表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/89

第20話:大分発展しました。

 あれから1月とちょい経過致しました。いや~・・・色々と濃い日々だった。

 あ、因みに今朝男へと成りました。ん~この感覚久しぶりだわー。


「キョウちゃんがキョウに成っちゃったよ・・・うぅ、凄く悲しい」


 アルよ、そんな泣き崩れなくても・・・俺は俺だよ?ちょっと肉付きや骨格が変わって声が少々渋くなるくらいだよ。

 俺がorzの態勢で悲嘆にくれてるアルを生暖かく見ていたら、急に立ち上がってこちらに来たと思ったら肩をガシッと掴まれ、


「今すぐ女の子に成って」

「いや、無理だから」

「そこをなんとか!」


 またもや滂沱の涙を溢れさせ始め、俺の肩を掴んでガックガックと揺さぶってくるアル。

 これは俺にとって生理現象と何ら変わらないものだ。だから、どんなに揺さぶられても後1ヶ月は女の子には成らないのである。


「ど、どんなにシェイクしても俺はこのままだぞ!いい加減受け入れろ!」

「だぁってぇぇぇ~・・・」


 えぇい、この駄々っ子めが!そんなに♀の俺がいいのか!


「気持ちは分からなくもないけど、そろそろその辺にしてあげたらどうだい?」

「そうよアル。男の子なお父様にも違った魅力があるんだから、寧ろ楽しまないと勿体ないわ」


 俺の両腕に嵌っている腕輪のツバキとシリカから援護射撃が来ました。若干フレンドリーファイアされていなくもないがいいぞ、もっと言ってくれ!

 俺をシェイクしていたアルが動きを止め、


「ぐす・・・キョウの魅力?」

「そうよ。確かに女の子なお父様はそれはもう可愛かったけど、男の子に成っても本質は何も変わっていないわ。童顔なのは言わずもがな、見る人が見たら性別がどちらなのか分からないくらい」


 ・・・あれ?援護射撃は?何か包囲されつつある気がするんですが。


「・・・」


 じーっと見つめてくるアルのお目目に何やら不穏な色が見え始めてきたんですけど!


「ここまで言えば、もう分かるわね?」

「・・・なんで気づかなかったんだろう私。そうだよね、これって純粋に幅が広がっただけだもんね」

「そうね、素材を生かすも殺すも私達次第よ。幸いな事に既に確保済みなわけなのだし、後は仕立てるだけよ」

「やだ、そうと分かったら早速採寸しなきゃ!」


 メーデーメーデー!ツバキ社長に現場の改善を要求する!味方だと思われたシリカ社員は既に敵の手駒でありこちらを包囲拿捕するつもりであります。孤立無援!至急撤退の支援を!!


「キョウ、残念なお知らせがあります」


 ツバキ社長が沈痛な響きを含んだ声でそうおっしゃいます。


「・・・聞こう。聞きたくないけど」

「もう僕にはどうにもできない。許してほしい・・・こうするしかなかったんだ」


 ツバキ、お前もかぁぁぁぁっ!


「というわけで、お父様?下もとは言わないわ。とりあえずは上を脱いでくださる?」

「大丈夫大丈夫、すぐ良くなるから♪」


 全然大丈夫じゃないわ!すぐ良くなるって何がだよ!あ、止めて!無理やり脱がそうとするのはNG!

 どうしてこうなった!こうなれば徹底抗戦だ。俺自身の尊厳を守る為のジハードである!




 結果、あっけなく負けました。敗北した者は勝利した者に搾取されてしまうのだ。これが弱肉強食・・・。

 身包みを剥がされ、下はやらないって言ってたのに!それでも何とかパンツだけは死守したが、一部の絶対領域を除いて採寸されました。女物を無理やり着せられなかっただけでも・・・いや、これは考えてはいけない。気づかれたらそれこそおしまいだ!


「汚された・・・もうお婿にもお嫁にも行けない」

「何泣きながら大げさな事言ってるの・・・寧ろ、喜んで感謝するべきだわ」

「そうよ、お父様。これでお父様の男物の衣服を創れるんだから」

「まぁ創るのは僕なんだけどね」


 そうこの1ヶ月の間にこの方々は、俺との接触によりゲットした地球の知識を活用して衣服を創っていたのだ。

 最初は俺が初期装備として着ていたTシャツやジーンズ、柄パンや靴下等の再現から始まり、今ではもうジャージや運動靴やブーツ・・・挙句には浴衣やパジャマまで創ってしまう始末。

 とはいえ完全再現はされていない。あくまでそれっぽいものを創っているだけ。俺の知識はそういうものが在るという所止まりが精々だ。どうやって作るのかなんてそんな専門知識、俺は持ち合わせていない。

 なのでツバキ達は見た目だけを再現する事にしたようで、まず素材に関しては現地で手に入る繊維を片っ端からかき集めた。巨大なクモからはクモ糸を、メッチャデカいなんの繭だか分らんものからは絹糸的な物を、良く主食としてお世話になっていた鹿羊さんからは羊毛や皮を等々。

 そろったら、必要になる素材を全部ツバキに預け、というかツバキが元々入っていた棺にぶち込み、最近使えるようになった能力でまずはTシャツの再現を行った。

 結果、縫い目の存在しないTシャツモドキが出来上がったのである。試しに試着してみたけど、肌触りが違うだけで全く問題ないレベルの出来栄えでした。むしろオリジナルより完成度が高いのでは?恐るべしツバキさんである。

