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第14話:同居人が増えました。

凄く、久しぶりに日を跨がなかった!

・・・あれ?跨いでない日なんてあったっけ。

気にしたら負けですな。頑張る。

※2019/05/12 一部内容を加筆修正。

 あの後ドラゴンそっちのけで話に花を咲かせ、流れで我が家である遺跡に行ってみたいとアルが仰るので連れていく事に。

 我が家に到着したはいいものの、着いたら紹介しようと思っていた子狼2匹の姿が見当たらん。何処行った?


「カシアとマグルがおらん」

「ん?誰?」

「この前イノシシに襲われてた子狼の事なんだが、成り行きで助けて今一緒に住んでる」

「へ~、野生の狼って中々心を開かないって聞いてたんだけどな・・・そこん所は大丈夫だったの?」

「最初こそ警戒されたが、どうも2匹とも賢いみたいでな。すぐに馴染んで今や家族同然だな」

「お~そりゃ凄い。早く会いたいなぁ」


 腹でも減って何か狩りに行ったのだろうか。まぁ、あの2匹の危険察知能力は中々のものだ。余程の事が無い限りは大丈夫だろう。多少の怪我も生きていく上での経験となる。無茶だけはやめて欲しいが。あんまり遅いようなら探しに行くが、あまり行動を制限するつもりは今の所ない。


「うんまぁ、そのうち帰ってくるだろう」

「中、入ってもいい?」

「どうぞどうぞ。大したものは無いが」


 アルを遺跡内へと案内していく。見せるといっても温泉くらいしか無い為、真っ先にそちらへ。

 やっぱ温泉は魅力的に感じたらしく、あとで入りたいって言ってたな。疲れが取れるから最高だぞー。

 あとは何も無い空間とか寝床にしてる所とか椿が入ってた棺とその空間とかを見せていく。

 色々と物珍し気に見ていたが、特にビックリしていたのはシリカ作の調理器具。どうも料理という概念がこちらの世界では無いっぽいらしく、どうやって使う道具なのか色々と聞かれた。

