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閻魔様があらわれた

宮中の中で一際大きな扉の前に俺はいる。

扉の左右には剣を帯刀した鬼が控えている。護衛かな?。


今、俺は顔面蒼白であろう…綿飴だからって突っ込みは無しで。


先ほど俺は、現状を確認するために持ってる情報の全て洗い直した。

そして、霊体外装のおおよそのあたりを付け、今の現状がどれだけ危険か理解したつもりだ。


・・・・・・


どう考えても悪い方向に進む気しかしねぇ…。俺は俺だけど、俺である事を説明できないから俺の運命オワタ…。

いや、死んでるけどね。

折角 謁見って事になってるけどこっちから主張できるような事が無いんだよな…。

精々、『魂魄の外装と生前の記憶が無くて困ってます』…位?


…なんだよそりゃ主義も主張も何もねぇ。

俺が面接官だったら落とすよそりゃ…この場合落とされるのは地獄だけどな。


落ち着かなく扉の前ウロウロし始める。鬼が一瞬怪訝そうな顔をしていたがそんなのはどうでもいい。



ああーやべぇなぁ…こえぇよ閻魔様。あれだろ、さっき来た鬼のおっさんのボスだろ…当社比3倍のデカさ持つ…。

つまりアレの10倍くらい凄い奴がこの先に待ってるって事もある訳だよな…。


ひぃ~恐ろし・・。


…どうする世辞の練習でもしとくか?

例えば頭に立派な角でも合ったら 『あらまぁとっても猛々しくて立派』とか

筋肉ムキムキのマッチョメンだったら 『その胸板がス・テ・キ』とか


うん…あんまりふざけた事言ってたら魂魄消失させられちゃうかな。 



ああでもないこうでもないと、不謹慎な事に思いを膨らまして早る足を止めれずにいると、

扉の両隣に居る鬼が『閻魔様の準備が出来ました』とか吐かしやがった。

テレパシーか?テレパシーなのか?何でもありだな…。


片方だけで何十キロもありそうな扉が重厚そうな音を起てて左右に開いていく。

扉から光が漏れ、ただならぬオーラのようなモノを感じ俺は反射的に直接見るのを避けた。


視線を地面から離す事ができない…

やばい…何がやばいのか分かんないけど。やばい・・・。なんだろう怖い…のか?・・・・いや違うなむしろ心地…いい?。

これは本能的に敬ってるのだろうか…?。

・・・もし手足が在ったのならこの両手は地面に手を付いてるかもな。


俺は地を見ながら移動し、鬼の『そこで止まれ』と声を掛けられた場所まで移動した。

直接見ては居ないがそこにある存在感は強大なものであった。


俺はそこで もう全てを受け入れるつもりで膝を付き(つもり)、両手をおでこに当て(つもり)、

腰を下ろした(つもり)。

俺という全てが眼前にいるであろう相手に屈服したのである。


辺りはしんと静まり返る。


・・・・・・


「ほう…お前が報告にあった魂魄か。確かに外装も無く現世を謳歌してきたには不可思議。

 私も、霊体外装を持たずやって来る者なんぞ赤子以外で初めて見たわい。

 …最も赤子なれば”審判の道”を通さず直接”転生の理”に乗せるがのぉ」


ん?私?   それにこの声…。


「一体これはどうした事か…まさかお前は自分を認識すること無く生きてきた

 と言う訳でもあるまい?

 修行に明け暮れ境地に至ったと言った僧も、外装を取り払った者は居なかった。」


間違いないこの声 お…


俺は視線を上げ閻魔様を覗きあげた。


「おぉそういえば、外装が無いのでは話す事すら出来ぬであろう。今、お前の言葉が伝わる様にしてやろう。」


閻魔は掌に力を込めそれを飛ばす。


「おっぱい!」


俺が光の玉を受け、出した言葉それだった。


辺りに再び静寂が訪れた。












現状を確認しよう…

俺は先ほど言い放った言葉で窮地に立たされて居る。

左右に控えている鬼たちの『おいおい、アイツやっちまったよぉ』って顔が事の深刻さを表している。

鬼もあんな顔するんだね。


・・・じゃなくて




無論、俺だってあんな事言うつもりは無かった。

閻魔様のオーラに当てられて、全て受け入れるつもりで居た…割とマジで。

しかしそこに想像していた恐ろしい閻魔様の声は聞こえて来ず、代わりに可愛らしい声が聞こえてきた訳ですよ。

…そりゃ確認するしか無いでしょう~。

もちろんね、敬う気持ちが心の中を大いに支配していて『顔を上げるなんて恐れ多い!』

とも思ってました…けどね、好奇心には勝てなかった。


でね、顔を上げた(つもりな)んですよ。

するとやはり可愛らしい女の方で思わず声に出てしまったんですね~『おっぱい』と…。


…何かおかしいって?


