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魂(にくたい)検証

強引に鬼のおっさんに振り回されたせいか、割と気持ちが落ち着いた。

少し前まで、とんでもない情報を詰め込まれて押しつぶされそうだったのに…。

もしかしたら、これを狙って鬼のおっさんが案内を買って出てくれたというのは、俺の考えすぎだろうか・・・。


…まぁいっか、折角頭冷えたんだし。

さて、思わぬ暇な時間が出来てしまったな…普段なら本を読むなり、ゲームするなりして時間を潰すんだが、今はそんな気分にはなれない。(まぁ、ないだろうしな。)

かと言って、あれこれ余計な事を考えても、成るようにしかならないし、俺が悩んでもどうにもならないだろう。


暇をつぶすために、うーむ…どうするかと、結局悩んでいると、自分の綿飴の様な体の事を思い出した。


そうだ、この(からだ)で色々試してみよう。



もちろん、試すと言っても危険な事をするのではない。ちょっとした確認だ。

思えば俺は冥界(ここ)に来てから何にも触れていない。ただ一つ、あの色っぽいお姉さん以外は…。


思わず、あのぶつかった時の感触を思い出して思考が緩む。それに気づき、いかんいかんと気持ちを修正する。





検証その1 物に触れられるか?


俺は、ぐるりと周りを見渡し、手頃の物のが無いかと探すと、掌サイズの置物を見つけた。

クマっぽいような、猪っぽいような不思議な形の調度品だ。

あまり可愛くは無いが実験にちょうどいいので手を伸ばす事にした。


「・・・・」


手がねぇ!!


いや知ってた。しかし、いくらやっても慣れない。元々当たり前のように存在してたモノが無いのだ。

頭で理解していたつもりでも、咄嗟の時や、行動をを起こす時にどうしても健全な身体の感覚が拭えない。


しかたなく、別の手段を講じることにする。

俺はすぐ隣の何も無いスペース、つまりは壁の所まで移動した。





検証その2 壁に当たった場合どうなるか?


「はぁ…気乗りをしないが仕方ない・・・」


気持ちを落ち着かせながら、壁を睨む。そしてゆっくりと前に進んだ。

(からだ)が壁に触れると、そのまますり抜けはせず、形状が少し潰れる程度に留まった。

俺は、それを確認すると、勢いよく壁から離れ、俺の(からだ)はふわっと元の形に戻った。


「はぁ、はぁはぁ…」


予定通り事が運んだ事に、胸をなで下ろす。


ふぅ…予測通りだが、やはり恐怖はあるな。


地面がすり抜けない以上、壁もすり抜けないだろうと予想はしていた。

しかし、確証が無い現状で試すには勇気がいる。ましてや手足がない、(からだ)を庇うことができない…これは保険が無いのと同義だ。

何でもない事柄が魂の消失(死)へと直結するのだ。そう、すり抜けた先に地面が無く、そのまま真っ逆さまって事も…。


ぶるぶるっと魂を振るわせる



壁に触れる時、薄い布を1枚隔てているような感覚があったな…。


「これが、閻魔ちゃんの言っていた魔法力なのかな?」


俺はもう一度、壁に(からだ)を預けてみる事にした。一度検証しているので、今度はあまり怖くはない。


魂がカタチを変え壁に沿って広がっていく。厚みが無くなり表面積が増える。


・・・変な感覚だな…触れているのに触れていない、まるで全身にゴム手袋を着ているようだ。

それに、形もよく変わる、自分が水風船になったみたいだな。


それを想像した時に、勢いよく破れる水風船が頭を過ぎったので、慌てて元の形状に戻し始めた。



結論 

何かに守られてる様な感覚があった。これを魔法力と仮定しよう。

魔法力(これ)がある限り、普通にしてりゃあ消えちまう事も無いだろう…。





検証3 魔法力(これ)を操ってみよう


「ぐぬおぉぉぉぉ・・・ふぬぅぅぅぅううううっぅうううっぅ・・・ちょいやあぁあぁぁああぁあぁあぁああぁぁぁぁ!」



結論 無理


何処にどう力を入れても、何かが変わる気がしねぇ・・・。

某RPGの主人公の真似をしてみたり、「ファイア」とか「サンダー」叫んでみたけどダメだった。

…大体、魔法って何よ?


さて、最後は・・・・




検証4 空を飛ぶ


…実は俺、これできる気がするんだよね…散々魔法できないか試した後だけど。

理由は2つある。

1つ目は体が軽いって事、肉体が無い訳だからその分軽い。

昔どっかの学者が『魂に重さがあるのか』って実験を、やった奴がいたらしいんだ。

その結果、死ぬ前と、死んだあとで体重に数グラムの違いが出たらしい。

つまり、俺の今の体重も数グラムって事になる!!


…随分、眉唾な話だと思うけどね。だけど、肉体があった時よりは、ものすごく軽いってのは間違いないと思う。


そして、もう一つの理由…これはもう、寧ろ飛べると言っても過言ではない。

俺はもう既に『浮いてる』状態なんだよね。


…もちろん存在が浮いてるわけじゃない。

ん?寧ろ存在(魂)が浮いているのか?・・・・あー分かりにくい、地面と魂の間に空間あるって事ね。


以上の事から、飛ぶためのステップはもう何段も超えてると思う。

つまりは後は、意思とこの浮いてる魂に方向性を与えてやれば…飛べる!!!






…と、思ってる時期が私にもありました。


結論から言うとね、魂と地面の間の空間が一切変わんなかった・・・。


これに気づいたのは、少しでも飛んでやろうと部屋中駆けずり回ってる時だった。

途中何箇所かで、ほんの僅かに浮いたり沈んだりしてるのを感じて、希望を持ったんだけど…。

それはただのカーペットの段差だった。


おかしいと思ったんだよね…どうも同じ所でばっかり浮くんだもん…。


要するに、俺は浮いてる訳では無く、地面と一定距離の『空間』が常に存在し続けたおかけで、自由に動き回れただけだった。

どういう原理か分からんが、その見えない『空間』が、魂を支えてくれるおかげで移動できるのだ。言わば、その『空間』足がわりだ。



「あーもう!!・・・・・下手な希望持っちゃったから落胆が大きいよ…」


俺は力なく留まる。心なしか魂のふよふよも少ない。


ベットにダイブしたいが、それもする事が出来ない…怒りや落胆を周りにぶつける事も出来ないとは、ホント不便な(からだ)だ…。


はぁと溜息がこぼれ落ちると、窓際から声が届いた。


「やめてしまうのか?」


その言葉に驚き、声をする方を見ると、空を飛んでる中年のおっさんがそこに居た。


魂の重さ

アメリカのダンカン・マクドゥーガル博士の実験を元に…。

21グラムらしいですよ人の魂って。


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