第24話 北の村へ
教会から魔術師ギルドへ向かう途中に、冒険者ギルドがあるのだが、
俺がそこを通り掛かると、
ギルドの入り口辺りまで、すごい人だかりができていた。
「何かあったのか?」
不思議に思いながら、冒険者ギルドを通り過ぎようとしたとき、
人混みの一番後ろにいた女性に声をかけられた。
「あ、おじさん!」
手を振り、俺が気付いたところで側に走ってきたのは、
草原で別れた冒険者のミコトだ。
「大変だよ、おじさん。
あの森、進入禁止になったってギルドで大騒ぎだよ」
「誰も入れなくなったの?」
「そうなの、何でも、オークの大規模な集落が見つかったからって」
そうか、オークの大規模な集落か……
ん、だとするなら…
「その、オークの集落の討伐依頼が出たんじゃないのか?」
「よくわかるね、今、その討伐依頼の受付をしているんだよ。
それで、あの騒ぎなんだよね~」
ミコトが、ギルドの入り口辺りまであふれる冒険者を眺めながら、
ため息をついている。
「ミコトさんは、討伐依頼を受けるの?」
「私? 私は、私の所属しているパーティーが参加するから、
討伐依頼を受けることになるよ」
パーティー単位での参加か……
それなら大丈夫なのかな?
「気をつけてね?」
「命の危険はないよ、うちのリーダー強いもん!」
う~ん、絶対ってことはないんだけど、
他にも参加者はいるみたいだし、大丈夫かな……
「あ、リーダーが呼んでる。
それじゃあおじさん、またね~」
「ああ」
お互い手を振り、別れていく。
ミコトは、リーダーらしき人のもとへ……
って、リーダーって女の人なのか?
強そうには見えない美人だけど、装備品とかはベテランの感じがあるな。
俺もその場を離れ、魔術師ギルドへ向かう。
しかし、冒険者ギルドであの騒ぎ、
もしかすると、魔術師ギルドでも騒ぎになっているのかな?
俺はワクワクしながら、魔術師ギルドに到着するが、
ギルド入り口は、いつもの通り閑散としていた。
そして、ギルドに入っても閑散としているのは変わらず、
いつもよりは少しだけ人が多いな、というぐらいだった。
俺はガッカリしながら、掲示板の正面にいるオリビア先生のもとに行く。
「……おはようございます、オリビア先生」
オリビア先生は、掲示板から視線を俺に移し挨拶をしてくれた。
「おはよう。
……どうしたの? 何か元気がないようだけど」
「何というか、肩透かしを受けたみたいで……」
「肩透かし………ああ、あの冒険者ギルドの騒ぎね?」
流石にオリビア先生は、すぐに原因が分かったようだ。
先生も、冒険者ギルドを見てきたのかな?
「ええ、こことの差がすごくて……」
「……あのね、そんなこと当然でしょう?
魔術師や魔法使いは、本来パーティーを組んで活動しているのよ?
ソロで活動している魔術師や魔法使いなんて、見たことないわよ」
……あ、そうか。
魔術師や魔法使い単体で、討伐依頼とかは受けないんだよな。
採取依頼でも、採取の最中に周りを気にしていないと、
この間のブルウルフの件みたいに襲われるからか……
「だから、魔術師や魔法使いがここで依頼を受けることは、
あまりないのよ。
ここで依頼を受けるとしたら、
休みの日で、簡単なものを受けるときとか、
パーティーに欠員が出て、仲間を探しているために休んでいる時とか、
旅の途中の資金稼ぎとかかしらね」
「1人で活躍する人ってめずらしいんですね……」
「まず、いないと思った方がいいわね。
それに、今回の討伐依頼は冒険者ギルドで受け付けているし、
もし単独の魔術師や魔法使いが受けるなら、
ここじゃなくて冒険者ギルドへ行っているわよ」
なるほど、ここで受付していないことも、人が少ない原因なのか……
「オリビア先生は、討伐に参加しないのですか?」
「しないわね。
それに、わたくしは今、昇級依頼の最中ですもの。
受けている依頼を放り出して、別の依頼は受けないわよ」
そういえば、俺に魔術や魔法を教えてくれる先生って、
ギルドからの昇級依頼でしたね……
「そんなことより、今日から森に入れない影響で、
あの草原も使えなくなったの。
だから、今日から場所を移します。
それと、これからは彼女たちと合同になるから」
そう言って、オリビア先生は右側を指さすと、
そこには西条さん親子と、西条さんたちの先生のアビゲイルさんもいた。
俺が4人に会釈をすると、西条さんたちも会釈をし、
アビゲイルさんは手を振ってくれた。
「合同はいいですけど、どこへ場所を移動するんですか?」
「場所は、この町の北にある村『ブルラ村』よ」
ブルラ村といえば、レナ達の村だな。
確か、奴隷商のジルバさんの話では豊かな村らしいが、
今年は、事情があって税金を納められなかったとか。
「ブルラ村で、魔術の練習ですか?」
「違うわよ。
ブルラ村で農作物を荒らした犯人捜しの依頼を受けたのよ。
その依頼には、人数がほしかったから彼女たちを誘ったの。
そしたら、いい経験になるとかで承諾してくれたのよ」
いい経験か……
「ブルウルフの時のようなことは、無いですよね?」
「う~ん、分からないけど、
あんな魔物がしょっちゅう出てくるわけもないし、大丈夫でしょう」
農作物を荒らした犯人か……
まさか、オークが関わってはいないだろうな……
北の村だし、オークとは無関係だろう……
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




