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日本人が全員異世界へ転移させられました  作者: 光晴さん


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第19話 戦いと恐怖




草原から森に入るとすぐに木々が日の光をさえぎって、

薄暗くなる。

俺とオリビア先生は連れ立って、森の中を散策中だ。


「そこ、あなたの足元にあるのが、

ポーションの材料の1つになっている薬草よ」


オリビア先生が、俺の足元を指さしながら指摘する。

俺は自分の足元を見ながら、これが薬草かと手で触れてみる。


草原でオリビア先生に風魔術の『ウインドカッター』を教えてもらった後、

残りの2つもしっかりと教えてもらえた。

無属性魔術の『シールド』と光魔術の『ヒール』だ。


『シールド』は、術者の周りに1つの透明な盾を出現させ、

それを操って敵からの攻撃を防ぐものだ。

もう1つの『ヒール』は治癒魔術で、傷の回復を主にしている。


オリビア先生曰く、

『治癒魔法や治癒魔術にはいくつかの種類があって、

傷を治すものや病気を治すもの、さらには欠損を治すものまであるのよ』と。


この3つを教えてもらい、10分ほど練習をして俺たちは森に入ってきた。



「オリビア先生、それで、先生が受けた依頼というのは?」


「『ヤルブ』という薬草の採取よ」


俺が分からないという顔をしていたのだろう、

オリビア先生が説明をしてくれた。


「『ヤルブ』という薬草はね、

体力回復ポーションの材料の1つなのよ。

回復ポーションも治癒魔法や治癒魔術同様に種類があるわ」


その時、オリビア先生はおもむろにしゃがみ込み草を採取すると、

その草を俺に見せてくれた。


「ほら、これが『ヤルブ』という薬草。

さっき、あなたの足元にあった薬草は『レブル』といって、

傷回復ポーションの材料になるわね」


俺が持っていた薬草『レブル』と、

オリビア先生が渡してくれた薬草『ヤルブ』を見比べると違いが分かる。


『ヤルブ』はタンポポの葉っぱのような形をしていて、

『レルブ』は、ヨモギのような葉っぱになっている。

同じ薬草なのに、効果が違うんだなと感心していると、


俺の空間把握に敵が感知された。


「オリビア先生、敵が近くにいます」


そう言って先生の方を見ると、すでに周囲を気にしている様子。


「ええ、気づいています。

……3体……これは、ブルウルフのようね」


ブルウルフ、狼の姿をした魔物の一種でこの辺りの森に生息している。

単独で生きていくことはなく、常に群れで行動する。

狩りをするときは、3匹から5匹の組に分かれて獲物を狩るそうだ。


ちなみに、ブルウルフの毛皮は結構な値段で売れるが、

肉は硬く人気がないため安い値段で買い取られる。

そのため、ブルウルフを仕留めたら

冒険者ギルドで丸ごと買い取ってもらうように持っていくそうだ。


解体費込みでも、いい値段で買い取ってくれるらしい。


「ブルウルフが3体?

オリビア先生、俺には5体いるように感じるんですけど……」


「! すぐに『シールド』を展開しなさい!

正面から3体、後ろから2体近づいてきているわ……」


オリビア先生の顔が、苦虫を噛み潰したように歪む。

おそらく自分の失態に後悔しているのだろう。

だが、ブルウルフは、じりじりと近づいてきている。


俺とオリビア先生は、すぐに『シールド』を展開、

すると、タワーシールドのような透明のものが2つ、

俺と先生の周りに現れた。



ここは森の中、そして、俺の周りには木々が邪魔して

視界が悪くなっている。

ブルウルフの動きは、空間把握でわかるものの、

どこから襲ってくるのかという恐怖がある。


そんな緊張している時、1匹のブルウルフが俺と先生の正面に現れた。


「……大きいわね、体長2メートルを超えているわ」


確かに、俺の目にもライオンか?と疑いたくなる狼が現れた。

デカイ、とにかく俺の知っている狼とは大きさが桁違いだ。

俺は、ビビってしまった。


こんな狼があと4体もいると分かった時点で……


「しっかりしなさい!

それと、あなたは自分の身を守ることを最優先にすること、いいわね?」


オリビア先生の声で、俺の震えは止まった。

多分、この時の俺の顔は情けない顔になっていたのだろう、

オリビア先生は優しい声で、俺を励ましてくれた。


「大丈夫よ、あなたはわたくしの生徒。

あなたのことはわたくしが守って見せます!

それに、この程度のブルウルフなど、わたくしの敵ではありませんわ」


そういうと、先生は素早く俺と自分に魔術をかけていた。

残念ながら俺には呪文が聞こえなかったが、

おそらく能力向上の魔術だろう。


そして、正面のブルウルフが3体現れた時、後方の2体が襲い掛かってきた!


俺はとっさに後ろを向いて、

襲いかかってきたブルウルフの口を開けた牙を見て、

前足の攻撃を受けそうになった時、隣のオリビア先生が呪文を唱える。


【シャドウバインド】


その呪文を唱えた直後、

ブルウルフたち自身の影から何本もの黒く太い紐が伸びて、

影の持ち主を絡めとって動けなくしていく。


俺に飛び掛かってきたブルウルフも、影から伸びた黒い紐に絡まれ、

攻撃が当たることなく寸での所で止まった、かと思えば、

黒い紐に引っぱられ地面に押し付けられていた。



【アイスニードル】


再びオリビア先生が呪文を唱えると、

地面に黒い紐で押さえつけられているブルウルフの後頭部に、

氷のナイフが出現し、深々と差し込まれていった。


ブルウルフは、刺さった直後痙攣し、そして動かなくなっていった。

オリビア先生が、ブルウルフを倒したのだ。



「大丈夫です?」


オリビア先生がかけてくれた声で、俺は力なくその場に崩れた。

……これが魔物との戦い。

俺の目の前で、死んでいるブルウルフの死体を見て、

改めて、ここが日本じゃなく異世界であることを認識した。








読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。


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