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第21話:遺跡都市が見えました。

「ほら、もうちょっとしたら見渡せる場所に出るよー」


 あの後、朝食を済ませた俺たちはアルの案内で遺跡都市なる場所へと向かった。

 現在はその道中。既に昼も過ぎ、日が傾き始める頃になってようやくアルが遺跡都市を見渡せるというポイントに到着した。


「・・・お~絶景だなぁ」

「でしょー。ここからの景色は私も好きー」


 見渡せるポイントというのはちょっとした切り立った崖の上であった。結構な高さがある為、広大な景観が一望できる。

 その風景の奥の方に、何やら山と一体化してしまったような神殿が見え、そこから扇状に広がっている家々が住人の存在を教えてくれている。

 扇状の外縁部はちょっとした城壁になっており、そこから先は広大な湖が広がっている。山が貯め込んだ雨水の終着点であり、川の行き付く先となっている。その湖の中心に細く長い道のようなものが見えるが、恐らくは橋であろう。あそこから都市の中へと入れるのだろう。


 しばしその絶景を堪能し、それから一緒に来ているクランメンバーに話しかける。


「カシア、マグル?ここまでの道のりは大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ちゃんと覚えたよ」

「バッチリ」


 よしよし、これで逸れたとしても各々で我が家に帰りつく事は出来るっと。ここまでの道中でかかった時間は約4時間。とはいえ、あくまで歩いて掛かった時間な為、急ぎで行き来する場合は恐らく1時間と掛からない。

 今の俺たちは体力も大概だが身体能力もちょっとおかしな事になっている。何度も遺跡都市に来ているアルから『変人集団』のお墨付きを貰っているから間違い無い。フフフ、アルさんや。あなたもその変人集団の一員なのですよ。


「おし、じゃあさっさと遺跡都市に行って『登録』を済ませちゃおう。多分、今日潜る事は出来ないだろうから本格的に動き出すのは明日からだなぁ」


 早速行こうとする俺をアルが呼び止めてきて、


「ちょ~と待った!キョウ、くれぐれも力加減は気を付けてね?多分、キョウが思っている以上にこちら側の人達は頑丈じゃないから!」

「安心なされ。今まで欠かさず鍛えてたのもそうだけど、それと同時にマナのコントロールも常日頃から行ってきた。今なら纏った状態でスライムさんを優しく掴む事だって可能だ」


 俺はドヤ顔でそう返してあげたが、それでもアルは不安らしく、


「キョウって肝心な所でやらかすからなぁ・・・何というか間が悪いというか」

「そこは俺も自覚はあるが、あればっかりはなぁ・・・その時はゴメンなさい」

「あと、カシアとマグルもだよ?喧嘩売られても、安易に買っちゃダメだからね」


 早く行きたそうにしているカシアとその手綱を握ってくれているマグルにも注意を促す。


「わかったよアル姉。先に手を出してきた時だけ反撃するようにする」

「姉さん。それじゃ多分相手が死んじゃう。反撃してもいいけど、当てちゃダメだよ。寸止めで。それで相手は吹っ飛ぶから」

「うーん、そうかぁ・・・了解マグル」


 カシアは加減がまだ上手くできないからなぁ。マグルの助言は適格と言える。


 ここに来るまでの間、こちら側の住人と俺達の間でどれほど力の差があるのか、みっちりとアルに語ってもらった。

 曰くアリとドラゴン位の差、比べる事がそもそも無意味、指先一つで相手は消し飛ぶ等々。聞いてるこっちが逆に「よくそんなので自然の驚異から身を守れたな」と心配になってしまう程だ。

 どうも俺達が住んでる場所は、遺跡都市の人達が言う所の立ち入り禁止区域の一つである『剣竜の森』らしく、そこへ足を踏み入れたものは2度と帰ってくる事はないと言われているのだそうだ。

 例外がアル達森精種で、その名の通り剣竜の縄張りである森を行き来する事が出来るとの事。なので、定期的にアルや他の森精種の方々が遺跡都市まで赴き交易を行っているそうだ。

 とはいえ、その剣竜の森で抜きんでて強いのはそこの主である剣竜と一部の獣達くらいだ。その事をアルに聞いてみると、遺跡都市の周りに出てくる獣と遺跡内に出てくるモンスターと呼ばれている存在は奥に生息してる存在を除いてそれほど強くないらしい。そもそも、遺跡都市の周りの獣達はこちらから手を出さなければ襲ってこないらしく、遺跡内に入れない子供達が狩りを覚える為の場となっているそうな。