 そう遠くないうちにこれらが活躍する場をお見せしようではないか。因みに軽い頑丈使いやすいと文句無しの性能です。


「で、さっき皮を処理してゆくゆくは衣服とかに加工したいと考えているんだが、糸が無くてな」


 一通り案内した後、今現在直面している問題へと話題がシフトしました。


「うーん、糸かぁ・・・私が居た里に行けば織物とかあるんだけどね。私自身に創る技術があるかと聞かれると無い!」

「そうかぁ・・・やっぱそう都合よくはいかないか」

「でもでも、羊毛はあるみたいだしこれ持って里に行けば糸として紡いでもらえるかも」

「でも、場所は明かせないんだろ?」

「そうなんだよねぇ、持ってって糸にしてもらっても既に出来上がってる服類や織物を持ってきた方が早いだろうしね」

「因みにここからその里まで行って帰ってくるまでどれくらいかかる?」

「往復となると、飲まず食わずの休憩なしで2日って所かな」

「近いようで遠いな・・・やっぱこっちでどうにかするしかないか。でも、本当にどうしようもなくなった時にはお願いするかもしれない」

「うんわかったー」


 引き続き糸を探すとしよう。

 とはいえ、俺の体質である『アレ』がそろそろなんだよなぁ・・・どうしたものか。

 俺があれこれとウンウン唸っている姿が何やら楽しいのか、横から見ているアルが微笑ましい顔をしてこっちを見ていたんだが急に真剣な顔つきになって外の方を見た。


「どした?」

「外に何かいる」


 ふむ、随分と警戒しているな。アルが出口の方へと向かった為、俺もその後ろ姿を追う形で付いていく。こちらも気を引き締めて行こうか。

 アルは出口付近で立ち止まり、外の様子を伺っている。こちらも様子を伺ってみると・・・あぁなるほど。

 見れば、獲ってきた鹿羊を口から離したカシアとマグルがアルに向けて威嚇していた。ちっさいとはいえ、中々の迫力がある。狼は伊達ではないようだ。


「アル、その2匹は大丈夫だ」


 俺はアルにそう声をかけ、2匹の子狼の前に出ていく。アルが一瞬何か言いたそうな顔をしたが悪い、無視するわ。お互いに盛大な勘違いをしてるだけだからな。


「カシア、マグル、この子は敵じゃない。俺の友人だよ」


 そう言って2匹の頭を撫でて落ち着かせる。後ろで状況を理解したであろうアルの警戒が解けていく。

 それに合わせる形で子狼達も警戒を解いてくれた。よしよし、いい子達だー。


「アル、紹介するよ。カシアとマグルだ。耳が垂れ気味の方がマグル」

「よ、よろしく。私はアルヴィス・ラティフォリア、この度キョウと友人になった」


 途端に口調が会ったばかりの時のに変わる。なんだろう、癖か何かなんだろうか。

 2匹もアルに対して気を許してくれたのか、近くに寄って撫でてもいいよ?って雰囲気でアルを見上げている。

 そんな2匹に対してアルは、


「な、撫でてもいいのだろうか?」


 と俺に聞いてくるので、


「どうぞどうぞ」


 と返してやる。アルは、恐る恐るという感じで2匹を撫でだす。途端にアルの表情が緩み、


「モフモフだ~」


 速攻で口調が元に戻った。ま、別に気にする事でもないか。

 よし、これでお互いの顔合わせも一段落だ。

 俺は2匹が獲ってきた鹿羊を掴み手早く処理してしまう事にした。さっさと血抜きしないと不味くなってしまう。




 

 暗くなって来た為、手早く鹿羊を解体し肉の部位毎に分けて塩を塗す。一部は焚火で炙って、脂身の少ない部位の肉は鍋に入れ、干しておいたシイタケの実とジャガイモっぽい・・・いやもうジャガイモでいいや。も入れてコンソメスープと一緒に煮込んでいく。

 そんな料理をしている姿と気になっていた調理器具の使い方をまじかで観察し目を輝かせているアルから、


「これがさっきキョウが言ってた料理って奴なんだね~」

「そうだな。食べれるものをより食べやすく美味しく加工する事を料理という」

「今まで直接食べれるものばかり食べていたから不思議な光景・・・あ、でもお肉は焼いて食べてたって事はこれも料理と言っていいのかな?」

「勿論だ。ただ焼くだけじゃなくそこから更に手を加えればもっと美味しくなるんだ」

「ほうほう、例えば?」

「お肉を焼くときに塩を塗すとか、香辛料やハーブと一緒に煮込むとか・・・だな」

「むむむ、塩とか香辛料やハーブ?この時点でなんの事かさっぱりわかんないや。さっきキョウがお肉に擦り込んでた奴が塩って奴?」

「そう。お肉に塩を塗す事でお肉の味や風味が一層際立って美味しくなるんだ」

「おぉ~・・・んでんで、今キョウがやってるそれが?」

「煮込みって奴だな。火に当てても破損しない容器・・・鍋っていうんだけどな、これにお肉とコンソメスープ・・・あれだ、美味しい水だ。を入れて火で温めて熱を通していく・・・これが煮るという事だ」

「ふむふむ・・・ふむ?」

「まぁいきなり理解しようとしなくてもいいんじゃないか。そのまま食っても美味しい物が、更に美味しくなるのが料理だって事さ」

「なるほど!とっても楽しみ~」


 料理そのものを知らない相手に説明するのは中々に難しいな。


「キョウが料理して美味しく食べてる所を見るたびに、僕は生身の肉体が無い事が恨めしく思うよ」

「それは言いっこ無しよ。私だって食べてみたいんだから」


 両腕の腕輪達から何やら呪詛のようなものが聞こえて来る。こればっかりはどうにもならん。許してほしい。

 俺は苦笑しながら料理を進めていると、ふと真剣な顔つきになったアルから


「ね、私しばらくここに居ても・・・いいかな?」


 と、聞かれた。 

 俺は料理する手を止めず視線だけ少しアルの方へ向け、またすぐに戻しながら、


「別に構わないぞ。空きスペースはこの通り大量にある。好きに使ってくれ」

「ん・・・ありがと・・・何も聞かないんだね?」

「ん~?人に言えない事の一つや二つ、誰にでもあるだろうさ。言いたくなったら教えてくれ」

「そっか。そう言ってもらえると助かっちゃうな・・・よし!私に出来る事があったら言ってね~出来る範囲でお手伝いさせてもらうよ」


 ふむ、なんか吹っ切れた感じだな。まぁ俺もそうだが多感な年頃?だろうし、色々と悩みもあるだろう。

 打ち明けられた時に何か出来るかはわからんが、友人として手は尽くそうじゃないか。

 とりあえず今は楽しい夕食といこうか。


「そうだなぁ、そこの肉がそろそろいい感じだ。切り分けて少し冷ましたらマグル達の皿によそってあげてくれ」

「あいあいさ~」


 もうじきレンコンと茄子のココナッツオイル塩炒めも出来るし、なんちゃってポトフの方もいい感じだ。

 後ろの方では2匹の子狼達のお腹の音も聞こえてくる。もうちょっとだ我慢してくれ。

 色々とあった一日だったが、今日も今日とて楽しかった。こんな何気ない平和な日が続く事を祈るばかりだ。

 でもまぁ、明日の朝は色々と起こるだろうなぁ・・・ま、なんとかなるでしょう。

 因みにアルはこの後料理の素晴らしさに目覚め、今後俺と一緒に料理の奥深さを探求していく事になる。

 こうして賑やかな夜を迎えたのだった。

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