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日本人が全員異世界へ転移させられました  作者: 光晴さん


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第23話 奴隷商人




町の外壁付近で、昼食を食べていたはずなのに、

何故か、俺の前にいる女の子たち3人は泣いていたが、

10分ほどでようやく泣き止んでくれた。


俺は、女の子達が食べ終えた弁当の入れ物を送還していく。

そして、3人に木のコップに入った水を渡すと美味しそうに飲んでくれる。


「……落ち着いたか?」


飲み終えた女の子たちに声をかけると、恥ずかしそうに頷いてくれた。


「まずは、名前を教えてくれるか?」


3人で顔を合わせると、一番最初に俺の弁当を見ていた女の子が、

名前を教えてくれる。


「私は、レナといいます。 12歳です」


「私、ネール。 8歳です」


「私は、ロナ。 同じく8歳です」


ネールとロナは、俯いて名前を答えてくれた。

3人の名前を知った俺は、これからどうしようかと考えているところに、

外壁にそってこちらに来る、体つきののいい冒険者という男が2人。


その2人を引き連れて普通の青年が現れた。

そして、青年は女の子たちを見つけてホッとしたようだ。


「よかった、3人とも見つかって」


その声に、レナ達が肩を縮めるように驚いている。

俺はレナ達の反応を見て、青年たちを見ると、

青年の両脇の冒険者みたいな男たちが、俺を警戒しだした。


青年は、俺を警戒することなく近づいてきた。


「すみません、その子たちこちらに渡してもらえますか?」


レナ達は、すぐに俺の後ろに隠れて俺の服を握りしめてる。

困った俺は、とりあえず自分の名前を言ってみた。


「あ~、俺はコータといいますが、あなたは?」


俺の態度に、ますます冒険者みたいな男たちは睨んでくるが、

青年は、俺にも丁寧に自己紹介をしてくれた。


「これは失礼を、僕はこのムルナの町で、

奴隷商をしていますジルバというものです。

そこの3人は、北にある『ブルラ村』から買い取ってきたんです」


俺はジルバの話を聞いて、レナ達を見て「そうなの?」と聞いてみた。


「うん、私たちの村は税金が納められなくて、その代わりに、

私たちが売られたの……」


税金か……

ギルド所属なら、税金は免除だからな。

その分、いろいろと制約もあるけど……


俺は、ジルバを見るとある提案を口にする。


「この3人、いくらだ?」


ジルバは、目を細め真剣な顔で答えてくる。


「その子たちを、購入しようと?」


「ああ」



……少しの間俺とジルバで睨みあっていると、

突如、ジルバが笑い出した。


「………プフッ、アハハハハハ!」


「……何がおかしいんだ?」


「いや、すみません。

どうやら、あなたもそこの3人も何か勘違いをしているのではと考えたら、

可笑しくなってしまいましてね?」


俺やレナ達も、ジルバの態度に肩の力が抜けてしまった。

それに、両脇の2人もすでに警戒を解いていた。


「いや、申し訳ない。

まず言っておきますが、僕はそこの3人を奴隷として

扱うわけではありませんよ?」


「ん? 違うのか?

でもさっき、売られたって言っていたが……」


俺はレナを指さして、ジルバに答えを求めると、


「確かに、北の村から借金のかたに連れてきましたが、

奴隷にするつもりはありません。

それに、来年の今頃はその子たちを村が買い戻しているでしょうから……」


「……と言うことは、この子たちは担保ということか?」


「ええ、そうです。

北の村は、今回たまたま税金が払えなかっただけで、

いつもは余裕をもって払える豊かな村なんですよ?」


「そうなのか……

なら、この子たちはこの後どうなるんだ?」


「その子たちは、この町の孤児院に預けられます。

そして、来年、お金を返してもらって北の村に帰るといったところですね」


俺は、レナ達を見ると「だ、そうだぞ?」と声をかけると、

レナは俺を見て頷き、ネールとロナの手を取って、

ジルバに向かって歩いて行く。


その後ろ姿は不安いっぱいのように見えたが、

今の俺にできることは何もない。

レナ達が孤児院に預けられるのであれば、今度会いに行くのもいいかもな。


そんなことを思いながら、レナ達がいなくなるまで見送った。




さて、いろいろとあったが俺は再び魔術の練習に励み、

夕方になったころ、町へ帰っていった。


町に入り自分の家に戻る道中、夕方の町の様子を見ながら、

俺は奴隷を購入することもいずれ考えないとダメかな?と、

悶々と考えていた。




次の日、朝食を済ませて魔術師ギルドへの道中で教会を発見。

こんな所に教会がと思いながら、教会の前を通ると声をかけられた。


「おじさん!」


その声に俺が振り向くと、レナが笑顔で挨拶してくれる。


「おはよう」


「おはよう、レナ。

教会の孤児院に預けられたんだな」


「うん、ここには、私たちと同じように預けられた子が、

何人かいるんだよ。

それに、教会の孤児院は信用があるからね」


「そうか」


「ねえ、おじさん。

今度、お土産もって遊びに来てよ。

あの『唐揚げ』なら、みんなも喜ぶからさ」


「……そうだな、今度遊びにいくよ」


「約束ね!」


「ああ、約束な」


俺とレナは、そんな会話をして別れた。

教会を離れていく俺を、手を振って見送ってくれるレナは、

笑顔いっぱいだった気がする。


今月中には、お土産の『唐揚げ』をもって遊びに行ってみるかな……








読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。


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