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第10話:娘が誕生しました。

投下。ダメだ、毎日投稿になってない!ゴメンナサイ。

「落ち着いたかい」

「・・・うん」

「それにしてもごめんよ、余りの展開で止めるのが遅くなっちゃたよ」

「もういいわ、こうして話を聞いてくれているし」


 あのあと、泣き止むまで不思議な石さんをナデナデしながら落ち着くのを待っておりました。

 うーん、喋る石か・・・もう何でもありな世界だな。

 驚きつつも対して動揺はしていない自分を顧みて、我ながら慣れてきているなという実感が湧く。

 にしても、急に話が出来るようになった原因はなんだ?


「よし、では改めて・・・こっちも色々と聞きたい事はあるけれど、まずはそちらからどうぞ?」

「えぇ・・・とは言っても永い事ずっと独りで寂しかったから、とにかく何でもいいから話をして欲しかっただけなの」

「永い事ずっと独り・・・か。なら、こちらから話題を振っていこう。まずは、どれくらいの時間ここに?」

「正直、時間の感覚ってまだ良くわからないの。私がこの地に生まれてからずっとここに居たっていう事は何となくわかるのだけれど」

「ふむ・・・急に話が出来るようになったのはどうしてだい?」

「あなたが私に触れたからよ」

「え?」


 ・・・どういう事ですかね?俺が触れたらなんで急に喋れるようになるんだ?訳がわからんぞ!


「あなたが私に触れたから」

「あ、うんごめん。大丈夫、内容はちゃんと聞こえているよ。え?俺が触れたから?なんで俺が触れたら話せるようになるんだ?」

「私にも分からないわよ。ただ、あなたが触れる前の私はただ漠然とそこに居るだけの存在だったの。あなたが私に触れた瞬間に私という意志?意識というのかしら?が生まれて今に至っているわ」

「・・・よし、原因の究明は後回しにしよう。それで、目の前に俺がいたから話しかけたと」

「そうね。私が私という存在を認識した途端、今まで感じも理解もできなかった事が一気に雪崩れ込んできた。孤独感もその一つ」

「・・・」

「私は独りなんだってわかった瞬間、とても寂しかった、悲しかった、そして何よりも怖かった。誰にも認識されずにこのままずっと独りのままなのかと思うと耐えられなかった。そう思うと同時にあなたに話しかけていたわ」

「・・・ごめん。俺のせいで、君を苦しめる事になってしまったみたいだ」

「謝らないでよ。怖い、苦しいのが分かるという事は、嬉しい、楽しいという感情も分かるという事。今、私はあなたと話が出来て嬉しいし、楽しいわ?何より、とても安心できる」


 俺の顔が歪む。どういう原理かは分らんが、俺が触れる事で理性無い物が理性有る者へと変わってしまううという事だ。それは個としての在り方を歪めている。創り変えてしまっていると言ってもいい。しかも相手の意志とかそんなの関係なしに。そんな命を弄ぶような事・・・


「そんな思いつめた顔しないの。私はあなたを憎んだりしていないわよ。むしろ感謝しているくらいだもの」

「え?」

「だってあなたのお陰で私という存在は誕生したのよ?過程はどうであれ、一つの意識・・・この場合は命といった方がいいのかな?が生まれたのだから、ここは祝福して欲しい所だわ」


 ・・・どんな顔をしていいのか分からない。こんな時俺はどういう反応を返せばいいのだろうか。


「まったく・・・ほら、そこの腕輪さん?流れに任せていないで少しは発言したらどうかしら」

「むぅ・・・キョウ?そんな難しく考える事ないよ。君が罪悪感を感じる必要はないんだ。これは在り方を変えたわけじゃない。特定の条件下で対象の願いを汲み取り、その存在を一段階上へと進化させる手助けをしたに過ぎないんだ」


 進化させる手助け?つまりそれは、


「そう、相手が願わなければ何も起こらない。相手の意志を無視して創り変えたりはしないから大丈夫だよ。特定の条件下って言ったのは、詳しい条件が今の所不明だから・・・かな」

「どうしてそこまで断言できるんだ?」

「それは僕も影響を受けたからさ。無理やり変えられる感覚はなかったし、むしろこっちが強く思っている事を丁寧に読み取って可能な範囲で実現してくれるようなそんな意志を感じたよ」

