第35話 オーク防衛戦 2
ムルナの町での攻防戦が始まって1時間が経過するころ、
オークジェネラルたちが参戦し始める。
並外れた突進力を活かし冒険者や兵士たちを吹き飛ばしていく。
また、人の背丈もあるような大剣を手に持つと、
そのまま力任せに振り回していく。
すると、その攻撃をもろにくらった兵士の首が飛び、
頭の無くなった体から大量の血が噴き出し、辺りを血の海に変えていく。
その血を浴びたオークは、興奮しさらに苛烈になっていった。
こうしてジェネラルの参戦で、オークたちの勢いが増し、
冒険者たちや兵士たち、それに騎士たちを劣勢に追いやっていった。
「そ、りゃっ!」
ムルナの町の外の北側で戦っている冒険者たちの中に、
ミコトたちのパーティーが参加していた。
オークと真正面に対峙するニーグは、
オークの右足を狙い自分の剣を振り下ろした。
『ブオオオォ』
片足を切られ膝をつくオーク、それでも武器である槍は手放さない。
だが、そこをさらにニーグは切りかかった。
「ミコト、ユーリ、突けっ!」
ニーグの剣はよけられるが、意識をニーグの剣に向けていたオークは、
死角から来るミコトとユーリの突進をよけることはできずに、
深々と剣が刺さり絶命した。
「よしっ、次いくぞ!」
オークから剣を抜き、オークの血を拭うとニーグの言葉に、
「「はいっ!」」
と気合を入れて再び戦闘態勢をとる。
ずっと戦い続けて疲労もたまっているミコトだが、
必死の思いでニーグたちについて来ていた。
ミコトたちの周りを見れば、オークの死体の他にも冒険者の死体や、
兵士たちの死体も転がっており、
少しでも気を緩めると、朝食べたものを戻してしまいそうな状況だ。
それでも戦い続けるのは、生きるため。
そしてみんなと、両親と再会するためにと、
ミコトは必死になっていた。
ラルガ村でも、オークが攻めてきていた。
アビゲイル1人が魔術で応戦、側にいた村人たちでは、
遠距離にいるオークに、拳大の石をぶつけるのがせいぜいだ。
まだ、わらわらと森からオークが現れている分、対処もしやすい。
これが数で襲ってきたら、アビゲイル1人では戦えなかっただろう。
【ファイアーランス】
『ブギイイィィ!』
またオークを1体仕留めることができたが、いい加減援軍がほしい。
そう思っていると、森の中からオークが10体単位で現れ始める。
「! まだいるの?!」
10匹のオークは、咆哮を上げ外壁に向かって突進してきた。
そして、さらに姿を現したオークたちは、
あの丸太をまとめて作った『破城槌』を持っていたのだ。
「向かってくるオークを何とかして、破城槌を壊さないと……」
アビゲイルは、全速力で突進してくるオーク10匹に向けて、
【ウィンドカッター】
風の刃をオークの足に向けて放ち、走れなくさせる。
『ブギャ!』
突進してくるオークの足を切り、1匹コケさせることができると、
一緒に突進してきたオークの何匹かを一緒に倒すことができた。
だが、転ばせることのできなかったオークは、
勢いの付いたまま外壁にぶつかり、衝撃が走った。
衝撃は、外壁全体に伝わり、一部でひびを入れ、
衝撃を加えたところはある程度崩すことに成功した。
地震のようなぐらつきに、倒れるアビゲイル。
「くっ、なんて衝撃なの?!」
アビゲイルは、すぐに立ち上がりオークたちに攻撃をしていく。
それでも、次々と森の中から出てくるオークに対応はできなかった。
そこへ、ようやく援軍となるオリビアたちが外壁の上に現れた。
「アビゲイルさん、お待たせしました!」
「遅い! 外壁の外のオークを倒して!」
「わかったわ、すぐに攻撃開始!!」
「「「はい!」」」
俺と西条さん、それに川島さんも魔法に魔術でオークたちを攻撃していく。
外壁の外には、たくさんのオークが姿を現していたが、
まだまだ、森の中からオークが出てきていた。
そして俺は、先頭のオークたちが持っているものに目がいく。
「あ、あれ! あれって『攻城戦兵器』ですか?!」
俺の声に反応したみんなが、俺の指さした方向を見て驚く。
「……あれは『破城槌』ね。
オークにあんな知恵があったなんて、初めて知ったわ」
【ファイアーボール】
アビゲイルさんが放った炎の球体が、オークの持っていた破城槌に当たり、
そのまま燃やしてしまう。
また、破城杖の周りにいたオークも、火傷を負って怒りをあらわにした。
『ブガアァァ!』
そして怒りの感情のまま、外壁に突進していく。
だが、それを黙って見過ごす俺たちではない。
次々と放たれる魔術や魔法で、突進するオークが次々と倒されていく。
そしていつに、外壁にたどり着く前に突進するオークを仕留め終えた。
俺たちは、ホッとしたのもつかの間、
すぐにアビゲイルさんの声で現実に戻された。
「まだオークはいるんだ、気を抜いている時間はないよ!」
そうでした、森からはオークが次々と現れているし、
外壁にたどり着いているオークは、持っていたこん棒で攻撃し続けている。
援軍が来るまで、休んでいる時間などないのだ。
俺たちは再び気合を入れて、オークを攻撃していく。
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