第12話:糸の原料を探しに行動範囲を広げました。
俺はダメだー。毎日投稿は出来る気がしません。
でも、努力はします。見守ってください・・・。
※2019/03/27 一部修正。
2019/05/11 カシアが見つかった洞窟よりも→シリカが見つかった洞窟よりも に修正。
「衣服がヤバイ」
そう、ヤバイ。こっちに飛ばされてからというもの、着ていたものしかないのだ。こっちの世界にTシャツやジャージなんてステキな物などあるはずもなく。今着ているのがダメになってしまったら替えがないのだ。
幸い石鹸の代用品は見つかっているので洗う事はできるのだが、何かの拍子で破けるなどしてしまったらと思うと目も当てられない。文字通りに。
・・・デカい葉で局部を隠すとか流石にしたくない!早急に対処しなくてはイカン!
「とはいえ、何か当てはあるのお父様?」
「無いわけじゃないんだが、上手くいく自信が毛ほどもない」
「衣服かぁ、切実な問題になってきたねぇ。それで、今やってるのがそうなのかい?」
「あぁ、毛皮を作ってみようと思う。で、いまやってるのは余計な肉や脂を落とす作業な」
さっき獲ってきた鹿羊を解体したときに採れた皮の処理をしながら俺は説明する。
以前断念した皮の再利用だが、自信は無い。
「余計な物を取り除いたら今度は『なめし』っていう処理を施していくんだが、正直上手くいくとは思えん。如何せんうろ覚えな上にやった事なんてないからなぁ・・・まぁ失敗覚悟でやるっきゃない」
そう言いつつ、皮の処理が終わった俺は脇に置いておいたデカい物体を拾い上げ、シリカに創って貰った寸胴鍋に放り込んでいく。
「今放り込んでいるのは・・・この前俺が誤って口にしてのたうち回った奴な」
「あぁ、柿ね」
「柿だね」
「そう、柿だ。すげぇ、デカいけど」
この前、探索してた時に見つけたデカい柿。上手そうと思って齧りついたのが運の尽きだった。
この柿、あり得ないくらい渋かったのだ。
「あの時のお父様ったら『にぎゃぁぁぁぁっ!!』って、それはもう酷い奇声を上げていたわね」
「あれは食った者にしか分らん。マジできつかった」
「こっちも食えるか食えないしか分らないからねぇ。そういう事もあるよ、うん」
「・・・思い出したら気分悪くなってきた。こいつを潰して汁を取り出す。果肉はとりあえず処分だな」
果肉ごとでもいいかもしれんが、後々の作業で邪魔になるかもしれない。寸胴の3分の1くらいまで汁で満たされるまで潰していく。
「次は・・・処理した皮をここに入れて漬け込むんだが、その前に洗うかこの皮。流石に血生臭い上に獣臭い」
石鹸の木と俺が勝手に命名した木から採れる形成層を使って皮を洗っていく。うん、だいぶ臭いが取れるな。この清々しい香り・・・癒されるわ~。
「鍋に入れて浸して空気に触れないよう重石を乗せてっと。ついでに石鹸の木の葉も大量に入れて臭い消しも促してみよう。あとはこのまま様子見・・・かなぁ」
「それが『なめし』という処理なの?」
「確かね。この柿の汁にはタンニンっていう成分が大量に含まれているんだが、こいつが皮の腐敗を防いでくれる。こいつをキッチリ皮に浸透させて、乾燥させれば革として使えるようになる・・・はずだ」
「上手くいくといいねぇ」
「本当にな。これで革が手に入るようになれば、野性味溢れる格好にはなるだろうが当面の心配はなくなる。その間に糸を探す」
革が手に入ってもそれを加工し縫い付ける糸が無ければ、穴を空けて被る程度の事しかできない。それはちょっと嫌。因みに鹿羊の毛は名前が名前なだけあって、いい感じの羊毛が取れた。取った後の皮の感じが鹿っぽくて2度おいしい、最高の素材じゃないでしょうか。
「キョウって何気に何でも器用にこなすよねぇ」
「ある程度できないと一人でサバイバル生活なんて出来ないからな。とはいえ、現状を顧みると大分恵まれていると言えるんだろうな。椿とシリカには感謝だよ、本当」
「もっと褒めてくれてもいいわよ!」
「急に言われるとちょっとむずがゆいねぇ」
おーおー、照れとる照れとる。微笑ましい事だ。
話題に全く上がってこないが、カシアとマグルは現在腹いっぱいで、お気に入りの岩の上で日向ぼっこしております。平和だねぇ。
俺もそうだが、カシアとマグルもあれから常にマナを取り込み気を運用し体に負荷をかけている。こっちに来た時と比べれば大分限界の上限は上がっているだろう。近いうちにその確認をするためにも、大物を獲りに行きたい所だ。
「さて、と。俺はいつも通り探索でもしてきますかね。糸の原料になるものでも見つかれば万々歳なんだが」
俺は首をゴリゴリと鳴らしつつ、作業で強張った筋肉を解していく。手早く準備を済ませ、
「おーいカシア、マグル、探索行くけど一緒に行くか?」
2匹に声をかけてみる。耳がピクピクっと動いたがすぐにペタァと伏せた。うん、今日はお休みっと。
「じゃあ、行ってくる」
今日は何処に行きましょうかねぇ・・・遺跡である我が家から出て天を仰ぎ今日も快晴である事を確認し、俺は意気揚々と歩き出すのだった。
シリカが見つかった洞窟よりも更に上へと登っている途中、何か大きなものが飛ぶ音と共にこちらへと近づいてくる気配がした為、俺は咄嗟に身を隠し様子を伺う事にした。
程無くして、
「・・・なにあれ!」
「あの時のドラゴンだな」
「こっちには気づいてないようだねぇ」
「襲われちゃたまらん、このままやり過ごそう」
俺は気配を消して、ドラゴンの行方を目で追う。すると、こちらに気づいたのかドラゴンと目が合った。マジかよ!?どうやってこっちを見つけた?あの位置からじゃ俺は殆ど茂みの中で見えないってのに!
