第12話 ギルドのお店で
「お客様は、『魔術』と『魔法』の違いをご存じですか?」
店員のいるカウンター側にある魔術書の棚と、魔法書の棚を見ていると、
カウンターの店員の女性に声をかけられた。
「えっと……?」
カウンターを乗り越えて、俺の側に女性店員が来ると、
「初めまして、魔術書、魔法書販売の責任者のルーシーといいます」
「あ、ああ、初めまして、コータです…」
いきなりのことで、動揺してしまったが、よく見れば可愛い店員さんだ。
金髪碧眼で、背は俺より低く、白に赤のワンポイントのイラストが入った、
エプロンをして、側に立っている。
「それで、コータさんは、違いが分かりますか?」
「ああ、確か『魔法』は自然を現したもので、
『魔術』は、人が使いやすいように手を加えたもの、だったかな?」
「う~ん、ちょっと正解にしてあげたいけど、不正解です!
いいですか? 『魔法』は自然の力を形にしたものです。
威力が高く、消費魔力も高い、そのため扱いには注意が必要です。
『魔術』は、人が『魔法』を扱いやすくしたものです。
そのため、使い勝手が良く、いろいろなものへの応用も効きますが、
魔法に比べ威力が落ちます。
『魔法』より『魔術』の方が弱い感じですかね~」
「そ、そうなんですか……」
「ですから、魔術書の方が魔法書よりも多いでしょ?」
ルーシーさんが、魔術書の棚と魔法書の棚を見ながら説明してくれる。
「確かに、魔術書の方が多いですね………ん?
魔術書の棚に、錬金術の本がありますけど?」
「はい、さっきも言いましたが、魔術は応用が効きます。
ですから、いろんな分野で役に立っているんですよ。
錬金術は、魔術を応用した分野の1つになります」
……つまり、錬金術を習うには、まず、魔術を習えってことか。
魔術が、いろんな分野で手助けしている感じなのかな……
「それで、コータさんは、何をお求めに?」
ルーシーさんは、笑顔で俺に聞いてくる。
「えっと、魔法書と魔術書を買いに来たんですが……」
「ふむ、では、コータさんの属性は何ですか?」
「俺は、全属性です」
「全属性とは、すごいですね……
それで、今まで、魔法や魔術を習ったことは?」
「……ないです」
少し呆れたように、俺を見ているルーシーさん。
そして、おもむろに、魔法書の棚で1冊の本を取り、
俺の前に出してくる。
「コータさん、あなたが今、読まなくてはいけない本はこれです!」
ルーシーさんから受け取った本のタイトルが、
『初めての魔法・魔術 [準備編]』
「えっと………」
その本は、他のものより薄く、20ページほどしかなかった。
「いいですか? この本には、コータさんが今、
しておかなければならないことが書かれています。
この本を読んで、しっかり準備をすることです」
「……まずはここから、ですか?」
「そうです! 本当は学校なんかで、
読み書きと一緒に教えてくれるはずなんですけど、
何かの理由で、教えてもらえなかったという人がたまにいますから、
こうして本になっているんです」
……異世界にも学校ってあるんだな……
しかも、基礎の基礎を教えてくれるみたいだ。
「では、その本をください。
その本をマスターしたら、また来ます」
「はい、お待ちしていますね!」
こうして、俺は、ルーシーさんの薦めてくれた本を銀貨1枚で購入し、
魔術師ギルドを後にした。
3日後には、俺に魔法なり、魔術を教えてくれる先生が付くし、
それまでに、基礎だけはマスターしておきたいな……
魔術師ギルドを出て、家に向かって歩いていると、
買い物から帰ってきた西条さんを見かける。
「こんにちは、西条さん」
西条さんは、俺の声を聞いて俺に気づき、挨拶を返してくれる。
「こんにちは、白石さん。
今日は、どちらにいらしたんですか?」
「いえ、魔法を詳しく習おうかと思いましてね、
魔術師ギルドへ行ってきたんですよ」
「あら、魔術師ギルドで魔法を教えてくれるんですか?」
「いいえ、ギルドでは教えてくれませんよ。
ギルドは魔法や魔術を教えてくれる先生を紹介してもらえるんですよ」
「そうなんですか……
あの、その紹介してくれる先生って、私たち親子でも大丈夫ですか?」
「西条さん、魔法とか習いたいんですか?」
「私じゃなくて、娘たちに習わせたいんです。
この世界では、魔法を使うことが当たり前ですからね……」
西条さんは、少し困った顔をしているな。
自分が教えることができないから、困っていたんだろう。
「たぶん、魔術師ギルドに相談に行けばいいと思いますよ。
あそこは、魔法や魔術に関してのギルドですから、
相談すれば、先生を紹介してくれるかもしれません」
「大丈夫ですか?」
「俺も、3日後に先生を紹介してもらえることになりましたから、
大丈夫ですよ」
西条さんは、少し考えて答えを出した。
「ちょっと、今から行ってきます。
まだ、魔術師ギルドは開いていますよね?」
「ギルドは基本24時間開いているみたいですから、
今からでも間に合いますよ」
「では、今から行ってきます」
そういうと、西条さんは、速足でギルドのある方向へ向かっていった。
「………魔術師ギルドの場所、分かるのかな?」
読んでくれてありがとう、次回もよろしくお願いします。




