第14話 初歩の初歩の魔法
俺は、自分のステータスカードで確認してみる。
「ステータス」
名前 白石 耕太
年齢 42歳
職業 冒険者 魔術師見習い
レベル 1
生命力 210
魔力 2000
スキル 異世界言語 アイテムボックス 鑑定
召喚術[神] 空間魔法 不老
魔力操作
称号
確かに、スキルに『魔力操作』が記入されている。
これで、次の段階に進めるというわけだ。
本には、魔力操作を覚えたらからの続きがある。
『魔力操作を覚えたら、次は、生活魔法を覚えよう』
……生活魔法。
本によれば、まず『着火』…これは所謂、火種だ。
生活するうえで、必要不可欠のものであり、旅には欠かせない魔法となる。
次が『湧き水』…これは、旅や野営などで、水の心配がなくなる。
また生活するうえでも必要なもので、
水道設備の無いこの世界では必須の魔法だろう。
次に『クリーン』…これは、服についた汚れや果ては、部屋の掃除に役立つ。
商人ギルドの人が家の掃除に使ったのは、この魔法だろう。
次に『ホール』…これは、30センチ~1メートルの穴をあける魔法だ。
野営なら、簡易のトイレになったりゴミの穴になったりする。
これまた生活にも必要なものなのだろう。
次が『ライト』…これは、明かりの魔法だな。
最後が『ナイト』…これは、暗闇を作る魔法だ。
自分を中心に、半径1メートルぐらいをドーナツ状に囲む。
トイレの時などに、周りの目から隠してくれる魔法だ。
……ここまで、この本に書かれている生活魔法を読んでみて、
気づいた方もいるのではないだろうか?
この生活魔法は、それぞれの属性の魔法で、
一番簡単な初歩の初歩を集めたものなのだ。
『着火』は『ファイアー』の『火魔法』
『湧き水』は『ウォーター』の『水魔法』
『クリーン』は風魔法…になるのかな?
『ホール』は、『土魔法』
『ライト』は、『光魔法』
『ナイト』は、『闇魔法』
となり、初歩の初歩だけでも全属性を使おうとは、贅沢な魔法だ。
でも、この生活魔法は、この本にも書いてあるが、
生活するうえで必要な魔法であり、
何をするにも、どんな職業に就くにも、覚えておいて損はないのだとか。
「損がないなら、覚えておかないとな……」
俺は、本の書いてある通りに、生活魔法を練習する。
そして、一通り練習が終わると、
ステータスのスキル欄に、『生活魔法』と記載された。
「……生活魔法を3回ずつ使っただけで、記載されるとはな」
本当に安上がりな魔法だった。
でも、この生活魔法を覚えるところまでが、
この本に書かれているところだった。
後は、誰かの弟子になるなり、先生に教えてもらうように書かれている。
「これで終わりか……
2日後には、魔術師ギルドで先生を紹介してくれるそうだから、
夕食までは、本屋で買ってきた本を読んでおくか」
俺はアイテムボックスから、この大陸の歴史などの本を取り出し、
夕食の時間まで、読みふけることにした。
次の日は、朝食を何にしようかと考えていると、
玄関がノックされる。
「……ドアをノックするだけでも、結構響くな。
玄関に近いリビングにいるだけでも、来客がすぐにわかる……」
感心しながら、玄関のドアを開けると、
そこには、西条さん親子が立っていた。
西条さんは、申し訳なさそうに、
西条さんの姉妹は、母親の後ろに隠れるようにいる。
「おはようございます。
……あの、何かありましたか?」
「おはようございます、白石さん」
「……おはようございます」
「……お、おはよう」
3人が朝の挨拶を返してくれると、西条さんが訪ねてきた理由を話す。
「あの、白石さんも、この本を買いましたよね?」
そう言って見せてくれたのは、昨日まで取り組んでいた準備編の本。
少し必死な西条さんを見て、なんとなく理由が分かった。
とりあえず、俺は、3人を自分の家のリビングに招き入れた。
西条さん親子を、リビングのソファに座らせると、
今日訪ねてきた理由を伺う。
「それで、西条さんたちが訪ねてきたのは、魔力操作のことですか?」
「そ、そうなんです!
私たち親子も、一生懸命探るんですが、いっこうに分からなくて……
最後には二人とも、魔法なんて使えなくていいって……」
俺が、自分が相談しようとした課題を言い当てたことに驚き、
さらに魔力操作の難しさに、娘たちの投げやりな態度に困っているようだ。
でもこれはしょうがないのだろう。
魔力の無い地球から来た俺たち日本人に、
魔力を感じて操れっていうのが、無茶苦茶なのだ。
俺も、召喚術で害のないものを召喚し続けて、
やっと手に入れた魔力操作。
……だけど、目の前で困っている西条さんたちを、
助けない選択肢は俺の中には無い!
「それなら、俺が教えましょうか?
俺は昨日、この『魔力操作』のスキルを手に入れたので、
教えることができますよ?」
西条さんは、驚き、すぐに娘たちと相談を始めた。
俺は、相談している間にキッチンへ移動し、
お盆を棚から取り出すと、4人分のマグカップを並べて、
そこに『コーンスープ』を召喚した。
「ふむ、中身だけでも召喚可能なんだな……」
俺はマグカップを乗せたお盆を慎重に運びながら、
西条さん親子の座るソファの前のテーブルに並べる。
「これ、どうぞ。
朝ということで『コーンスープ』を用意してみました」
西条さん親子は、暖かいマグカップをとると、
それぞれで飲んでいく。
「「「美味しい~」」」
どうやら、気に入ってもらえたようだ。
3人とも笑顔で、コーンスープを飲み干してしまった。
「それで、どうするか決まりました?」
「はい、白石さん、ご教授、お願いします」
「「お願いします」」
西条さん親子は、頭を下げてお願いしてくる。
「はい、わかりました。
なに、きっかけさえ分かれば、後は簡単にできますよ」
そう俺は、笑顔で西条さん親子を安心させるのだった。
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




