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タロットゲーム  作者: 灰庭論
第3巻 女帝編
32/60

SIDE OF THE JUSTICE   正義

 生活安全課の業務も地域によって異なります。大都市では少年係が少年課として独立していたり、サイバー犯罪専門の捜査官がいたりすると聞いています。その地域の規模によって人員を適切に配置しているというわけです。

 小牧署の生活安全課には少年係、許認可係、防犯係、相談係、そして刑事課が扱わない犯罪を扱う事件係があります。これだけ業務が多岐にわたると、一見のどかに見える地方でも、業務に追われる毎日が続くというわけですね。

 個人的に最も難しい仕事が児童虐待だと思っています。家の中を土足で踏み込むわけにはいきませんので、自治体との連携が重要になります。適切な方法で仕事をするために、警察官もカウンセリング能力が求められる時代ですので、勉強不足が言い訳にならなのですね。

 試験勉強をする時間が持てない中で勉強を続け、昇進試験では役に立たないと分かっている勉強を優先しなければならず、それだけやっても、たった一度のミスが命取りとなってしまうのです。

 少々愚痴っぽくなりましたが、警察官というのは常に危険と隣り合わせですし、刑事課以外の仕事が市民の方々に認識されているとは思えませんので、少しずつでも私たちの仕事も理解が深まってくれることを願っているのです。

「お待たせしました」

 声を掛けたのは同僚の大ちゃんです。気が休まらない毎日ですが、デスク仕事の合間に彼とコーヒーブレイクすることだけが、リラックスできる唯一の時間です。それと彼がタバコを吸わないのも、私がリラックスできる理由でもあります。

「聞いてきてくれた?」

「はい。もちろん仰せの通りに」

 机の上にお尻を乗せて座る癖は直してもらいたいですが、そこは注意しません。

「さすがだね」

 大ちゃんは業務を振り分ける相談係なので署内で一番顔が広いのです。

「それで自殺の可能性は?」

 一昨日の日曜日の夜に起きた城先生の交通事故について調べてもらいました。

「ありませんね。単独事故です」

「間違いないの?」

「車内から抗ヒスタミンが含まれる薬が発見されているので、おそらくそれを服用して、居眠りを起こして事故ったんだと思います。遺書もありませんし、現場にはブレーキ痕もなかったと言いますから、間違いないと思われます」

 風邪薬も個人によっては強く睡眠が誘発される場合があります。

「司法解剖はしないんだよね?」

「はい。現場の状況で事故と断定しました」

「でもそれだと保険会社は納得しないでしょう?」

「保険会社は関係ありません」

「加入してなかったんだ」

「いえ、生保には入っていました。でも、それが先週の内に解約していたそうですよ」

「そのタイミングで事故を起こしたというの?」

「のようですね」

「無事故無違反のドライバーだよ? そんな人が乗車前に薬を飲むと思う?」

「いつ飲んだかは解剖してみないと分かりませんけど」

「でも単独事故ならその必要はないもんね」

「はい。自殺する理由もありませんし」

 大ちゃんには城先生と一緒に食事をしたことを話していません。しかし、その時の様子を思い出しても、自殺する理由は見当たらないのです。心当たりがあるとするならば、ストーカー被害を匂わせていたくらいですが、それも本人は強く否定していました。

「そもそも日曜日の夜に何の用で出掛けたんだろう?」

「ご両親の話によると日帰りで温泉旅行に行ったという話ですが」

「足取りは調べたの? って、そこまでするはずないか」

「事件性はありませんからね」

「事故現場は西新道よね?」

「前に夜見湖へ一緒に行った時に通った道です」

「ということは洞爺湖温泉かな?」

「そっち方面だと、そこしかありませんね」

「登別や白老じゃないんだ?」

「はあ」

 何に引っ掛かりを覚えているのか、私にも分からないのです。



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