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第15話:ちょっとした朝の出来事です。

いつもより短めです。

 翌朝、俺・・・いや私はいつもの日課である朝風呂ならぬ朝川に行くべく体を起こす。

 その物音でカシアとマグルも目が覚めたのか、耳が動くと同時にこちらを見上げいつもとは違う私をしばし見つめていたけど、そこは野生の感覚なのかちゃんとわかったようだ。まだ寝足りなかったようで寝なおすようだ。

 私は出口に向かいがてらいつもの通り椿とシリカ、あとちょっと離れた所にいるアルに朝の挨拶をする。


「おはよう椿、シリカ、アル。川に行ってくるね」

「・・・んあ・・・いってらっしゃい」

「ん・・・いって・・・ℤzz」

「Zzz」


 2人とも私達と同じく寝る。そして2人はどちらも朝が苦手。アルに至っては無反応。

 いつも通りの光景を見ながら水浴びをするべく、タオルの代わりを務めている吸水性抜群の異世界産ヘチマ・・・の中身を薄くタオル状にカットしたものと、いつも役立ってくれている石鹸の木から採れた形成層を持っていく。


「ふぅ、今日はちょっと肌寒いかな・・・風邪ひくほどじゃないけど」


 そんな事を呟きながら、形成層を使いながら体を洗っていく。

 いつもと違う体つきだけど、そこはそこ。私にとっては慣れてしまった事。気にすることでもない。

 髪も綺麗になった所で、川から出てヘチマタオルを使って体に着いた水分を拭き取る。

 このヘチマ、普段使ってたタオルと大して肌触りが変わらないという優れもの。早い段階で見つける事が出来て良かった良かった。

 因みになんで遺跡内の温泉を使っていないのかというと、朝方だと温泉が無い。どういう原理なのか、この時間帯は温泉が抜けてしまい、お昼手前頃には綺麗になった浴場と新たな温泉が湧きだす。ミステリー。

 もしかすると、気づけていないだけで管理人さんみたいなのがいるのかもしれない。コロポックルみたいな?

 なんにせよ、お風呂が好きな私にとってはまさに天国。綺麗になる浴場と温泉を見るたびに手を合わせて感謝の念を常に送っています。ついでにお供え物としてその日に採れた果物を、ちょっとした祭壇っぽい物を作ってお供えしております。大事な事だと思うの。


 スッキリした所で近くに置いておいた衣服を着ていく。

 むぅ、体格が変わっちゃってるからサイズが・・・あとやっぱり胸が擦れる。晒があればなぁ・・・。

 そんなこんなで、軽く朝食として向いてそうな果物を確保しつつ遺跡に戻る。


「たっだいま~」

「「「・・・誰ですか?」」」


 予想通りの反応が返ってきた。というのも今の私は男ではなく女になっているから。


「よし、説明しましょう。まず、私はキョウですよ?」

「「「嘘だっ!!!!」」」


 即答ありがとうございます。うーん、どうしたものか。


「ん~・・・特異体質って奴でね?1月毎に性別が入れ替わるっていうとんでも体質なんだよね」

「・・・椿、知ってた?」

「流石に僕も知らなかったよ」

「キョウが女の子になっちゃた・・・キョウが女の子になっちゃった・・・キョウが・・・」


 うん?アルはまだわかるとして、椿とシリカなら知ってそうなものなんだけど・・・


「あれ、椿とシリカは私とある程度情報を共有してなかったかな?」

「一般常識とかは共有してるけれど、僕はキョウのプライベートに関わる所は意図的に避けたからねぇ」

「私も一般常識の部分だけね。にしても、お父様がお母様に・・・」

「まぁ見た目はこの通りだけど、中身は立派にキョウですからそこはご安心を。若干口調に違いや1人称が私になったりはしてるけど」


 身近な連中はみんなこの体質の事をわかってる人ばかりだったからなぁ・・・こういう反応は凄く久しぶり。因みに精霊さん達は特に反応を示さない。向こうにとっては性別の違いとか大した事じゃないのかも。


「最初は戸惑うかもしれないけど、そのうち慣れるよ。大丈夫大丈夫」

「「「いやいやいや」」」


 うん、みんな息ぴったりです。仲がいいのは良い事良い事。

 私は近くに寄ってきた子狼達を撫で撫でしつつ


「カシアとマグルは直に気づいたもんねー。凄い凄い」


 もっと撫でて~という感じでお腹も見せてきたので、モフモフで柔っこいお腹もナデナデする。癒されますねー・・・。




 皆が落ち着いた頃を見計らって、私は今問題になっている事を相談する事に。


「ねぇ、アル。晒みたいな胸に巻けるものとか何か持ってないかな?胸が衣服に擦れてちょっと・・・ね」

「あ、ちょっと待ってね。それっぽいものが確かあったはず」


 アルが一室として使ってる所に引っ込んで、何かを手にして戻ってくる。


「これなんかいいと思うよ~」


 と言って持ってきたのは、なんとブラジャー!


「ブラジャーだ!」

「ブラジャー?なにそれ?これは私の里で作ってる胸当てなの。大分昔の祖先の方達が作ったらしくてね、今でもちゃんと継承されてるから、ちょっとした特産として一部の集落との交易品として人気があるんだー」

「おぉぉぉ、早速付けてもいいかな?」

「どうぞどうぞ」


 アルから受け取ったブラジャーもとい、胸当てを後ろを向いて付けてみる。流石に皆の目の前で自分の胸を晒したりはしませぬ。

 後ろにフックがある為、ちょっと手間取ったけれど問題なく装着!丁度都合よくサイズもピッタリ。


「いい感じだよ!アルーありがとー」

「サイズも問題無いようでよかったよかった」


 つまり、私とアルの胸のサイズはほぼ同じ・・・はっ顔に出てたのかアルの顔がみるみる赤くなっていく。


「キョウのエッチ!」

「フフフ、今の私は女・・・そんな恥ずかしがる事はないのだぞ~?」

「そんな簡単に切り替えれるか~!」

「一気に女子率が上がった感じだね、なんというか姦しい」

「お母様・・・ダメ、違和感しか感じない。慣れれるかな・・・」


 騒がしくも和やかな雰囲気に包まれたまま、今日という一日が始まるのだった。

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