「・・・マジか」

「とはいえ、さっき言った通り条件が不明だからはっきりしないうちは黙っているつもりだったんだけど、それが裏目に出ちゃったよ。ごめんね、キョウ」

「いや、俺の手が知らん内に物騒な代物に代わっていたとかじゃなくて安心したよ。安全とは言えないが」

「おそらくだけど、カシアとマグルも手の影響を受けているんじゃないかな」

「だよなぁ、心当たりがありすぎる」

「その、カシアとマグルってなに?」


 と、不思議な石さんから質問が来る。


「あぁ、カシアとマグルは俺らが連れてきた子狼の事なんだが・・・って、あいつらどこ行った?」

「ほら、あそこの岩陰から覗いているのがそうじゃないかな」


 後方へ振り返って指示された岩へと目を向ける。するとそこから2匹が顔だけを覗かせて「もう大丈夫?眩しくならない?」って感じでこちらを伺っているじゃありませんか。


「なにあれ、すっごく可愛いんですけど」

「そうか、君にもアレが可愛く見えますか・・・というか、可愛いという感覚も分かるんだな」

「きっとあなたが私に触った時、あなたの基礎情報をベースとして私が生まれたんじゃないかしら。そうじゃないとこうして話すことも出来なかったでしょうし」

「なんというか、いきなり娘ができたような気分だ」

「あら、いい得て妙ね。これからはあなたの事をお父様とでも呼ばせてもらおうかしら」

「なん・・・だと・・・」


 俺がお父様?なんだろうこの気持ち・・・無性に保護欲が刺激される。これが父性って奴なのか!?石だけど。


「よし!なら、今から俺の娘だな!まずは名前を決めなくては!」

「おぉ・・・キョウが父に目覚めた」

「ふふ、お父様?いい名前をお願いね」


 まっかせなっさーい!いい名前を考えちゃうぞ~。

 というわけで、子狼2匹に続いて今度は不思議な石もとい、娘の名前を考えなくては。

 俺がウンウン唸りだしてややしばらくしてから、


「ごめんね、助かったよ。キョウは一度思い詰めるとどんどん悪い方向に行っちゃうから」

「全然構わないわ。むしろ、2人は私の事を自然に受け入れてくれた。感謝してもしきれないわ。本当にありがとう」

「これから長い付き合いになりそうだね。今後ともよろしく」

「こちらこそ、末永く・・・ね」


 なにやら2人で楽しそうな話をしているっぽかったが、俺はそれどころじゃない。前もそうだったが、名前とか考えるのはとても苦手だ。変な名前を付けようものなら、速攻で嫌われかねない。責任重大である。


「そういえば、自身がどんな鉱物で構成されているかって、分らないかな?見た感じ、向こうの世界で言う所の水晶に見えるんだが」

「そうね、見た目は水晶に見えなくもないでしょうけど別物よ。私はマナが結晶化した存在なの」

「・・・マナが結晶化って、そんな事ありえるん?」

「目の前にあるじゃない」

「そうだった!」


 マナが結晶化した・・・か。鉱物名としては無難な所でマナダイトとかそんな所か?


「いい名前、思いついた?」

「いんや、とりあえず鉱物名としての名前はすんなりと思いついたが、娘に名づけるようなもんじゃないな」

「そう。それで鉱物としての私はなんて?」

「マナダイト、と。嫌か?」

「うん、いいんじゃないかしら。次は娘としての名前ね?」

「うぉぉ・・・期待が重く感じる」

「娘の名前ですもの。重くて当然だわ?」

「全国にいらっしゃる親御さん方、名づけって一大行事なんですね・・・思い知る」


 何かいいのないですかね!?マジで思いつかないんですけど!水晶、石英、クォーツ・・・うーん、水色に透き通っていたからアクアマリン・・・アクアとかマリンとかはな・・・もうちょっと何かないか。

 そういや、水晶とは違うが似たような過程で珪化木ってのがあったな、似て非なる者って事でここから何かもってこれないかな?

 え~っと、珪化木の構成物質ってなんだっけ?珪だからケイ素が関わってるよな・・・ん~・・・あ、そうだ!二酸化ケイ素だ!二酸化ケイ素といえば、


「・・・シリカ、でどうでしょうか」

「シリカ・・・それが私の名前なのね?」

「ど、どう・・・かな?」

「ふふ、気に入ったわ。何が由来かは・・・敢えて聞かないでおくわね」


 疲れた。どっと疲れた!それにしても、本当に俺は名前のセンスがよろしくないな。


「お父様、私の名前はシリカです。不束者ですが、よろしくお願いします」

「こちらこそ、不出来な父だがよろしく頼む」


 こうして俺の娘?が誕生しました。


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