SIDE OF THE EMPRESS 女帝
賢人へ
賢人がこの手紙を読んでいる頃には、お母さんはもう死んでいなくなっているかもしれません。マリアちゃんから話は全部聞きましたよ。初めは信じられませんでしたが、賢人が行方不明の女の子を見つけたと聞かされて、その通りになったので信じることにしました。マリアちゃんは賢人の命が残りわずかだと言っていました。でもお母さんの残りの寿命をあげたら死ぬことはないと言いました。だからお母さんは賢人に残りの命をあげようと思いました。賢人が無事、この手紙を読んでくれていることを祈っています。マリアちゃんは神さまの使いなのかもしれませんね。可愛らしくて、優しくて、とても楽しい女の子です。本当に賢人の命を救うことができるのかまだ分かりませんが、もしも生きてこの手紙を読むことができているのなら、マリアちゃんに感謝を捧げるのですよ。まるで映画のようなお話ですが、お母さんはこれが怖いお話ではないのでホッとしています。大人になった賢人を見ることができないのは残念ですが、奇跡を起こせるのなら、どんなことでも受け入れることができます。賢人は、どうか、自分のためにお母さんが死んでしまったとは思わないでくださいね。お母さんは賢人が生きてくれているだけで嬉しいです。だから賢人のために死ぬことは怖くありません。奇跡が起こるなら、賢人のために死ぬことができてよかったと思っています。




