閑話2 お嬢様の悩み
「ふぅ……」
私のお仕えしているお嬢様であるオリビア・ロビート様は、
先ほどから何度も溜息を吐かれておいでです。
手には、私の淹れた紅茶の入ったカップを持ったまま、
飲むこともしないで考え事をしているのです。
おかげで、紅茶がすっかり冷めてしまいました。
先ほど、魔術師ギルドからお帰りになられてからこの調子、
何かあったのでしょうか?
ここは、オリビアお嬢様にお仕えする私、リビエラの役目。
お悩みがあるのでしたら、ご相談ぐらいはできるはずです。
「お嬢様、魔術師ギルドで何かありましたか?」
考え事をして、どこか上の空だったお嬢様が声をかけた私を見ます。
そこで、ようやく考え事から戻ってこられました。
「リビエラ……」
「何かお悩みがあるのでしたら、私に言ってくださいませ。
お嬢様のお力になれるよう努めますので……」
私の言葉に、お嬢様は少し笑顔になり訳を話してくださいました。
「……そうね、リビエラ聴いてくれる?」
「はい!」
「実は、魔術師ギルドで昇級試験を受けてみないかと話があったの」
何と、お嬢様に昇級のお話が!
毎日あれほど勉強されていたのです、
昇給の話があってもおかしくはないでしょう。
寧ろ、遅いぐらいです。
「おめでとうございます、お嬢様」
「ありがとうリビエラ。
でもね、その昇級試験が問題なのよ……」
「どのような問題が?」
「私に、平民の魔術の先生をしてほしいというのよ。
同じ貴族の先生なら分かるのだけど、平民の先生となるとね……」
なるほど、下地ができていない平民の先生となると一から教えないといけない。
一から教えるということは、時間がかかるということ。
時間がかかるということは、お嬢様の時間が無くなるということですわね……
将来は、宮廷魔術師を目指されるお嬢様。
それまでにたくさんすることがあるのに、
こんなことに時間をとられてはとお考えなのでしょう。
しかし!
「でもお嬢様、この試験を評価以上にこなせれば、
ギルドの評判も良くなりましょう。
そうなれば、お嬢様の将来にもプラスになると思います」
「……そうね、そう考えてもいいわね」
「お嬢様、将来宮廷魔術師を目指されているのなら、
ギルドでの評価は宮廷魔術師へ近道と思われますよ」
貴族の家に生まれ、将来はどこかの貴族の家に嫁ぐのが嫌で、
宮廷魔術師の道を歩み始められたお嬢様。
ロビート子爵家を継がれるお兄様たちは、お嬢様を可愛がってはくれず、
あまつさえ、政争の道具として見ておいでのようでした。
ご主人様も、お嬢様には興味を持たれていませんでしたね……
「わかったわ、この試験を受けて昇級してみせるわ。
相談に乗ってくれてありがとうリビエラ」
……ああ、お嬢様の笑顔は素敵です。
でも、平民の魔術の先生ですか……
今まで平民とあまり接触やお話をしたことはありませんが、
お嬢様なら、この困難に打ち勝ち昇級できるでしょう。
お嬢様、このリビエラ、影から応援していますよ。
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