もう隠れていても意味は無い。俺は茂みから抜け出し、一番ドラゴンに近づけそうな木の上に行き敵意が無い事を示す。
これでこっちに襲い掛かってくるようなら、仕方ない。全力で逃げる!!
俺は即座に逃げれるように態勢を整える。来るか・・・来るか?
「・・・来ねぇな。前回も思ったけど、俺って相手にされてない?」
「食べてもマズそうとか思われてるんじゃないかしら」
「前回同様食後だったのかもしれないよ」
ドラゴンから目を離さずそんな事を小声で話してると、
「あ!今アイツ笑いやがったぞ!」
「え~・・・気のせいじゃないかい」
「いーや、笑った!なんだろう凄くイラっとする」
「お父様の被害妄想にしか私は思えないわ」
両方向から何言ってんだこいつ?って感じで呆れた声が聞こえてきやがる。ムキー!
「決めた。追っかけてくれる」
「え?ちょっと待とう。それはマズイ!」
「アレに目を付けられたら、お父様なんて一息よ?」
「失礼な!ドラゴンの1匹や2匹、軽く逃げ切ってみせるとも!」
「そこは蹴散らせると言って欲しかったわ」
「逃げる前提なのに、なんでわざわざ近づこうとするかなっ」
「えー、そりゃだってドラゴンですよ?レアですよレア。むしろ、こっちの世界に来て初めてドラゴンという生物と遭遇できたんだ、もっと観察して知りたいじゃないか!」
「怖い物見たさって奴ね」
「そこは純粋に好奇心と言って欲しいかな」
「今回もスルーしようよっ」
「嫌だ!たまに思うんだけど、椿はもうちょっと冒険しようぜ?」
「ちょっと前まで警戒しまくっていたとは思えない発言だね!」
「日頃の鍛錬の賜物なのか、ちょっと大物に挑んでみてもいいかな~って?」
「大物どころか、ラスボスだよアレ!ふざけてるんなら怒るよ!?」
「むぅ、至って真面目ですとも。挑んでみるってのは流石に言い過ぎたけど、近くでもっと調べたいってのは本心だ。ヤバくなったら全力で逃げる・・・ダメか?」
「・・・絶対だよ?無謀な事はご法度だからね?」
「了解だ」
「椿って時々異様な程、過保護になる時があるわよね、昔何かあったの?」
「・・・僕の姉が好奇心の塊のような人でね。時々、キョウの行動が姉と被るんだよ。そして、そんな時は大抵ロクな事にならないんだ」
「へぇ、そんな事が・・・お父様?」
「うん、分かった。今後椿が強く警告して来る時は、真剣に耳を傾けるよ」
椿が俺の事を心配しての発言だという事が良く分かった。今後は心労が溜まる様な行動や発言は慎むとしよう。
俺はドラゴンが飛び去った方向へと移動を始める。結構長く話し込んでしまったからなぁ、ちょっとペース早めで追いかけるとしよう。
ドラゴンは川に沿って飛んで行っている。見失う事はないと思うが・・・そう考えながら斜面を降りている時だった。ちょっと高めの段差を何気なく飛び降りたら目の前に人?が!?
「あ!?」
「え!?」
やっべ!ぶつかる!俺は咄嗟に手を広げて可能な限り相手への衝撃を緩和しようとしたんだが、
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
という声と同時に顔に硬い物がめり込んでいく感触と衝撃が!
「ごはぁぁぁぁっ!?」
俺はそんな奇声を上げながら吹っ飛んでいった。




