第40話:欠陥が見つかりました。
あれからレオナの話を聞いた。レオナの所属クランは父親がクランの代表でその補佐に母親、それ以降はメンバーという形でレオナの兄が1人、兄の事を慕ってやってきた双子の探索者が2人、ここにレオナを含めて6人という構成だ。
大変有望なクランで少数精鋭と言える面々だったそうだ。親2人は共に紺色、鬼才とか言われている位で真紅の一個下の位である。兄も瞬く間に灰色・・・つまり上級者まであっという間だったそうな。
そんな兄に惹かれてクランに入れて欲しいとやって来たのが双子の探索者達だと言う。加入の経緯までは聞いていないが、加入当初は駆け出し・・・ええっと緑色かな?だったが、こちらも瞬く間に赤色・・・中級者になったそうだ。
レオナ自身は青色、初心者という位だがその身体能力は凄まじく、こちらも直に位は上がっていくだろうと言われるくらい将来有望な若手との事。自身の事をそう話していた時のレオナの恥ずかしそうな表情が何とも可愛らしかった。
そんな順風満帆なクランが事件に巻き込まれたのは今から3日前だ。レオナは仲の良い友人達と臨時のパーティを作って探索をしていたそうだ。
親たちはその日、レオナを除いた5人で探索をしていたそうだが昼に差し掛かる頃、レオナに兄から念話があったそうだ。未開拓エリアに続いていそうな道を発見したと。
未開拓エリアに行く為には途轍もない高さの断崖を踏破しなくてはならず、今現在そこを通過出来た者は居ないとされている。何でも、一定以上登ると飛行型のモンスターから攻撃を受けるそうでソレを躱しながら上まで行く事が出来ないらしい。
その飛行型のモンスターは鳥の形状で硬質で鋭い羽毛を飛ばしてきたり、その鋭さを活かした近接攻撃を仕掛けてくるとの事。誰がそう言ったのか定かではないが、このモンスターの事を恐れを込めてウォッチャーと呼称するようになったそうだ。そいつらの所為で登る事が出来ず、これ以上の開拓が進まなくなっていると。
そんな状況を打破できる道が見つかったかもしれない。そんな興奮を孕んだ念話を最後に連絡が途絶えてしまう。
帰還予定時刻を過ぎても帰ってこないので、念話で状況を聞こうとしたのだがノイズの様な不快な音に阻まれ繋がらない。
不安を覚えたレオナは、急遽友人達が所属しているクラン代表者と連絡を取り捜索依頼をした。その時に駆けつけてくれたのが、ガルドさん、ロイさん、シエルさんの3人だったそうだ。
3人とレオナは直に捜索メンバーを集め、遺跡の大規模捜索を行った。捜索依頼は基本的に費用などは掛からず有志の集まりで行われる。集団で捜索は行われる為、比較的安全に探索もする事が出来るとあって人の集まりは良い。今回は知名度が高いクランの方々が率先して加わっていた事もあり、かなりの人数になったそうだ。
約2日かけて遺跡内を捜索した。けどソレらしい痕跡及び未開拓エリアに続いていそうな道は発見できなかった。誰もが生存は難しいと諦め、捜索メンバーの殆どは解散してしまった。ガルドさん達も昼夜問わず捜索をしてくれていたが発見に至らなかった。
そして今朝、遂に捜索は打ち切られてしまった。途方に暮れるレオナを最後まで励ましていた3人だが、探索者として遺跡に赴く以上これは起こり得る事だ。可能な限りの支援はすると3人はレオナに言い残し、同時にまだ探索者を続けるつもりなら快く向かい入れる旨を伝え去っていった。
しばらく何も考えられず立ち尽くしていたそうだ。その時、声を掛けてきたのがバルガスだ。バルガスはレオナにこう言ったそうだ。
『お前の両親達は未開拓エリアに居るんじゃないのか?念話が繋がらない理由は分からぬが、開拓済みのエリアに居ないからといって諦めるのはいささか早すぎると儂は思うがね。それに死亡通知は来ていないのだろう?なら、少なくとも死んではいないという事だ。我々は近いうち、未開拓エリアに進出する。その為の手段がもうじき整うからな。どうだ?儂の護衛を務めてくれるのなら、お前も一緒に連れて行ってやろうではないか』
その話を聞いたレオナは藁にも縋る思いで、その場で契約をしてしまったそうだ。話の真偽を確認せずに契約したというんだから、相当焦っていたんだろう。寧ろ、契約内容が護衛だけで良く済んだなとも言える。もしかすると、最初は緩い内容で契約して使えると判断したら外堀を埋めていく予定だったのかもしれない。まぁ判断する間もなくミズキにぶっ飛ばされてしまった訳だが。
そして、会議室のやり取りへと繋がる。結果、レオナは胡散臭いバルガスから上手く解約を言い渡される事に成功した為、すぐさまあの御三方に謝りに行ったそうだ。
そこで3人にバルガスに言われた事を伝えると、今一番未開拓エリアに到達できそうな人物の紹介をするという話になったそうだ。
つまり、俺らの事だ。あの3人も出会ったばかりで、何処まで話を聞いてくれるか未知数だがやってみる価値はあると言ったそうだ。
レオナはすぐさま俺らに会うべく行動に移した。3人は遺跡の外から来ているとしか把握していなかったので、そこから先は自身の感覚頼りで俺らの後を追ったらしい。そして、近くまで辿り着いた所でカシア達に発見された。そして今に至る。
