第22話:遺跡に入る為の手続きを行いました。
ちょっとした説明話。
かったるい内容ばかりで申し訳ない。
「ようこそ、遺跡都市へ」
「外部からの来訪者はとても久しぶりです。歓迎致します」
遺跡都市へと続く長い橋の先、渡り切った城門とも言えるその前で、門番なのであろうゴーレムさん達からとてもフレンドリーな対応を受けた。
簡単なチェックを受け、特に問題もなく中へと通してもらえた。その瞬間、結構な数の人達からこちらを伺うような気配がしたが、すぐに何事も無かったかのように視線が外されていく。
俺らもそんな事は気にせずに、田舎者丸出しな感じで辺りを見回す。思っていたよりも人が多い。そして、人種も多い。
狼人間みたいな獣寄りの人もいれば、カシア達のような人にケモミミや尻尾を装備したっぽい人もいる。馬耳と尻尾をなびかせたキレイな女性や、商売に勤しんでいる豚さんベースの男性等々多種多様だ。
そんな見るものすべてが珍しい俺らが発する最初の言葉は、
「「「人が一杯だ!」」」
「うんまぁ、初めて来たんだからその反応は当然だよね」
一人はしゃいでいないのは、何度も来ているであろうアルのみだ。勝手にどっか行ってしまいそうな雰囲気のカシアを即座に確保している辺り、とても冷静だ。
「は~い、それじゃあさっさと用事を済ませちゃいましょう」
そう言って、アルが道案内をしてくれる。こういう時、詳しい人が居ると本当に助かるなぁ。
特に何事もなくバンクへと到着。さてさて、早速登録を済ませてしまいましょうかね。
「ようこそ、バンクへ。本日はどういったご用件でしょうか」
受付のゴーレムさんから丁寧な挨拶をされる。門番の時も思ったが何というか、機械じみていなくて普通の人と話しているのと大差ないのだ。すげぇなゴーレム。
「えっと、俺達初めてなんですけど、この都市にある遺跡に入るための許可を頂きに来ました」
「かしこまりました。登録でございますね。少々お待ちください」
そう言って受付のゴーレムさんは、後ろの棚から石板みたいなものを取り出しこちらへと持ってくる。
「クランの代表の方がいらっしゃればこちらの石板に手を当ててください。居ないのであれば、個別に対応をさせて頂きます」
ほうほう、クランの代表・・・つまり刻印が現れた俺が触ればいいって事かな。一応確認はしてみるべきか。
「この石板に代表の者が触れれば、他のメンバーは手続き不要という事でよろしいですか?」
「はい、左様でございます」
「分かりました」
おぉ、妙に先進的だ。すげぇぞバンク。俺が石板に手を当てると、石板が淡く発光しだす。暫くすると発光が収まっていく。
「ありがとうございます。もう手を当てなくても大丈夫ですよ」
そう言われたので手をどかすと、俺が触れた石板をゴーレムさんは取り出した所とは別の棚へと収めていく。すると、目の前のカウンターに人数分の指輪みたいなものが現れた。こちらへと戻ってきたゴーレムさんが、
「今現れた指輪を、各自身に着けて頂いてもよろしいでしょうか」
促されるままに、俺達は指輪を身に着けていく。指輪が淡く光って白くなった。
「今、その指輪は皆様を所有者と認識致しました。以後、遺跡に入る時はその指輪を身に着けて頂く事になります。指ではなく、紐を通して首に下げて頂いても結構です。この指輪は先ほどクランの代表者が触れた石板と連動しており随時情報の更新を行っています。遺跡内で得た経験及び情報は指輪を通して石板へと蓄積されていきます。一定量蓄積する事でバンク内に存在する昇華の間にて自身の潜在能力を引き出す事が可能になります。石板に蓄積される経験は個々人で独立していますので、特定の人物による経験蓄積値を他者に譲渡する事は出来ません。尚、指輪を紛失或いは損傷してしまった場合、受付にて再生する事は可能ですが別途手数料が発生致しますのでご注意願います。遺跡内での行動は全て自己責任になりますのでご了承ください。もし遺跡内で死亡してしまった場合、石板からクラン代表者へと通知が送られます。代表者が亡くなられた場合は、メンバー全員に通知が送られます・・・ここまでの内容で何か質問がありますでしょうか?」
う、うん?いきなりこの情報量はちょっと・・・みんな首を傾げている。するとゴーレムさんは一枚の紙を取り出し、こちらへと差し出してくる。おぉ、随分と上質な紙だ。