「まぁ、なんだ・・・全部が全部そんな非戦闘員というわけじゃないんだろう?」


 寧ろ、都市に住んでる全員が血の気が多い連中とか嫌すぎる。何処の戦闘民族だよ。

 俺がそう尋ねるとアルが、


「都市に居る約8割の人達がそんな感じかな。で、その中にいる2割程の連中がなんでか知らないけど妙なプライドみたいなのがあってね・・・やれ、遺跡内を探索する上で群れる連中は臆病者だの、武器を使う奴は己の力に自信が無いからだのって煩くてね。なんか過去に居た凄い人達の末裔だって話だけど、だからなに?って私は言いたいな。でもそんな連中に限って周りに与える影響が強いのばっかでさ・・・ほんと嫌になっちゃう」


 ・・・あ~こっちの世界にも居るんだ。所謂お貴族様ってのが。過去の栄光があたかも自身の功績だと言い張り他者を見下し己の自尊心を満たすためには手段を択ばないような、そんな人種が。

 俺が凄く嫌そうな顔をしていると、アルが更に聞きたくない情報をもたらしてくる。


「そして残念な事に、これから遺跡内に潜る為の手続き・・・みんなが言う『登録』という作業をする場所には少なからずその手の輩が居るもんです」

「うん、もう行くの止めて帰りたくなってきたなぁ・・・面倒ごとの気配がプンプンしてくるよ」

「気持ちはすっごく分かるけど、登録しないと遺跡に入れないから我慢だね。で、残りの2割が遺跡の探索者なんだけど、この人達もピンからキリまで居る感じだね」


 6割以上が一般人で2割程はクレーマー、残りは探索者で俺たちの先輩達となる。


「この都市で一般の方々って何してるんだろう?」

「主に商売や都市の維持管理かな。探索者が身に着ける装備を作る人達やケガや毒に使用するポーションの作成及び販売等々。縁の下の力持ち的存在だね。物々交換も行われてるけど、主にお金で売買する事が多いかな」


 そう言ってアルが懐から取り出して見せてくれたのが・・・金属の板・・・ん~小判にも見えなくもない物。


「種類は全部で3つ。銅判・銀判・金判。銅判10枚で銀判1枚、銀判10枚で金判1枚かな」

「それ、偽造して使おうとしたらどうなるの?」

「管理者って呼ばれてるゴーレムがすっ飛んできて、身包み剥がされて遺跡都市から永久追放されます」

「・・・偽造対策は万全であると」

「因みに管理者は遺跡都市の出入り口と遺跡内部に入れるゲート、これから私達が登録をしに行くバンクと呼ばれてる建物にいるよ」


 自分が思っていた以上に文明が発達しているみたいだ。にしては、料理とかの概念はまるでなかったりとアンバランスな面もある。

 確かにこの世界の食い物は未加工でも大変美味しいのだが・・・手間暇掛ける時間すら惜しいのだろうか・・・うーん、謎である。


「で、ですね。凄く申し訳ないんだけど、ツバキとシリカは遺跡都市の中に入ったら会話を少し控えて欲しいの」


 アルが申し訳なさそうにそうおっしゃいます。

 

「理由はなんだい?」


 ツバキが説明を求めるとアルは、


「それはですね。ツバキとシリカみたいに装飾品が自分の意志を持ってる存在って今の所お二人だけなんですよ。私が知っている限りでは。よって、そんな超レアな存在であるお二人の事を先ほどキョウとの話で出てきた2割程居るであろうウザい連中に知られるとですね・・・」

「あ、うん。絶対面倒な事になるねぇ」

「最悪、私達を奪い取ろうとするんじゃないかしら・・・暫く大人しくしてるわ」


 容易に想像が出来てしまうツバキとシリカ。俺もそう思うわ。

 大体話も一段落した所で、 


「主、あるじ!早く行こうよ」


 カシアが俺の腕を取って早く行きたいと猛アピールをしてくる。ちょっと話が長くなってしまったな・・・申し訳ない。


「おう、すまんすまん。じゃあ行くとしますか」


 遺跡都市はもうすぐそこである。

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