いやだってお前、眼前に広がるこの光景見て言わずに居られるか!?

俺だってね『お、女の人…?』『この虚けが…』みたいな小馬鹿にされるようなイベントで

終わってくれればと思うよ!でもね言っちゃったもんはしょうがないでしょ!?


大体ね、卑怯だよあれは幾ら閻魔様といえども、夢と希望詰めすぎでしょう!?

もうわくわくが止まんないよ。



閻魔様は椅子に腰掛けては居るがおそらく体長約15メートル程はある。

色白でどことなく幼い容姿、青の長めの髪。そして少々古風な格好をしていた。

その体に対して目を見張らんばかりの豊満な胸を持っておりその姿はまさに圧巻の一言に尽きる。

視界内に収まる乳の割合は3割を越えその存在感を否定することは出来ない。


・・・・・・


…さぁどうする、この状況。



未だ状況が変化してないって事は…向こうは俺に挽回のチャンスを与えているのか?

ならば動かねば…


とりあえず、この場を繕わねば為るまい。

相手を怒らせたまま話を進めても良い事なんて何も無いだろうし。


まずは褒めるか?…何を、何処を、乳を?

…馬鹿、それで今窮地に立たされてるだろうが。 身体的特徴を褒めるのは無しだ。

しかし、視線と思慮の8割以上はあの胸にもって行かれて他に思いつかない。…魔乳だな。


・・・そうだ!!お礼を言おう!。意思疎通が出来無くて苦労してたからな、ここでお礼を言うのは至極当然。

うん、それでいこう。


俺は姿勢を正し(つもり)大きくはっきりした声で言った。


「ありがとうございます」


俺は誠心誠意、そしてそれが言葉に宿るように心を込めて言ったのだ。

今の俺に表情があったのであれば、尚良かったんだが…贅沢は言えん。


…よし、これで少しは好転して・・・ん?また鬼たちが面白い顔をしているな。どうしてだ?。

なんら変なことは言ってないはずだが…?



・・・・!?

右の方からものすごい圧力を感じる。

さきほどの部屋で話した鬼のおっさんだ。おっさんは左手を額と目に宛て、嘆きのポーズを表しつつも右目がギラつきながら俺を捉えていた。

赤く光る眼光はそれだけで生を諦めてしまいそうになる位強く輝いている。



めちゃくちゃ怒ってる…どうして・・・・



・・・・・・・・・・しまった!!