 後はもうイケイケな感じで、縫い目の存在しないジーンズや柄パン等が量産され今では採寸して寸法を測る事によってサイズ問題も克服されるまでに至っている。染料などはそこら辺にあった天然素材でカバー。

 因みに、縫い目が存在しない影響を受けたのかチャックやボタン等で閉められている箇所は、見た目はそれっぽく出来ていてもチャックを下げたりボタンを外したりする事ができないようだ・・・今後の課題となっている。


 つい最近まで俺は女の子だったので、既に女物の衣服や下着はそこそこに作成済み。残るは男物という事だったのだが、すったもんだの挙句アル達の採寸という毒牙に掛かってしまった訳である。でも、創ってくれるのは本当に有難い。今度何らかの形で恩返しをさせてもらおう。


「さてさて、どんなものを創ろうかねぇ・・・まずは手堅くタンクトップとかいってみる?」

「いいわね。お父様って露出が少ないから全然在りだわ」

「色はどうしようか?落ち着いた感じで蒼とかかな」


 いつの間にやらアルがツバキとシリカを装備しており、早速話に花を咲かせている。あれは暫く帰ってこないな。

 また捕まって辱められる前にとっとと退散しよう。どうせカシアやマグル達はまだ寝ている。今のうちに朝飯でも作ってしまおう。




 外に出てきた俺は早速何を作るか考える。家の連中は肉食系ばかりだからな・・・例え寝起きでも肉が受け付けないという事はまず有り得ない。とりあえず天気もいいし、外で食えるようテーブルとイスを設置してしまおう。


 この1ヶ月の間、発展したのは何も衣服類だけではない。我が家である遺跡の内外には石窯や、薪や炭を使うタイプのコンロを設置。遺跡内にある奴はきちんと煙突を設けて換気をしっかり行えるようにしてある。これで冬が来てもバッチリである。

 他にも暖炉を作ったり、衣類や調理器具その他諸々をしまい陳列する為の棚を作成したり、イスやテーブルは勿論の事、トイレ及びトイレットペーパーを作ったりとやりたい放題だ。快適な生活を営む為の努力は惜しまない。他にもまだ色々とあるぞ~。


 おっと話が逸れてしまった。とりあえず、コンロに火を入れよう。温まってくるまでの間に本日の朝食のメニューを考える・・・まずは米だな。米を炊こう。

 そう、米なのだ。在ったんだよ米!異世界であるこちら側では稲穂に実るわけじゃなく、木の実として存在しておりました。

 直径2メートルはあるんじゃないかと思われるデカい木に、これまたデカい胡桃みたいな実が生っておりましてね・・・こいつの仮果を取り除いて中にあった核果を叩き割ったら出てきたんですよ、米が!もうね、狂喜乱舞ですよ!その瞬間に立ち会った連中全員から生暖かい視線を感じたけど、気にしなかったね!

 しかも一つの実から3kgくらいの米が採れるとか、もう感無量ですよ。冬の心配とか不要っすわ。

 そして、さすが異世界産。マナのお陰なのか炊いた米は日本の米に負けず劣らずの素晴らしさでした。

 尚、米の生る木と命名しときました。


 あとは小麦と大豆が見つかれば言う事無しかな。まぁ、ここは異世界だから原料じゃなくてパンが生えてたり醤油を貯め込んでるバッタが居たり、味噌が沈殿してる味噌汁湖とかあるかもしれない。どういう形で見つかるか今後が楽しみである。


 いかん、また逸れてしまった。米を軽く研いで、シリカ作成の釜に移し水を適量入れてコンロに設置する。

 コンロの口は全部で3つ作ったので、まだまだ余裕がある。米が炊けるまでの間に色々と作ってしまおう。


 まず1品目は定番のベーコンエッグでも作ろう。猪の肉を塩漬けにし燻製にしたものを厚切りにしてコンガリと焼いていく。シリカ作の平皿に焼き上げたベーコンを移し、ベーコンから出た油をそのまま使用して目玉焼きを作っていく。因みに俺は水を入れて蒸し焼きにせず、ちょっと多めの油でカリっと焼き上げる派だ。


 2品目は汁物が欲しいな。コンソメスープのストックがまだあるから、こいつをベースにしてシンプルにオニオンスープを作るとしよう。

 あ、こっちの玉ねぎって襲い掛かってくるんだぜ?いきなり地中から飛び出てきて噛み付いてきやがるの。いや~あれには参ったわ。ビビッて全力で逃げたもん。精霊達はそんな俺を見て爆笑してる声だけ聞こえて来るし、相変わらず姿形は視えないし!まぁ、そのあと頭の花を切り落とせば無害化出来るって事を教えてくれたので助かりましたけども。そして、見た目はグロイけど味は良かった。鬼オンと命名。


 3品目は異世界産のキャベツとセロリを使った浅漬け。この2つは元の世界と特に変わりはなかった。単純に食べ易いサイズに刻んだキャベツとセロリをシリカ作のボウルに入れ、塩を塗し揉み込むだけ。ある程度浸透したら、これまたシリカ作の小皿に移して完成っと。

 本当は塩麴と塩昆布、あと生姜が在ればいい感じに漬かるんだけど、調味料類は今の所岩塩のみ。今後に期待しましょう。


 3品目出来上がった辺りで、米がいい感じに炊けた。あとはコンロから降ろして蒸らそう。


 作ったおかずをテーブルに並べ、後は汁物と炊けたご飯をよそうだけとなった辺りで匂いに釣られたのか皆が出てきた。


 さぁ、今日はアルの案内で遺跡都市と呼ばれている所へ行く予定だ。キッチリと食べてエネルギーを補給しようじゃありませんか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