第18話:手に何やら文様みたいなものが現れました。
「刻印?なにそれ?」
また知らない単語が出てきましたぞ!普通は立て続けにイベントが発生するとゲンナリしてくるかもだけど、昨日は昨日。リフレッシュした私はメンタルリセットされて気分爽快なのだ!
よく分からないテンションになりかけたものの寝起きという事で許してほしいです。
「刻印はね、クランって呼ばれてる集合体や群れを治める者に現れる証みたいなものなの。発現する条件は特定できてないけど、キョウちゃんみたいに朝起きたら何か出たって人が居たり、狩猟や探索中に気づいたらって人が居たりで良く分かってないんだよね」
ほうほう、村長とかリーダーの証みたいなもんでしょうかね。というか、ちょっと気になってたんだけど、
「そういえば、いつの間にか私の事”ちゃん”付けになっちゃってるけど何故?」
「ん?そういえばそうだね。違和感なくそう呼んでたから私も今気づいたよ」
「キョウとの距離がまた縮まったって事だねぇ」
「お父様もアルさんもあっという間だったわね。余程相性がいいんじゃない?」
「・・・やだ、なんか恥ずかしい。不束者ですがよろしくお願いします」
「むふふ、キョウちゃんは誰にも渡さないよー」
キャッキャっと朝っぱらから姦しいような良く分からない事に。なお、子狼達はまったり2度寝へと移行中。
「すんません、話が逸れてしまったです。それで、この刻印?というのが村の長的な証という事までは分かったけど、具体的にこれが出ると何がどうなるのでしょう?」
「えーっと、私も詳しい訳じゃないから知ってる事だけになるけど・・・まず刻印保持者は他の者を自身のクランへと勧誘する事が出来るようになるの。自身のクランに参加した者とは言葉を介さずとも意思の疎通が出来るようになる。あとは・・・本当かどうか定かじゃないけど、クランに参加した者は刻印保持者から恩恵を受けるらしいよ?」
ふむ、なるほど。ちょっとしたゲームである所のパーティ申請とかかな。クランというのも確かこちらの世界で言う所の氏族という意味合いだったはずだけど、さっきの説明を聞いた感じこっち側でも概ね同じと言えそうだね。
「よし、ざっくりとだけど分かったぞー。因みにクランに参加した者は自分の意志で脱退する事は可能なのかな?」
「基本的にはそうらしいけど、それだと有能な人が他のクランに引き抜かれちゃうって事で大抵は条件を設けているって話だよ」
条件付けも可能であると。ここは慎重に決めるべき所なんだろうけど、両者が納得した上で抜けるのならばそれで良いのではないだろうか。
「あ、今の内容で思い出したけど、加入条件って勧誘対象相手に都度変えれるんだけど、その時設けた条件に後から条件追加する事は出来ないみたいだよ」
と、アルから結構大事な情報が。まぁ、そうだよねぇ。じゃないと詐欺紛いの勧誘しまくれちゃうもんなぁ。
「因みに一度脱退した者を再度加入させる事は可能なのでしょうか?」
「出来る・・・らしいけど、一度脱退した者を再度加入させるにはある程度の期間を空けないとダメだったはず。詳しい期間はちょっと分かんない」
うん、こんな所かな。という事で早速――――
「でわ、改めて・・・アルヴィス・ラティフォリアさん、私のクランに加入してくれませんか?条」
「うん、いいよー」
「件は・・・って、えぇ~・・・」
最後まで言わせてもらえなかった!なんだこれ、思わず膝を抱えたくなるんですけど。
「あっはっは~キョウちゃんのそんな顔が見たかったのだ!」
「キョウ、顔が酷いよ?」
「お父様、顔が残念な事になってるわ」
むぉぉ~皆して言いたい事言ってくれますな!顔が酷いとか残念とか中々に酷い!
もう思わずどころか、壁の隅っこに移動して膝抱えてくれるわ。実行~じっこー!
私がフラフラと移動して壁の隅っこにうずくまり始めたのを見て、やり過ぎたと思ったんでしょうね。
「あぁ!キョウちゃん拗ねないで~ゴメンね。つい悪乗りしちゃったよ・・・あぁもう、拗ねた所も可愛いんだから!」
凄い勢いで駆け寄ってきたアルに抱き付かれました!こらー頭をな~で~る~な!
