第32話:帰還しました。
ゲート前まで戻ってきた俺達はまず、遺跡側出入り口の監視を行っているゴーレムさんに事情を話した。
「報告は受けているわ。丁度今、緊急クエストが張り出されて討伐隊が組まれているはずよ。こちらは暫く警戒を強めておくから、貴方達は報告を済ませてきなさいな」
「はい、ありがとうございます」
「いいのいいの、そんなかしこまらなくて。これが私達のお仕事なんだから、ね?それよりも、お姫様抱っこされてるその子を早く落ち着ける場所に連れてってあげなさい」
あぁ、見た目とのギャップが凄いけど本当に良いゴーレムさんだなぁ・・・俺達は各々で挨拶を済ませた後、ゲートを潜って遺跡都市へと帰還した。
帰還した俺達は予定通り報告する組と帰宅する組へと別れる。帰宅する面々にカシアを預け後を託し、俺とミズキは早速カウンターへと赴きエリスさんにクエスト完了の旨と遺跡内で起こった出来事の報告を行った。
「まずはクエストお疲れさまでした。バックパックの中を拝見してもよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
「でわ、失礼致します・・・はい、納品物が規定数ある事を確認しました。残りの採取物はこちらで買い取り致しますか?」
「えっと、一部持ち帰りたい物が幾つかあるんですがバックパックの貸し出しとかって出来ませんか?」
「申し訳ありません。バックパックの外部への持ち出しは禁止されております」
ですよね。何かいい方法が無いものか・・・俺が頭を悩ませているとエリスさんが
「バンク側でお客様が使用したバックパックを預かる事は可能です。1日までは無料でお預かりし、それ以降は1日経つ毎に銀判1枚手数料として頂きます」
なるほど。その間にどうにかして運び出し返却せよと。仕方ない、何処かで普通のバックパックを調達してくるか。
「分かりました。暖炉石と冷蔵石を3個ずつ、それ以外の鉱石は各種1個ずつ残して売却でお願いします。ビッグホーンラビットは解体して得られた物を見てから考えます。それと問題の黒いモンスターは保留で」
「かしこまりました。納品クエストの報酬と買い取る鉱石の代金を合わせて、銀判3枚となります」
クエスト達成報酬が銀判2枚、残った鉱石を買い取ってもらった分が銀判1枚になる。
そこらの出店で食える物が大体銅判1~3枚、飲食店で銅判4枚辺りから。最低品質のポーションが銀判1枚程だったはずだ。武器・防具屋は未確認で宿屋は存在すらしていない。
なぜ宿屋が無いかというと、外部から訪れる連中がほとんどいない為。基本この遺跡都市内に住居があり住んでいるからだ。一応、バンク内に素泊まり可能なスペースが格安で提供されているので最悪ここを使用すれば何とかなる。その価格は銅判5枚。大衆浴場とトイレ完備。あれ?十分じゃないですかね?
尚、大衆浴場は遺跡都市の住人の多くが使用しているそうな。浴場のみの使用でも価格は銅判3枚と良心的。大きなクランなら自前で浴場を持っている所もあるらしい。まぁ、基本日帰りな俺達は無縁だろう。我が家には温泉あるしね!
つまりあれだ、採取クエだけでも十分すぎる報酬じゃなかろうか。少なくとも餓える心配はなさそう。俺はそんな事を考えながら報酬を受け取った。
「でわ、次に遺跡内で起こったイレギュラーの件ですが、先行してこちらへとお戻りになったPTから事情を聞き緊急クエストを発令致しましたが、件のモンスターは討伐したとの事ですので一時的に停止致しました。集まった方々へ説明を行いたいので、バンク2階にございます会議室にご足労願えますでしょうか」
「わかりました」
俺は再度バックパックを受け取り2階にあるという会議室へと向かう。エリスさんの案内で会議室に着いた俺達は、
「兄ちゃん達!よかった・・・無事だったか!」
あの黒いモンスターから退避させた面々がこちらへと駆け寄ってきた。腕を食われたリーダーさんは治療中なのかこの場には居ないようだ。
「・・・残りの3人はどうしたんだ?」
3人の内男性の探索者さんが俺の後ろを確認しつつそう聞いて来る。途端に残りのメンバーも気まずそうな顔つきになってしまったので俺は慌てて無事である事を説明する。
「一人が戦闘で結構消耗したので、残りの者と一緒に先に帰還させました。大丈夫です、誰も欠けちゃいませんよ」
「そうなんだ・・・良かったー」
「私達を逃がす為に犠牲になったわけじゃないんだね」
「すまなかった。本当に助かった。リーダーの代わりにお礼を言わせてくれ」
3人はそう言い、俺達に頭を下げてくる。
「いえ、俺達は出来る事をしたまでです。そちらもリーダーの方の治療は間に合ったんですよね?」
「あぁ、欠損してしまった腕はもう戻らないだろうが、命に別状はないよ」
「そうですか、助かって良かった」
俺はそう笑い、3人と無事を確認しあった。特に女の探索者2人からは何度も頭を下げられた。リーダーが死なずに済んだのは俺達のお陰だと。と、そんな俺達に水を差す形で
「よぉ、いい雰囲気な所悪いんだけどよ、早い所どうなったのか説明しちゃくれんか?」
一人の男がそう言って、こちらへと歩み寄ってくる。その表情は何処か不敵であると同時にこちらを見下しているようだ。金髪で獅子を思わせる風貌をしており、引き締まった肉体は己が強者である事を隠す気なんてありませんと言いたげだ。ピンっと立っている耳も腰付近から伸びている尻尾もライオンのソレなんだが、一点だけ獅子とは縁の無さそうなモノが額から2本生えている。さしずめ鬼の角って感じだろうか。見せびらかすように頭を抱えている手には、赤よりも紅い色の指輪が見て取れた。位の一覧表では確か真紅色は戦鬼って奴だったはずだ。上から3番目か4番目の奴。
そこに同意を示すような形で一人の女性も近づきながらこう言ってくる。
「そうね。そこの野獣と意見が一致するのは甚だ不本意だけれど、私達も暇じゃないの。早急に報告をお願いできるかしら」
こちらもこちらで結構な雰囲気を纏っていて、つい最近美少女を卒業しましたって感じの女性だ。こっちを見下しているような雰囲気は男の方と変わらずだが、気配を抑えているあたり向こうさんよりは大人な気もする。透き通った湖を思わせる蒼のストレートヘアを腰辺りまで伸ばしており、その整った顔立ちは10人中9人は美しいと答えるはずだ。残りの1人は側頭部付近から弧を描く形で額の中心に向かって伸びている2本の角の異様さに目を逸らしたりするかもしれない。腰に当てられた手にはこちらも真紅色の指輪が輝いている。眼鏡をかければ秘書になりたての女子大生って感じ。
で、最後の一人が
「おう、お前ら。うちのクランメンバー達が委縮しちまってるじゃねぇか。少しは自重というものを覚えたらどうなんだ」
そう言って頭をガシガシと掻きながらこちらへと近づいて来たのは、この前絡んできた連中を追い払ってくれたガルドさんだった。