話を聞いた俺達は、レオナのお願いを受ける事にした。内容は行方不明となっている両親達の捜索である。お願いを受けた時、レオナが泣き出してしまったのがとても印象に残っている。何度も感謝の言葉を告げていたよ。
翌日、速やかに寝た俺達は朝食を手早く済ませ、すぐさま遺跡都市へと向かう。
捜索をする以上、早いに越したことはない。辿り着くまでの道中、本来予定していた行動の一部を修正する。
食材確保に動く予定だったカシア、マグル、アル、ミズキの4人も遺跡都市へ行く事に。俺がレオナと一緒にガルドさん達へ話を通している間、アルにはツバキとシリカの登録をお願いする。
残りの3人は昨日預けたバックパックの回収及び、人数分のバックパック確保とポーション一式、携行食料の買い出しだ。携行食料はお世辞にも美味いと言える代物ではないが、行方不明の連中の状態が分からない以上備えはしておくべきだろう。
遺跡都市に到着した時、予想通りというかレオンとゲイルに危うく迎撃されそうになった。やはりシリカのインパクトは相当なものだったようで、最悪橋を落として時間を稼ぎつつ2人で決死の突撃を慣行するつもりだったとか。
そうなる前に俺が先行してシリカが無害である事を伝えたわけだが、その時の2人の様子はというと、
『キョウ、あれは一体なんだ!?え、クランメンバー?嘘を付くな嘘をっ!誰がどう見てもラスボスじゃねぇか!お前はあんな邪神的存在をどうやって仲間に引き入れたって言うんだ!えっ、娘?お前は何を言っているんだ!?』
ゲイルはこんな感じで半分ヤケクソ状態になっていた。つーか、ラスボスって表現が通じるんだな。だがしかし、うちの娘を邪神呼ばわりするのは許さんぞ?
俺がゲイルにそこん所を詳しく説明しようとした所で、レオンから待ったが入り、
『キョウ、俺達は遺跡都市の防衛が仕事だ。あの存在が本当に無害であると証明する事はできるか?』
努めて冷静な判断でもって対応してきてくれたので、俺は一度シリカと話をしてみる事を進めた。その結果、
『キョウ、スマン!疑って悪かった!凄くいい娘じゃないか。色々と複雑な経緯があるみたいだが、話をしてみて俺らと大差があるわけじゃないってのが良く分かったよ』
ゲイルはシリカの出自を聞いたらしく、何処となく声が震えているような気がした。もしかしたら泣いているのかもしれん。
『・・・済まない。対話を試みずに問答無用で排除しようとしたこちらの愚かさをどうか許してほしい』
レオンの方も見た目で判断してしまった己の浅慮さを恥じているのか、シリカの前で頭を下げていた。シリカもシリカで、
『いえ、お気になさらないでください。私が深く考えず趣味に走った結果ですから』
そう言ってこちらも下手に警戒感を抱かせてしまったせいか、何度も謝っている。何にせよ、これで最初の難関は突破出来たのではないだろうか。
とはいえ、このまま遺跡都市へ入っても住民がパニックを起こしてしまう可能性が大な為、急遽その対策を施す羽目に。
だからといって、即座に形状を変えたり小さくなったり出来るはずもなく・・・そもそもの原因はその身から醸し出すラスボス感というかオーラの様なものだ。皆これを敏感に感じ取ってしまい、必要以上にビビってしまう。
昨日体をゲットしたばかりの2人は気配のコントロールなどできようはずもなく、やむ終えず後回しにしていたのだが、致し方ない。今ここで練習して門番二人から許可が出る程度まで抑え込む。
『ふぅ、ちょっと時間がかかりそうなので予定変更だ。俺とシリカ、ツバキはここで気配を抑える練習、それが終わって遺跡都市に入れるようになったら急いで登録だ。アルとレオナの2人で、申し訳ないけどガルドさん達に挨拶兼捜索する旨を伝えてきて欲しい。残りは予定通り捜索の準備でよろしくお願いする』
そうして問題なく遺跡都市に入れるメンバーと別行動になり、今現在気配のコントロール練習をしているわけだが、
「キョウ、こんな感じでどうだい?」
「お、ツバキはコツを掴んだみたいだな。後はこれを意識せずに出来るようになれば、実戦でも通用するぞ。その先の応用が難しいんだが、それは今出来んくてもいいでしょ」
よし、ツバキは大丈夫そうだ。元々肉体があった時の感覚でも思い出したのか、案外スムーズに出来るようになった。
問題はシリカの方だ。
「お父様、サッパリ分からないわ!」
うん、もうね・・・駄々洩れって感じ?感情の起伏があるとそれに連動して気配が広い範囲に拡散したり、収縮したりしている。思ったんだが、よくレオナはシリカの事をビビらなかったな。近くにいたら圧迫感のようなものを感じていたはずなんだが・・・直感でシリカの本質に気づいたのだろうか?今度聞いてみるとしよう。
それよりもシリカの気配コントロールだ。
「うーん、俺らとシリカ達の体でもやってる事の違いは無いんだけどな。現にツバキは上手く行ったわけだし」
俺らがやっている気配のコントロールは、体内に取り込んでいるマナを周囲に同調させて違和感を感じないようにしているんだが、全身マナダイトの塊ともいえるシリカは周囲のマナ濃度に合わせるのが苦手なようだ。自身のマナ濃度が濃すぎて拡散出来ないのかな?でも、ツバキも全身マナダイトだよな。2人の違いってなんだ?即座に出て来るのは体積くらいなんだが・・・あとは肉体に対する経験だろうか?となると、有り余るマナをどうコントロールすればいいのか分からないって所か?