「やだ、お父様ってこんなに可愛かったのね」
「女の子してるキョウを見てるとついつい弄りたくなるねぇ」
くそう、シリカもツバキも言いたい放題いいおって~!アルにモフられ続けられてる状態で、涙目になりながら外してある腕輪連中を睨みつけていたら、
「あぁ、あんな顔も良いわね。本当、つい悪戯したくなるのも分かるわ。ごめんなさいお父様、悪乗りが過ぎたわ」
「ゴメンよキョウ。男の時はそうでもないんだけど、女の子になってるキョウは童顔も相まって不思議な魅力があるんだ。こう・・・なんというかちょっかいを掛けたくなるような?」
むっは~!元の世界に居た時はこんな事無かったのに・・・いや、待てよ?時々、クラスの連中がウズウズしてたのってこういう事だった!?こっちに来てから気づくとか・・・鈍いとしか言いようがない。
「あ、何か悟ったような雰囲気を醸し出し始めたわ」
「キョウ、今まで自分の魅力に気づいて無かったんだねぇ」
「あぁ~放心してクッタリしてるキョウちゃんも可愛い!」
もうされるがままである。
「「「すっごくゴメンなさい」」」
「はい、すっごく反省してください」
皆におちょくられ、アルにモフられる事しばし。どうにか立ち直った私は、アルを正座させ腕輪連中は正座しているアルの角に引っ掛けるという、良く分からない状態で説教をしていた。
「罰として暫くの間、その態勢を維持してね」
「「「了解であります」」」
さて、何の話をしていたのだっけ?・・・あぁ、そうそうクランについてだ。
「さっきの続きだけど、アルには私のクランに入って欲しいと思ってるの」
「うん、それについては入ってもいいよー」
「でね・・・私のクランに入る条件なんだけど、ここで見聞きした情報及び身に着けた技術は私のクランに参加している者を除いて他の者に伝えてはならない。但し、私が許可した時は問題無し。脱退する時はこれ等の情報を外部に漏らせないよう処置を施した上で可能とする・・・こんな所かな」
「ふむふむ・・・処置とは例えばどんなのがあるのかな?」
「・・・できればしたくないけど、喉を潰したり手を潰したりかな。可能なら記憶を消すってのが一番なんだけど」
喉や手を潰してしまったら、流石に今後の人生への影響大である。出来ればそんな事はしたくない。
そんな事を考えてるのが表情に出てたのだろう、アルが私に対して安心させるような口調でこう言ってくる。
「安心して。その内容で私が合意して加入した場合、原理は分からないけど条件に抵触するワードは他者に言えなくなるんだ。身振り手振りで伝えるのも出来ない。脱退する時に記憶を消すというのも可能だよ」
「そうなんだ・・・因みに戦闘技術ってこの場合、禁止条件に抵触しちゃうのかな?それだと戦闘そのものが出来なくなるんだけど」
「うーん、どうなんだろ?念のため、『戦闘による情報及び技術の漏洩は不問とする。但し故意に伝える為の戦闘は不可』って内容を追加した方がいいかも。そこから学び取れる連中が凄いという事でここは一つ」
「うんそうしよう・・・あれだよね、この内容だといざ戦闘になった時、手加減とか難しいよね。加減をしているという事は、故意に伝える行為になってしまいそう」
「戦闘が必要な状況になってしまっている時点でもうね。そんな状況を作ってしまった相手が悪いという事で」
「こっちもそんな事にならないよう気を付けなきゃ・・・だね」
・・・どうだろう?こんな所じゃないかな?
「・・・どうかな?アルだったらこんな条件のクランに加入したいと思う?」
「寧ろ、凄く良心的じゃないかな?他所で聞いた話だと、酷い所だと脱退は認めないとか、異性に対して夜伽を強制するとか、挙句の果てにはリーダーの命令には絶対服従とかそんなふざけた所もあるらしいよ?」
「・・・」
まさに開いた口が塞がらないとはこの事だよね。そんなクラン、誰が加入するんだろう?
「そんな所誰も加入しないのでは?って思うでしょ。けど、酷い話でね・・・相手の弱みに付け込んだりしてあの手この手で加入させられるって話だよ。まぁそんな事をするクランなんて勿論まともじゃなくてね、闇クランとか奴隷派遣所って呼ばれてる」
本当酷い話だね。この世界はかなり生き難い面があるようだ。
「というわけで、私アルヴィス・ラティフォリアはキョウちゃんのクランに加入したいと思います」
はいはい!という感じで手を挙げてそう主張してくれる。うん、結構嬉しいな。ちょっと恥ずかしさが込み上げてもくるけれど!
「はい、こちらこそよろしくお願いします・・・所でどうすればクランに加入出来るんだろう?」
「確か加入条件を聞いた上で相手が納得して握手すれば成立するって」
そう言ってアルが手を差し伸べてきた・・・握手、握手かぁ・・・でもこの場合仕方ない、か。ちょっと躊躇っていると、
「キョウ。この場合はもういいんじゃないかなぁ。加入条件が条件だから何も問題がないと思う」
「それに、アルさんに関してはもう今更な気がするわ」
ツバキとシリカがこう言ってきた。その2人?からの後押しを受けて、意を決した私は、
「ようこそ、我がクランへ」
そう言ってアルが差し伸べてくれていた手をそっと握ったのだった。




