・


「会議室でミズキが飛び掛かった時、あの能力を使われてたらヤバかったんじゃないか?」


 俺がミズキに聞いてみたら


「どうかな・・・火傷くらいはしたかも」


 あの火力で火傷で済むんじゃない?って言えるミズキがどんだけだよって話だ。俺なら間違いなく消し炭だね。


「どのみち、会議室では使わなかった・・・いや、というより使えなかったはずだ。念の為、シエルがすぐさま対応できるよう準備だけはして貰っていたが」

「あぁ・・・確かにあの能力は護衛向きじゃあないですね」

「そうだ。あんなのをバルガスの目の前で使った日には、護衛対象が炭になってしまうからな・・・とはいえ、契約の内容如何によっては使ってくる可能性もあったわけだが、流石のバルガスもそこまで馬鹿じゃなかったようだ」


 嫌われまくっているな、あのおっさん。ガルドさんがここまで露骨に嫌そうな雰囲気で言うのは中々だと俺は思うぞ。


 巣の駆除が終わったのか、レオナがこちらへと戻ってくる。そんなレオナの事を、興奮気味で出迎えて抱き付いたのはカシアだ。


「レオナちゃん、すご~い!あれって、どうやってるのっ!?私なんて、精々火を吐けるくらいなのに」

「いや、姉さん。姉さんのアレはもはや火を吐くってレベルじゃないからね?」

「そんな事言ったら、マグルのアレなんてもはや爆発じゃん!」

「あの、離れてくれると嬉しいのですが」


 相性が良かったのか、あの3人は良く一緒に行動するようになった。身内以外で出来た初めての友人だ、何をするにしても楽しくて仕方がないという感じで、見ているこちらとしては大変微笑ましい。

 若干1名、カシアとマグルを取られてしまって哀愁を漂わせているのが居るが俺は見なかった事にするつもりだ。

 ツバキとシリカはレオナが駆除して炭と化したアリの巣が気になるのか、何やら2人で現場検証的な事をしている。後で何してたのか聞いてみよう。


「どうでしたか?」


 レオナが俺に感想を聞いて来る。


「いやはや、凄いとしか言いようがないな。俺のアドバイスなんて要らないんじゃないかな」

「キョウさんなら、この能力の欠点が直に分かると思います」

「欠点?欠点か・・・そうだなぁ、直に思いつくのは対象が燃えてしまう事かな」

「正解です。これじゃモンスターから何も得られません」


 確かにこれだとグロースに使える経験値くらいしか手に入らないな。つまりレオナちゃんは、


「この能力に頼らないで戦う術を身に着けたいと?でも、レオナちゃんはミズキとそれなりに素手で渡り合っていたと思うんだけど」

「はい、ええっと・・・その、素手による格闘ではなくキョウさんやアルさん、ミズキさんが持っている武器の扱いを教えて欲しいのです」


 へぇ、こっちの住人で独特の先入観があるにも関わらず武器に興味を持ったのはレオナちゃんが初めてかもしれない。アルもミズキも武器の凄さ怖さを体験させて、やっと興味を持ったくらいだし。そんな体験無しで武器に興味を持ったのはどんな経緯だろうな。

 元々アルとミズキは自身の身を守る為に勧めたんだが、扱い方を覚えていく内に武器という存在の奥深さを知ってしまったようだ。魅入られたと言ってもいい。おかげで今となっちゃどちらも己が扱っている武器にご執心だ。


「武器を?そりゃまた何でだい?」


 なので、理由を聞いてみよ~。


「会議室でキョウさんが持っていたその武器を、あの者達が馬鹿にし踏みつけた時・・・ほんの一瞬でしたけどキョウさんから途轍もない気配を感じました。あれはもう殺気とか怒気と言えるような代物じゃありません・・・別の何かです。その時ですね、それほど大事になさっている武器という存在が一体どういう代物なのか興味を持ったのは」


 ・・・思いっきり俺が原因でした。あの時か~・・・確かに我を忘れて皆殺しにしてやるとか一瞬思ったかもしれん。にしても、あの状況下で武器に興味を持つとか中々変わった感性をお持ちですな。だがしかし、俺は身内以外で武器に関するあれこれを教えるつもりは無い。


「ふむ、なるほどね・・・武器に関しての諸々はクラン内でしか情報共有していなくてね。外部に漏れると色々面倒になるからクラン加入時の契約で話せないようになってるんだよ・・・だから、ごめんね?」


 俺が断る事を予想してたのかレオナちゃんは、


「つまり、私が外部に漏らさないようキョウさんと契約すれば問題ないって事ですよね」


 おおぅ、これが因果応報という奴か。レオナちゃんの対応力が向上しておりますな。けど、あんな事があったばかりでまたすぐに契約とか・・・おじさん、それはちょっと頂けないと思うんだ。


「レオナちゃん、ダメだよ?ただでさえその契約で危ない目にあったばかりなんだ。前回は色んな要素が重なったおかげで大事なく解約に至れたにすぎない。そして俺はそんな甘い内容で契約するつもりは無い」


 ここはきつめにきっぱり言っておかないとダメな場面です。はい。そうしたら、


「でわ、お互いが合意に至れる内容で契約したいので話し合いを求めます。こちらは前回の失敗を踏まえてアドバイザーとしてガルドさん、ロイさん、シエルさんが付きます。いいですよね?」


 な、なんだってー!謀ったな、シ〇〇!!慌てて俺の後ろに居るであろうお三方に振り返ってみれば、


「まぁ、それだけ本気で学びたいって事だ。お手柔らかに頼む」

「若い奴が積極的に技術を身に着けたがっているんだ、ここは後押ししてやるべきだろ?」

「キョウが言ったのですよ?我々には伸びしろがあるって。なら伸び盛りのレオナには、頑張って頂かないと」


 くそぅ!いい笑顔で返してきやがる。改めて俺はレオナちゃんの方に振り向き、


「と、とりあえずこの捜索が終わった後で話し合うって事で・・・いいかい?」

「はい!よろしくお願いしますね!」


 あ~・・・これ、どうあがいても契約する事になるんだろうなぁ。

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