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第33話:説明を行いました。

※2019/07/24 一部文章を修正。

「どうも。この前はありがとうございます」

「いいって事よ。新人が大人げない連中に絡まれていたんだ。全く、恥ずかしいったらありゃしない」


 その場の空気を変える為なのか、ガルドさんは気さくに話しかけてくる。そうか、俺らが逃がした面々はガルドさんのクランメンバーだったのか。


「おっと。ちゃんとした挨拶とかはまだしてなかったな。俺はガルド、タイタンというクランのリーダーを任されている・・・って以前会った時に言ったかもしれん」

「えぇ、覚えています。僕はキキョウ、スイセンというクランのリーダーをしています。皆さん、よろしくお願いします」


 せっかくガルドさんが流れを作ってくれたんだ。乗らない手はない。


「ほれ、新人が挨拶してんだからお前らも最低限の挨拶はしとけ」


 ガルドさんがそう促すと男の方は不機嫌そうに、


「・・・俺はロイ、ギガスっつうクランのリーダーだ。そこの女狐はよくトラブルを起こす。気をつけろ新人」


 対して女の方は事務的に、


「私はシエル・セレスティアよ。クラン、ネフィリムのリーダーです。そこの野獣は野蛮で気分屋だから気をつけなさい」


 その挨拶に反応した男・・・ロイは、


「はっ!新人にいきなり家名を告げるとか・・・そんなに偉ぶりたいのかね。浅ましい女」

「あら、自己紹介は大事よ?ロイなんて名前、そこら中に一杯いるのだから」

「・・・喧嘩売ってんのかテメェ」

「やだやだ、これだから野獣は・・・何でも脅しや暴力で解決できると思っているのね」


 あっという間に剣呑な雰囲気になる。俺はガルドさんに目を向けると、ガルドさんは深い溜息を付きながら、


「お前ら、相変わらずだな・・・それくらいにしとけ、話が進まん」

「チッ!」

「・・・」

「すまんなキョウ・・・この通り我の強い連中でな」


 ガルドさんが俺にそう言ってくる。その言に対し2人は、


「何言ってんだガルドのおっさん。リーダーなんてやってる以上、新人に舐められるようじゃメンバーに示しがつかねぇだろうが。だから俺が新人を見極めようとしてたのにこの女狐が」

「そうです。この男に新人の見極めなんて出来るわけがありません。なので、私がやろうとしたのですがコイツが」

「あぁっ!?」

「なによ?」

「・・・いや、本当にすまんキョウ」


 ガルドさんが軽く頭に手を当てて深く深く溜息を付く。苦労してんだな。まぁでもなるほど・・・


「それでロイさんシエルさん、僕は合格ですか?」


 俺はこの会議室に入ってからというもの、様々なタイミングでこの2人から殺気やらなんやらを向けられていた。俺の後ろに控えてるミズキがその都度反応を示していたので冷や冷やしていたが、どうにか堪えてくれたらしい。その巻き添えを食ってしまったガルドさんのクランメンバーはその・・・スイマセン。

 俺からの質問に2人は、


「そうだな。ここまでキレイに俺からの殺気を受け流してくれたんだ。ただの新人じゃないってのは良くわかったつもりだ。歓迎するぜ新人・・・いや、キキョウだったか」

「そうね。周りへの警戒も怠っていないし何より一緒に来たその子へ害意を向けた時、さり気なく遮るように移動したのがとても良かったわ。よろしくねキキョウさん」


 どうやら先輩方からの洗礼は無事通過できたようだ。


「こちらこそよろしくお願いします。呼び辛くなければキョウと呼んでください」

「おう。後ろの嬢ちゃんも悪かったな。お前さんの所のリーダーを試すような事しちまって」

「分かったわ。ゴメンね?悪気は無かったとはいえ、不快な思いをさせてしまって。謝るわ」

「・・・いえ。私はその意図に気づけず、危うく仕掛ける所でした。あの時キョウが遮らなかったら、動いていたかと」


 ミズキは戸惑いながらもそう答える・・・あっぶねー、一歩間違えてたら斬りかかっていたって事か。


 シエルさんは先ほどまで見せていた印象とはまるで違い、今は手を合わせながらミズキやガルドさんのクランメンバーに平謝りしている。本当にゴメンネーって感じで。何というか、出来る秘書っぽい女子大生から、年下に世話を焼くのが大好きなお隣のお姉さんに早変わりである。すげぇな。


