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第28話:無事採掘が出来ました。

※2019/07/24 一部文章を修正。

 採掘現場である洞窟は思いのほか広かった。ランスと盾を背負っているアルでも問題なく入れる広さだ。そんなに奥深くは無く、ある程度進んだ所で広場がありそこが終着点となった。

 採掘道具一式の中に照明器具があった為、バックパックの中からそれを取り出し広場を照らす。灯りを得た広場は中々幻想的な風景を醸し出した。辺り一帯に存在する剥き出しの鉱物に光が当たり、各々でその存在感を示している。


「色々と調べたい事はあるけど、まずは目的の鉱石を見つけてしまおう。アル、俺が掘ってる間邪魔が入らないようにお願いね」

「は~い、任された!」


 そう言ってアルは盾とランスを構えて辺りの警戒に入る。ミズキの影響で離れていたモンスター達が帰ってくるかも分からない。準備しておくに越したことはないだろう。まぁ、なるべく無意味な殺生はしたくないが。


 確か暖炉石は赤色の鉱石、青色の鉱石が冷蔵石という話だったな。とりあえず掘って出てくるそれっぽい鉱石はバックパックに放り込んでいこう。それ以外にも気になった鉱石は採取の方向で。

 考えがまとまった所で採掘作業に入る。俺は取り出したスコップを構え岩壁を崩していく・・・あれだけ色んな技術を持ってるゴーレムさん方なのに、何故に採掘に使うのはスコップなのか。ドリルとか在りそうなもんなのに。解せん。


 多少はバックパックの容量を残しておきつつ入れれるだけ詰め込んでいく。粗方採掘作業が終わった所で、


「キョウ、何か来た」


 何か来たらしい。元々ここを寝床にしていたモンスターとかが戻ってきたのかもしれない。

 先ほどのビッグホーンラビットのように襲い掛かってきたら返り討ちにさせてもらうが、そうでないのなら戦闘は避けたいな。


「アル、気配消すの止めて前方に殺気を飛ばしてみて」

「らじゃー」


 アルが出口側の方を向き、殺気を向ける。すると洞窟の入り口側からしていた複数の気配が慌てて離れていく。

 これで今しばらくは近寄ってこないだろう。


「アル、採掘終わったわ。さっさと出ていくとしよう」

「キョウは優しいねぇ」


 優しいね・・・必要とあらば容赦なく狩るっていうのに、それでも優しいと言えんのかな。俺が内心そんな事を考えているとアルは、


「余計な戦闘避けてる辺り十分優しいと思うな。人によってはモンスターってだけで手あたり次第に狩るのが居るから・・・経験を積む為に」

「それがソイツにとって必要な事なら俺は特に気にしないぞ。狩った獲物をちゃんと再利用していれば尚よしだ」

「・・・私はそういう風に割り切れないんだよね。出来る事なら無益な殺生はしたくない。でも、経験を積んで少しでも強くなりたいって気持ちも分からないでもない・・・」


 これはアレか。人生相談って奴。たかが15年と少ししか生きてない若輩者に務まるだろうか。だがまずは、


「とりあえず外に出ようか。話はそれからだ」

「わ、わかった」


 採掘ポイントの洞窟から出る。眩しいぜ。見晴らしの良い所まで移動しバックパックを下ろしつつ座り込む。


「さて、少し休憩するか。で、何が聞きたいんだ?」


 俺がそう切り出すと若干聞きづらそうな感じでアルは聞いてくる。


「・・・キョウはモンスターを殺す事に抵抗を覚えない?」

「モンスターというより、生物全般を殺める事に対して抵抗はある。けど、それが自分にとって必要な事なのなら躊躇わないようにしてる。これはさっきも言った通りだ。で、アルが気にしてるのはモンスターを『殺す』事で強くなるっていう遺跡の仕組みか?」

「うん。人って鍛える事で強くなれるじゃん。それをモンスターを殺す事で手軽に強さを得られるっていうのが・・・ね。それなりのリスクを抱えてるのは分かるんだけど」

「グロース・・・自らの潜在能力を引き出せるって奴か。そこまで魅力的に感じるものなんだろうか・・・いや、強さに惹かれる者なら喉から手が出る程欲しいかも」


 グロースについて考えを巡らす・・・自ら鍛えて会得した力だからこそ、その限界がわかるし使いこなす事ができる。正直俺はグロースで得られる力ってのに然程興味が無い。扱いきれる気がしないからだ。更新するたびに変動する力とか、寧ろ自分の感覚が狂いそうで怖い。もし、この力を使うのなら必要経験値って奴を貯めるだけ貯めて一気に振り切る。そして、微調整を施して2度とその値を変更しない。こうすれば後は慣れるだけだ。うん、そうしよう!とは言え、これらは全て憶測にすぎない。実際に経験してみてそれからかな・・・後思ったんだが、


「・・・グロースってさ、別にモンスターを『殺す』必要は無いんじゃないか?」

「えっそうなの?」


 アルが思わずという形で聞き返してくる。


「うんまぁ確証はないから、大丈夫とは言えないが・・・エリスさんから説明を聞いていた時、別にモンスターを殺せって一言も言ってなかったよな。あくまで遺跡内で得た経験と情報って。よって、殺すではなく戦って倒すだけでも経験って奴は貯まるんじゃないかと」


