第36話 オーク防衛戦 終結
今、私の目の前では信じられないことが起きている。
あんなにも苦労して、必死になって倒していたオークが、
槍の一突きで簡単に倒されていく……
さらに参戦してきたオークジェネラルも、
槍に炎を纏わせて簡単に屠っていく。
「すごい、あれって魔法が付与された武器なの?」
私の疑問に近くでオークを警戒していた仲間のニーグが答えてくれる。
「ん、ああ、あれは魔槍だ。
名は知らないが迷宮で手に入れたものらしいぞ。
それに、さらに向こうで戦っている奴が見えるか?」
ニーグが指さしてくれた方向を見ると、
青く光る大剣を振り回して、オークジェネラルを圧倒している青年が見えた。
「見えたけど、あれって聖剣?」
「いやいや、あれは聖なる光じゃなくて氷結の光だ。
あれも魔剣の1つで、迷宮で手に入れたものだそうだ。
あの2人は王都方面から来てくれた冒険者だよ。
それも上位クラスのな。
でも、王都や迷宮都市なんて呼ばれているところには、
あんな冒険者はゴロゴロいるそうだ。
ミコトも、強くなっていけば今戦っているオークやオーガなんて、
簡単に倒せるようになるさ……」
私は、剣を握る自分の右手を見て、盾を持つ左手を見る。
普通の手、ちょっと前までこんな武器なんて持ったことない、
ただの女子高生だった私は、見る影もない。
今の私はただ生きるためだけに強くなりたいと思っている。
……でも、あのジェネラルを
簡単に屠るような人たちみたいになれるのだろうか?
魔法の武器を持つだけで強くなるとは思えないから、
あの人たちも強くなる努力はしてきたのだろう。
強くなって、強くなって………どうする?
私の中で、未来に対する疑問が生まれた……
「ミコト! あいつ等が、王都から来た奴らがレッドオーガを倒したぞ!」
ニーグの叫びの報告で、私は顔を上げあの人たちを見る。
そこには、倒れたレッドオーガに槍を突き立て、
片腕をあげて勝利をアピールしている青年がいた。
周りにいる人たちも、声をあげて喜びを叫んでいる。
「ミコト、オークはまだいるんだ、油断するなよ!」
一緒に戦っていたユーリが叫ぶ、
そうだ、まだ戦いは終わってないんだ。
「ボスのレッドオーガは倒したんだ、
周りにいるオーガは俺たちの手で倒していくぞ!」
私は剣を握りしめ、仲間のニーグとユーリとともにオーク討伐を再開する。
すでに私たちの勝利は決まった。
後は、オークを倒して倒して倒すだけ……
【ロックランスシュート】
川島さんの魔法の土の槍がオークの頭を貫き、絶命させる。
ラルガ村の外壁での攻防もようやく終わりが見えてきた。
俺たちがオークと戦っていることを聞きつけ、
避難してきた人の中にいた冒険者たちが参戦してくれたのだ。
おかげで、森の中から出てきたオークはすべて倒し終えた。
「……どうやら、終わったようですわね」
オリビア先生がもう、森からオークが来ないことを言うと、
近くにいた冒険者が終了を叫ぶ。
「終わったぞー!!」
その叫びを聞いた参戦していた人全員から、歓喜の声があがった。
俺は、側にいた川島さんと握手をすると生き残ったことに喜んだ。
「川島さん、お疲れさまでした!」
「白石さんこそ、お疲れ様、生き残れましたね」
「はい」
西条さんは、アビゲイルさんやオリビア先生のところで抱き合っている。
生き残れたことに感謝しているのだろうか?
「……しかし、外壁の修復、大変そうですね」
「ああ、まあ、な。
オークがあれほど頭を使った攻撃をしてくるとは思わなかったな……」
俺たちが見ているのは、見事に壊された外壁の部分だ。
オークのタックルによる衝撃と、破城槌による攻撃は
あんなに分厚い外壁を崩すことに成功していた。
外壁の一部とはいえ、崩されたところからオークが雪崩れ込んでくれば、
戦闘は外壁の外から中に変わり、犠牲者も出ていたことだろう。
ゴブリン、コボルトと続き、最後はオークが攻めてきたこの村には、
いったい何があるのだろうか……
そんな疑問を考えていた時、
村の人が町での戦闘が終わったことを知らせてくれた。
町での戦いは、王都から来た冒険者たちがボスを倒して終息したそうで、
生き残ったオークは森に逃げていき、
その後、冒険者ギルドから安全宣言がなされたと報告している。
その報告を聞いて再び歓喜の声があがり、見張りを残して村に帰っていく。
「オリビア先生、俺たちも帰るんですか?」
俺たちはどうするのか分からなかったので、オリビア先生に聞くと、
思ってもみない答えが返ってきた。
「ん~、わたくしたちは見張りに残りますわよ」
その答えに俺が呆然としていると、
「当然でしょう、外壁の修理やあのオークの死体処理、
することは山ほどあります」
「それにコータ君、今帰っていく冒険者は、
避難してきた町の人たちを護衛して帰っていくんだ。
私たちは依頼でこの村に来ている以上、依頼をこなさないと帰れないんだよ?」
アビゲイルさんが俺達が帰れない理由を教えてくれる。
……そういえば、忘れていたな、
魔術師ギルドの依頼でこの村に来ていたこと。
思い出した俺は、どっと疲れを感じることになった。
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