「シリカ、全身から漏れ出てるマナを抑える事って出来るか?」
「ぐ、具体的にどうすればいいのか分からないわ!」
うん、なるほど。これは大変だ。でも、今は時間が無いので応急処置にも等しいやり方でやり過ごそう。
「まず、全身を駆け巡っているマナは感じ取る事出来てる?」
「はい、それはわかるわ」
「それが今は体の至る所から漏れ出ているわけだが、それが漏れてしまっている箇所を把握する事は出来る?」
「えーっと・・・一杯あるわ」
よし、把握しきれてないな!現状のシリカじゃ自身のマナで全身を覆うなんて芸当は出来ない。効率が悪いけど一つ一つを塞いでいくしかない。
「分かる範囲でいいから、漏れている箇所に詰め物をして塞ぐイメージをしてみて」
俺がそういうとシリカは唸りながら、
「むむむむ、えい!てい!」
声は別に出さなくてもいいんだが、今は突っ込むのは止そう。
「で、ざっくりと塞いだらもう一度体を巡っているマナを感じ取ってみて」
「・・・あっ、さっきよりも漏れてない気がするわ」
「よし、以下繰り返し。漏れが無くなるまで塞ごう。そして、塞ぎ終わったらその感覚を覚えるんだ。そうすれば今後、その感覚を頼りに漏れを防げるようになるから」
「こ、これ・・・結構難しいんですけど!気を抜いたら塞いだ所がまた抜けるような・・・」
「がんばれ~、そして慣れるのだ。何度か失敗してる内に効率よく抜けない塞ぎ方みたいなものを体が覚えて来るから」
「あ、あっ!もうダメ・・・あぁ~~~!」
はい、失敗~。漏れてる箇所の6割を塞げたって所か。トライ&エラーだ、シリカ!
俺はシリカの奮闘を見守りつつレオンとゲイルに話しかける。シリカの横でツバキもアドバイスを送っているからそんなに時間はかからない・・・はずだ。
「どう?全部じゃなくても行けるかな?」
「そうだな・・・8割も抑えれば、住人達は気にしないと思うぞ。見た目よりもやはりあの気配が深刻だからな」
「あぁ、見た目に関しては俺達で慣れてるだろうから大丈夫だろ。俺は7割でも大丈夫だと思うんだがな」
レオンが8割と言い、ゲイルは7割でも大丈夫と言う。見た目よりもやっぱあの駄々洩れなマナ・・・正確には感情がふんだんに混ざったマナが気配となっている。これが周囲に拡散し、ヤバ目の圧迫感を与えて来るんだが、俺らが気配を抑えずに駄々洩れ状態にしてもここまで周囲に影響しない。マナを含まない気配は影響する範囲が狭いからだ。でもシリカの場合、溢れてるマナに気配が乗ってしまっているせいか、俺らが広範囲に威嚇する時のような状態が常に続いている感じになっている。しかもあのマナの濃さだ。感覚が鋭い者程、当てられたらヤバイかも。
これはもう気配のコントロール云々以前の問題だ。まずは蓋をしよう。コントロールはその後だ。
「いや、7割じゃ子供達が泣き出してしまいかねん。安全マージンを取って8割だ」
「だそうだ。キョウ、無理に抑えきる必要はないぞ」
「了解。聞こえたか~シリカ?8割塞いで普通に動き回れるようになったら入れるぞ~」
何やらシリカが金色のオーラを出しそうな構えをしているが、それで上手くいくのなら何も言うまい。俺らの会話が聞こえたらしいシリカは、
「お、お父様達は普段からこんなにも漏れないよう気を遣っているの?」
「いや、シリカ程漏れたりはしないな。内包量の違いも大きそうだが、やっぱ剥き出しのマナダイトが原因じゃなかろうか?」
「くぅぅぅ、改良の余地有りですわ!この一件が終わり次第、直に着手しなくてわ!」
「なに、この経験は必ず活きる。時間はあまりないが、存分に励むといい」
「お父様、プレッシャーをかけないでください!」
あ、また失敗した。でも、もうじき8割に届きそうだな。もうちょいだ。俺は直動けるように準備しつつレオンとゲイルとの他愛無い会話を始めるのだった。




