第34話 オーク防衛戦 1
レッドオーガの咆哮とともに、オークたちの侵攻は始まった。
ムルナの町の東側には、馬車を横倒しにした障害物を置き、
その周りにある程度の罠を仕掛け、空堀を外壁周りに仕掛けている。
進撃してくるオークたちが、罠にかかり、障害物にて止まり、
空堀に落ちるタイミングで、外壁の上から魔術師や弓使いが、
遠距離攻撃を仕掛けるのだ。
それは面白いように倒していけるが、ある程度倒すと、
罠は無くなり、障害物は破壊され、空堀はオークの死体で埋まり、
300ほどを倒したところで、足止めにもならなくなっていた。
だが、そのタイミングで町の北側と南側から冒険者たち直接攻撃組が、
オークたちに襲い掛かった。
『ウオオオオオォォォ~!!!』
冒険者たちの叫びが辺りに響きと同時に、オークたちもまた咆哮を上げ、
攻めてくる冒険者たちに襲い掛かる。
『ブオオオオォォォ~!!!!』
オークたちが北側と南側に別れて、
攻めてくる冒険者に戦いを挑もうとしたタイミングで、
外壁の上から弓使い達が、オークを矢で射抜いていく。
「いいか、オークの頭を狙え!
一撃でオークを仕留めるぐらいの気持ちで行かないと、外してしまうぞ!
足止めや冒険者たちや騎士、そして兵士の支援は魔術師たちがしてくれる!」
外壁の上で、戦う弓使い達に騎士の1人が叫んでいる。
その周りには弓兵が、外壁の下で襲いかかっているオークめがけて、
弓を弾いていた。
さらに、魔力切れを起こした魔術師たちは、外壁の端で休息をとっている。
戦いが始まって1時間もたっていないのに、すでにそこは戦場と化していた。
戦いは始まったばかりだ。
これから何があるか分からないし、
レッドオーガやジェネラルもまだ動いてはいないのだから……
オークとの戦闘が開始されていたころ、北のラルガ村でも戦い始まっていた。
拡張した東側の外壁に、ふらふらとオークが現れ始めたのだ。
まるで何かに操られてこの村に来たような足取りだったが、
いざ、村の外壁を認識すると、
オークたちは咆哮をあげて、村の外壁に攻めてきた。
『ブオオオオォォォ~!!』
そして、その方向は村全体に響き渡った。
「オリビア先生、あの声はオークですか?!」
俺たちは、川島さんたちとともに避難してきた人たちの整理をしていると、
いきなり聞こえてきた叫びに、反応した。
「わたくしたちも行きますわよ!」
そういうとオリビア先生はすぐに東側へ走って行く。
その後を俺と西条さん、そして川島さんが追いかけた。
村の東側から攻めてきたオークは、外壁に向かって突撃してくる。
その突進力はバカにしたものではなく、
一撃で外壁にひびを入れることに成功した。
さらにもう一度突撃をしようとしたとき、外壁の上から攻撃される。
『ブガアアァァ!!』
数体のオークが死に、外壁の上に視線を向ければ、
そこには一人の人間が、魔術を放ち続けている。
アビゲイルは、外壁の上から森を警戒していると、
次々とオークが現れ始めたのを目撃する。
そして、すぐに外壁を降り下で待機していた村人に伝令を任せた。
「森からオークが現れた、村長に伝令をお願いできる?!」
「わ、分かりました! すぐに行ってきます」
伝令の村人が馬に乗り、村長のもとへ走って行ったとき、
森からオークの咆哮が響き渡った。
その咆哮は、外壁を挟んでいても耳をふさがないといけないほど、
うるさいもので、アビゲイルにとっては不快なものでしかなかった。
「あ~、うるさいっ!」
両手で耳をふさぎながら、アビゲイルは叫んだ。
そして、その不快のもとであるオークを討伐しようと、
外壁を登ろうとしたとき、衝撃がはしりその場に座り込んだ。
「何、今の衝撃は!
外壁の向こうから来たようだけど……」
すぐに走って外壁の上に上ると、アビゲイルは見えてしまった。
外壁の外側にオークの大群が現れていたのを……
「何、この数……」
そこには、数多くのオークが姿を現し、ひしめきあっている。
また、外壁側には森の木で作った大きな杭のようなもので、
6匹ほどのオークが外壁に体当たりしている。
「さっきの衝撃はあれか……
ただのオークが破城槌とは、信じられん」
さらに外壁に攻撃を仕掛けようとしたところを、
アビゲイルはオークに向けて魔術を放っていく。
【ファイアーボール】
火の魔術でつくりだした炎の球体を、破城槌を持つオークめがけて放つ。
炎の球体は、破城槌の中心に当たり、
木でできた破城槌は勿論、それを持っていたオークにもダメージを与える。
「仕留め切れないか!」
オークは火に包まれ暴れているが、破城槌は破壊することができた。
再びアビゲイルは呪文を唱え、オークに止めを刺していく。
【ファイアーランス】
オーク1体1体に、炎の槍を放ち倒していく。
外壁側にいたオーク6体は、炎に焼かれ魔石を残して消し炭になっていた。
「……魔力をこめすぎた?」
これから続くオークとの戦いを想像しながら、
魔力を節約していこうと反省し、
攻めてくるオークに向かって呪文を唱えていく。
オリビアたちが到着し、援軍が来ることを願って……
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




