閑話3 異世界の女子高生
ムルナの町の東に広がる森の中を、私たちのパーティーは進む。
オークが大規模な集落を造ったらしくて、危険だからという理由で、
私たち冒険者が集められ、オークを討伐していくんだ。
私の名前は、大沢美琴。
いまだ汚れを知らぬ、17歳の女子高生……いえ、元女子高生。
今は槍を持って、軽鎧を着て、仲間と森の中を獲物を求めて歩いている。
………変われば変わるものだね。
始まりは、部活の帰り。
薙刀部という珍しい部に所属していた私は、
この日も同じ部活仲間の吉沢英里佳―あだ名はエリちゃん―と一緒に、
更衣室で着替え終えると、いきなり白い空間に飛ばされる。
始めは訳が分からず、周りにいたエリちゃんや他の人たちに聞いたりしたが、
周りの人も分からず天使の女性が出てくるまで、騒いでしまった。
そして、天使の女性にもう地球に、日本に帰れないと聴くと、
何故か冷静になれて、周りが見えてきた。
今考えれば、あの時冷静になれたのは天使の女性が何かしたのだろうと分かる。
だって、そうしなければいけないほど私はパニクっていたのだと思う。
周りには私の他に、エリちゃん、
薙刀部の顧問の十条先生―十条早織 29歳独身―、
あと同じクラスの西村哲也―私はテツ君って呼んでる―、
他には、知らないおじさんが2人とおばあさんが1人いた。
そこで、私たちが異世界へ行くことや異世界での注意など、
またスキルや魔法とか教えてもらったんだけど、
要するにゲームのファンタジーな世界なんだと、私は理解した。
それからスキル選びは苦労したな~
特に、おばあさんが何度も天使に聞いてたり、
おじさんたちは、もっと増やせないかとわがまま言ってたな……
で、ようやくスキルも決まり私たちは、異世界へ飛ばされたんだけど、
白い空間で一緒だったエリちゃんとテツ君以外、
同じ場所に送られなかった。
私たちと同じ場所に送られたのが、おじさんが4人に、
2人の子供連れの女性、そして、クラスメイトの男子2人の合計12人。
それから、いろいろありながら町へとどうにか到着して、
そこで冒険者登録することに。
実は、この冒険者登録は身分証明と同時に、家族などを探す際に役立つと、
白い空間で天使の女性に聞いていたんだ。
何でも、ギルドは大陸中にあり、家族の安否を確認するのに、
役立つから必ず、どこかのギルドに所属するように言われていたのだ。
でも、この話、おじさんは聞いてなかったって言っていたから、
天使たちの気まぐれで教えてくれる情報なのかも。
ああ、おじさんっていうのは、
同じ場所に送られたおじさん4人のうちの1人で、
町に着くまで、ペットボトルの水や炭酸飲料をくれた、白石耕太さんのこと。
おじさんはスキルの実験だって言ってたけど、
ホントは優しい人だってわかっちゃったもんね。
……話がそれたけど、冒険者登録した私たちは分かれて生きていくことに。
もしどこかで出会ったら声をかけようと約束して、分かれたんだ。
まあ、さっそくエリちゃんとしばらく一緒にいることにしたんだけどね。
それから、宿を取り、私たちを仲間にしてくれる冒険者パーティーを探し、
装備を相談したり、いろいろと冒険者としての勉強をしていった。
二、三日して、エリちゃんに、
コトミは順応性が早いね~と羨ましがられたんだけど、
私は一生懸命生きているだけだよ?
エリちゃんと同じように、早く家族と再会したいし、
白い空間で一緒だったあのおばあちゃん、気になるんだよね~
………心配性なのかな?
そしてある日、パーティー仲間のニーグからある依頼のことを聞いたの。
それが『オークの大規模集落討伐依頼』
他のパーティーメンバーはやる気になっていたけど、
私とエリちゃんは、少し不安だったんだよね。
そんな不安を感じとったのか、ニーグが仲間を増やすって言ってきた。
今、私たちのパーティーは5人、この人数で依頼を完遂しているんだから、
いらないのではないか?という仲間の意見を無視して3人増やした。
仲間の魔術師のルーリアにニーグは怒られていたけど、
その3人を紹介されて、私とエリちゃんは嬉しかったよ!
「エリちゃん! コトちゃん!」
そう呼ばれて、私たち5人は抱き合い涙を流した。
なぜなら、ニーグが連れてきた人たちは、私たちのクラスメイトで友達の、
相坂響子、岡田咲、本村美香だったからだ。
「キョウちゃん、サキちゃん、ミカちゃん………」
「良かった………みんな無事で……良かった………」
その後は、5人で泣きながら再会を喜び、無事を喜び、抱きしめ合った。
しかも、冒険者ギルドに併設している食堂で……
今、思えば顔から火が吹きそうなほど恥ずかしい行動だったけど、
あの時はしょうがなかった……
ただ、あの後冷静になって家族との再会とかを考えたら、
………どうなるのかな~
お母さんとお姉ちゃんは泣きそうだし……
いや、案外お父さんが一番泣きそうな気がする……
「コトちゃん、考え事してないで集中して?!
ニーグさんがこっちを睨んでいるんだから……」
「ご、ごめんエリちゃん」
「もう、コトちゃんは相変わらず集中力が続かないね~」
「む、キョウちゃんに言われたくないぞ~」
「ほら、もうオークの集落のテリトリーに入っているんだから、
集中して、警戒して!」
「「はい、サキちゃん」」
私は槍を構え、オーク襲来、もしくはオーク発見に備える。
オークがいつ現れてもいいように『身体強化』のスキルも準備しておこう。
こうして私の異世界物語はつむがれていくんだ。
いつか家族との再会や、恋人との恋愛に結婚。
そして………
そんなことを考えて、またエリちゃんに怒られた。
反省、反省……
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