 一方、ロイさんの方も殺気に巻き込んでしまっていたガルドさんのクランメンバーにキッチリと謝っていた。勿論ミズキに対してもちゃんと頭を下げていた。何というか、以外だ。言動は荒っぽい所のある人だけど、ちゃんと気配りの出来る頼れる兄貴って感じだ。


「さて、いい加減話を進めるぞ。こいつ等から事情を聴いて、さぁ行くかって所でバンク側から待ったが掛かったわけなんだが、キョウ?何がどうなった」


 ガルドさんが仕切って話を進めてくれるようだ。俺は4人を退避させた後の事を大まかに説明する。


「・・・なるほど。で、その黒いモンスターの亡骸はどうした?」


 一通り説明を聞いたガルドさんがそう聞いて来る。

 

「ありますよ。今バックパックから・・・あっと、エリスさん。この場に出してもいいですか?」


 俺は会議室入り口付近で待機してるゴーレムさん、エリスさんに許可を求める。


「どうぞ。後始末はこちらでしますので、お気になさらずに」


 との事だ。俺はバックパックから黒いモンスターの亡骸を取り出し、床へと置いた。


「こいつはぁ・・・見た事が無いな。ここ最近で現れた強力な個体はどれも見覚えのある奴ばかりだったが、こいつは違う」


 ガルドさんが神妙な面持ちでそう呟く。後ろに控えているクランメンバーの方々も恐々とした面持ちで亡骸を見やっている。


「ガルドのおっさん、こいつはもう未開拓エリアから来たとしか・・・」

「そんなの見ればわかるでしょ、私達の誰も見た事が無いんだから」

「・・・テメェは一々俺に噛み付かないと気が済まねぇのか?」


 またロイさんとシエルさんが睨み合いを始めた。この人達、実は仲がいいんじゃないか?息をするように喧嘩を始めるんだけど。

 ガルドさんが頭痛を堪える様な表情に変わっていく。もう面倒になったのか、無視を決め込んで自身の考察を進めていく。


「問題はなぜこいつがゲート付近まで来たのか・・・だ。縄張り争いに負けたから?それともただの気まぐれか?何はともあれ、ここ数年無かったイレギュラーが最近じゃ大量発生だ。原因がハッキリするまで実力の無い連中は遺跡内に入るなと言いたい所だが・・・」


 ガルドさんがそこまで言った所で、ロイさんが引き継ぐように


「そりゃあ無理だな。探索者って連中はどいつもこいつも好奇心の塊みてえな奴ばっかな上、一攫千金という響きに弱い。全員が全員そうってわけじゃないだろうが最近流れてる噂が真実味を帯びてきたって事になれば、稼ぎ時だっつって喜び勇んで探索するんじゃねぇかな」


 その言いように反論したそうなシエルさんだったが、苦虫を噛み潰したような表情で


「実力に見合わない探索は身を亡ぼすって事がどうして理解できないのかしら。得られる物が大きいとはいえ、命を粗末にする連中が多すぎるわ」


 そんなシエルさんの言動を否定するような感じでロイさんが


「探索中に未知と遭遇し結果として命を落とす・・・最高なのは勿論生還する事だが、最低でも己の好奇心は満たした上で死ねるんだ・・・探索者冥利に尽きるじゃねぇか」


 ロイさんのその自論に対してシエルさんは怒りを露わにして


「馬鹿言わないで!死んだら元もこうもないのよ!少しは遺される人達の事を考えたらどうなの!」


 そんなシエルさんの主張にロイさんは努めて冷静に


「そんなの、覚悟の上で探索してるに決まってんだろ?何ヌルイ事言ってやがるんだ。死にたくない奴はそもそも探索なんてしなきゃいいだろ?」

「あぁもう!どうして探索者って連中はこうも自分勝手なのよ!」


 ・・・なるほど、この2人がどうしていがみ合っているのか分かった気がする。要するに主張の食い違いという奴だ。お互いに譲れないものがあるのだろう。それだけじゃないだろうが。


「まぁ一応バンクを通して注意喚起はする。その上で遺跡の探索を行う連中は、もはや自己責任というやつだ」


 ガルドさんがそう締めくくる。一通りの説明も済んだ事だし黒いモンスターの亡骸をバックパックにしまおうとする。するとそこで、


「おぉ・・・これが件のモンスターの亡骸であるか。どれ、儂にも見せよ」


 なんか、如何にも面倒臭そうな身なりの良いおっさんが会議室に入ってきた。

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