俺をとんでもないものに感動詞をつけてしまった事に気づいた。

『ありがとうございます』はもちろん言葉を話せる様にしてもらったお礼なのだが

文頭に『おっぱい』をつけるとあら不思議、劣情こもる言葉の出来上がり。

最善に見えた手は最悪な手に姿を変えた。



浅はかとは思わないが思慮には欠けていた。

この場において主語が無い言葉を発したのだから。

しかし、一般の人物が目上の方に対して言葉遣いが覚束無くなる事は、仕方がない事でもある。


もう無理かもしれん…。悪くなっていく現状に憂い、『このまま問答無用に消失かな』っと

半場諦め掛けていた時に、意外な所から助け舟が来た。



「…魂魄とは・・・魂魄とは真の自分を写す鏡。

 霊体外装を着けず行う事は誠のあなたの願望が色濃く出る…。

 それは仕方がない事なのでしょう…。」


と、

霊体外装を身に付けの無い特殊な事例、そしてその外装の本質的な意味を理解している閻魔様によって

この場に置いては些細な事には目を瞑り、原因究明に全力で執り行うと約束してくれたのだ。

閻魔ちゃんマジ天使。



俺は無礼千万な発言の謝罪を言った。・・・乳を見つめて。


…これも偽らざる欲望から来る真実の結果なのだから仕方ないね。



『まずはあなたの事を教えなさい』と閻魔様に尋ねられ俺は今の俺が自分の根本となる部分が

失われている…もしくは失われ続けている事を端的に話し自分の事がよく分からないと伝えた。


「ふむ。・・・霊体外装は生前の自身の姿を象る鎧、自分自身が分からなければ形作られなかった事は納得出来ます。

 しかし…」


閻魔様は腰を背もたれに預けるようにして座り直して、更に深く考える様に唸って続けた。


「しかし、そのような記憶は頭では無く魂に刻まれるはず、

 例え記憶喪失に陥った者だったとしても外装を失う事などあるはずが無い…はずなのだが。

 それにまだおかしな事があります。あなたには(マトイ)がほとんど無い…」


マトイ?聞いたこともない単語に俺は頭をひねる…が、知ってるはずもない。



「…簡単に説明しましょう。

 纏とは霊体外装に宿る力の事。…外装が無いのだから無くて当然と思われるかもしれませんが

 全く違います。纏の力が霊体外装を創るのです。

 纏が記憶や経験、生前の情報を元に霊体外装という型を創りそれと同化する。

 それはこの冥界での肉体の無いあなた達の防御壁となり守ってくれるのです。」


ほう…霊体外装を創る素がマトイって事で良いのかな?

でもその違いに大きな齟齬があるとは思えないど・・・?


「それは大事な事なのですか?

 マトイにしろ霊体外装にしろ俺は持って無いだけですよね?」


「・・・霊体外装が何か原因があって、纏から生成されなかったのであればまだ今の状態が維持できてる

 のかは分かります。 ですが纏を持たず今の状態を維持できてるのは異常です。

 冥界の空気は、魂が何もまとわずカタチを保てるほど甘くない…なぜ消失していないのですか?」


俺は『え?』と反射的に声が出るのを抑えきれなかった。


「私はあなたが”審判の道”を通り、歩んでいた事から纏が霊体外装を生成出来ず、

 あなたの周りを渦巻いている物だと思ってました。そうでなければ長い間 冥界の空気に触れ

 ここに至るまでに、蝕まれ消失していただろうと。

 …しかし結果は違いました。先ほどからあなたを観察していましたが、自身を守れるほどの

 纏は無い。つまり有り得ないのです。今あなたがカタチを保っている事が…。」


え、え、え、え?どゆこと??

今の俺は死んでなければおかしいって…事?はぁーーーー!!?

いや、でも、それは、始めっからそんな感じで?…あれ?


いやまて、落ち着け落ち着け…。ちゃんと説明してくれてるじゃないか。

情報を自分なりに…そうすれば自ずと答えは出る。


…えーと

閻魔ちゃんは他の鬼どもが慌てふためく中、自分なりの仮説を立てていた。

しかしそれすらも外れて閻魔ちゃん困惑でって事で…おk?…かな。

要するに振り出しに戻ったと。



・・・・・・



閻魔様が俺に分かりやすい様に噛み砕いて説明してくれている。

綿飴は悩み苦しむたびにふわっふわっ、ふわっふわっ、揺れる。

そして揺れるたびヨダレを垂らし物欲しそうにしてる鬼が居る。

謁見の間ではこのような異様な光景を繰り返していた。



「あなたの魂少し調べてもよろしいですか?。」


「はい?構いませんけど」



俺が答えると閻魔様は手を前に突き出すと何やら詠唱を始める。

すると手首から上の部分がぼわっと光りだし俺の周囲から何かが抜けていくのを感じた。

僅かに脱力感を感じながら次第に集まる光に、『ふむふむ』と閻魔様が頷いていた。

そしてある時を境に、より真剣な顔つきに変わった。


「…これは!!・・・だから・・・・なのか…。ならば・・・・・・

 司命しみょう司録しろく!」


司命、司禄と呼ばれた鬼が左の列から一歩抜け出し、『『はっ!』』と声を揃えて閻魔様の方に向き直る。


司命は巻物のような物を持っており、司禄は筆と板のようなものを持っていた。

姿に違いはあまりなくどちらかといえば司命の方が僅かに背が高い程度だ。

白くヒラヒラな布地の格好をしており他の者達とは一線を成す。『文官』そんな言葉が似合うような出で立ちをしている。



「確認したいことがある。…この者は『科学を主とする世界』の住人、相違無いな」


「はい、18番目の『科学を主とする世界』の住人にございます」


「…そこに”複合世界”に成りうる要素はあるか?」


「…将来的には有り得ますが、今は『科学』のみ世界です。現在と未来 数千年は変化は無いでしょう」


「そうか…下がって良い」


司命と司禄が一礼をして元の列に戻る。

そして閻魔様が手を握ると光が消え、俺の中に何かが馴染むのを感じた。



閻魔様はひとつ咳払いをして眼前にいる綿飴に言葉を告げる。









「…どうやらあなたは生まれる世界を間違えた様です。」



「は?」

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