真実への憎しみ
そう。此処は真実の世界。
皆が真実を述べ真実のみを受け入れそして、真実で構成された世界。
そこの住人の一人が私。正直、うんざりしている。そして私には気になっている場所がある。
そこは嘘の世界。
私が真実の世界にいる限り、真実以外を口に発する事が出来ない。ましてや、自分自身の心をも嘘で誤魔化す事が出来ない。
だが、嘘の世界に行ってはどうだ?
それこそ、未知の世界。この縛られた世界よりかは辛くて苦しい思いをしたって何倍もましだろう。
それは一年前の事だった。
「お母さん、お父さん。今から旅に行って来る。」
そうこれは旅に出る前の話だ。
「ケティー。何処に行くの?」
何処ってこれを言ったら引き止められるじゃないか。
だが、私の口は自分の意思とは裏腹に動いていた。
「ちょっと。嘘の世界に行って来る。」
そう言った後目の前の両親は目を見開き、まるで化け物でもみているかの様な表情をしていた。
「ケティー!何考えてるの!?貴方この子を捕まえて!」
と母は言い部屋からショットガンを持ってきた。だが、母には憎しみの感情は読み取れない。
この人は私を殺す気だ。やはりそうだ。真実に縛られている。だから行動に出てしまう。
だからこの世界が嫌だ。二人共いなくなれば良いのにと思い目を瞑った。
目を開けた。その時激しい憎悪に駆られた。
私は改めて思った。
この世界が嫌だ。