 実証実験をしてみないと何とも言えないが、殺して強さを得るって所に抵抗を感じるのならコレで回避できるかもしれん。アルは希望が見えてきたという感じで俺の説明に耳を傾けている。


「アルは丁度まだ何も殺しちゃいないし、倒してもいない。遺跡から出る前に何でもいいから戦って殺さずに倒してみるんだ。それでハッキリする」

「わかった!殺さないで済むのならそれがいい!」


 いい顔になってよかった。が、水を差すようで悪いが言っておく事がある。


「まだ安心は出来ないぞ?後、相手がこちらを殺す気で来るようなら・・・殺す事に躊躇うんじゃないぞ。一瞬の躊躇いが自分だけじゃなく周りも危険に晒しかねないからな。この事は肝に銘じておいてくれ」


 俺は真剣な表情でそう伝える。これは経験から言える事なのでハッキリと言える。アルもその点はちゃんと弁えているのか、


「大丈夫。明確に殺意を向けてくる相手なら私も躊躇はしないよ」


 と、真剣な表情で返してくれた。うん、もう大丈夫そうだ。

 これで相談終了かな・・・あぁそうだ、この際だから俺も聞きたい事を聞いてみよう。 


「話は変わるが、モンスターって外部に生息してる獣連中とそんな大差はないように感じるんだよな。精々見た目がちょっと凶悪で繁殖力が凄まじいというだけで。そもそも、モンスターと野生動物の違いってなんだろうな?」

「今キョウが言ったように、野生の獣では考えられないくらい繁殖力が強い所かな。あと成長速度が異常な事。生まれて間もないモンスターがその日の内に捕食を始め、次の日には子供を作り始めるの」


 おおぅ、それは凄いな・・・まさにモンスターと言える。あれ?でもそれだと、


「それって、定期的に駆除していかないとマズくない?」

「そうなんだけど既に他の探索者達が狩りまくっているから、最近は異常繁殖してる話は聞かないかな」

「なるほど、バランスは保っているわけね」


 まぁ、それを監視しているのがゲート付近に居るゴーレムさんって事か。


「寧ろ、最近問題になっているのは未開拓エリアから流れてくる強いモンスター」


 今度はアルが真剣な表情で俺に語り掛けてくる。勿論真面目に聞きますとも。


「未開拓エリアから流れてくるモンスターって、必ずと言っていい程強い個体なの」


 ふむ・・・個体ね。


「異常繁殖で大量発生して溢れてくるってわけじゃないんだな」


 そう俺が聞いて来るのを予期していたようにアルは、


「そう。群れじゃないの。強い個体。しかも最近はその強い個体が流れてくる頻度が上がっているって話なの」


 ははぁ、そいつは確かに問題だな。


「原因は分かっているのか?」

「ううん、今の所は何も。ただ・・・」


 アルの表情が曇る。まぁ、内容が内容だ。いい話であるわけがない。俺が続きを促すとアルは、


「あくまで噂レベルの事なんだけど、未開拓エリアでの縄張り争いが激化して、それに負けた個体がこっち側に流れてきてるんじゃないかって」


 有りそうな話ではある。まだ続きがあるようで、アルは話を続ける。


「なんでも異常に強い個体が生まれて、そいつが勢力図を書き換えているんじゃないかって話」

「その噂が生まれた根拠は何なんだ?」


 そんな噂が出てきたからには、必ず元になった話があるはずだ。


「未開拓エリアギリギリの所を探索してたクランが、今まで聞いた事もない鳴声を聞いたって話なの。しかもそれを聞いたってクランが複数」


 複数となると信憑性は高いか。未到達エリアでの出来事だから確証は得られない。故に噂止まりなのか。


「現状、ゲート付近まで来る事は無いけどイレギュラーな事態が起こりやすくなっているって事は確かなの。原因が判明するまで未開拓エリア付近側には近寄らない方がいいかも」


 そうだな。注意しておいた方が良さそうだ。事が事なだけに俺は即座に行動へと移す。


「今の内容、別行動してる3人組にも教えておこう。何かあってからじゃ遅いからな」


 そう言って、念話を皆に繋ごうとした時だった。何やら獣の雄たけびのようなものが聞こえて来ると同時に地面が軽く揺れるのを感じた。それと同時に土埃が遠くで舞い上がるのが見える。凄く嫌な予感がする。


「なぁアル・・・この近くまでは来ないって話だったよな?」


 俺がアルにそう話を振ると、アルも同じ事を考えていたらしく凄く嫌そうな顔で、


「えぇ~・・・早速イレギュラー?勘弁してよ」


 と、アルと一緒にゲンナリしながらそそくさと撤収準備を始める。それとほぼ同時にマグルから念話が送られてきて、


(あるじ!何かスッゴイのが居ました!)


 なんて、ちょっと興奮気味なマグルの声が聞こえてきたのだった

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