「情報量が多いので、こちらをお持ちください。先ほどの内容と詳細が記してありますので後程確認して頂けると幸いです。分からない箇所、疑問がありましたらこちらで質問を受け付けております」
大変できるゴーレムさんである。クランに1台欲しいです。俺が紙を受け取ると、
「次は指輪の色についてご説明させて頂きます。今しばらくお付き合い願います・・・指輪を身に着け遺跡内で経験を積んでいくと指輪の色が変わっていきます。白色は見習いの色、次に緑になり駆け出しへ、青に変化して初級者、赤で中級者、灰色で上級者・・・と指輪の色でその方の位が分かるようになっております。探索をしている皆様は必ず何処かに指輪を身に着けていますので、一つの判断基準としてお役立てください・・・こちらも各種類の色がどの位であるのか分かりやすくする為、受付の横にて一覧表を掲載しておりますのでお役立てください・・・説明は以上となります」
・・・ちょっと覚えるのが大変だが徐々に慣らしていこう。とりあえず今の内容で気になった事はだ、
「この昇華の間にて自身の潜在能力を引き出せるというのを詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「はい。昇華の間にて潜在能力を引き出す事をグロースと我々は呼んでいます。成長という意味です。遺跡内での探索で蓄積された経験を使用し、自身の能力向上を図れます。向上を図る事が出来るのは、力・素早さ・体力・器用さ・知力の5つとされますが、稀にこの5つ以外にも向上を図れる方がいらっしゃいます。現在判明しているものは、変換効率・貯蓄・集中力の3つとなります。変換効率と貯蓄はフォースの変換効率と貯蓄量の事を表しています。尚、新たな能力が見つかったとしても申告する義務は存在しません。これらの能力は自己鍛錬でも向上するものですが、グロースで向上される能力とは別枠となります。つまり鍛錬は怠らず日々精進を推奨致します・・・以上となります」
なるほど、ちょっとしたドーピング・・・もとい強化を施せるという事か。となると、これも聞いておかないと危ないな。
「昇華の間で向上を図った能力は、一度経験を割り振ると元には戻せないのだろうか?」
「経験を使用して向上した能力は、昇華の間にて任意でリセットする事が可能です。但し、極端な割り振りを行っていた場合、肉体に与える影響が大きいので注意が必要です・・・以上となります」
おぉ、新設設計ですな。これはありがたい。他にも聞きたい事があるな。
「向上した能力は遺跡内でしか発揮されないのでしょうか?」
「遺跡外でも適応されます」
「向上する能力に限界はありますか?」
「現段階では無いと言わせて頂きます。但し、身に余る能力向上は己の身を滅ぼしますのでご注意願います」
つまり、素早さに振りまくると文字通り速さに振り回されてしまうという事かな。面白い事が出来る反面、一歩間違えれば大変な事になるなこりゃ。
ん~・・・現状はこんな所かな。
「他に質問はありますでしょうか?」
「俺はもうありません」
「「「・・・」」」
うん、他の連中はきっと頭から煙が上がっているに違いない。後で俺から再度説明しておこう。
「でわ、最後にクランの名前を登録致しますので、こちらの用紙に記入をお願い致します。クランの名前は即座に決める必要はありませんが用紙未提出の場合、代表者の名前が仮のクラン名となりますのでご了承願います。尚、文字が書けない場合はこちらで代筆致しますので口頭でお伝えください」
クランの名前か。なんも考えてなかったな・・・。というか、文字は読めるのに書けん!これは書き写して練習しなくてわ。
「すみません、後日提出します」
「かしこまりました。以上で登録は終了となります・・・このまま直に遺跡へと参りますか?」
「いえ、日を改めて来ます」
「またのご利用をお待ちしております」
俺は軽く会釈して、フリーズしてしまっている面々を連れ出す。
あ~終わったー!軽く町の中でも観光してから帰るとするか~。
「ほらお前たち、いつまで固まってるかね?後で分かった範囲は説明してあげるから、観光に行くぞー」
「うぅ、あんまり頭に入らなかった」
「大丈夫だよアル姉。私なんてさっぱりだったもん」
「姉さん、そこはもうちょっと頑張ろうよ・・・」
アルやカシア、マグルのボヤキが聞こえるがまぁアレは仕方ない。詳細が書かれた紙はさっき受け取っている。帰った後、これを見ながら皆で理解を深めるとしよう。




