「田中さん」誕生
まさかこんなことになるなら半年前までしていた受験勉強もしっかりやって志望校に合格しようと頑張っていたかもしれない。
こんなことになるならお母さんに借りたお金も返済したかもしれない。
こんなことになるなら中学所属していたテニス部も途中で辞めなかったかもしれない。
目の前にある画面を見ていたが私は後悔の走馬灯を見ていた。
さっきまで日本の国会に愚痴をこぼしたことが原因なのか?という疑問を背に現実と非現実の狭間に浮いている。
画面に映る会見場にいる首相が放った言葉は私に対しての言葉かは知らないが残酷なのは確かだった。
「今回の会談で決まったことは各国の代表6人を選びその6人が世界会議に出席してもらい世界を救うということが議決しました」
私はなんでこんな会談が行われた理由がどんなものかはまだ知らない。
日頃、ニュースなんか見ずにパソコンにいる二次元男子に惚れたのが運のつきだった。
6人の代表を決めて会議することはまだ納得いく、私もそこまで馬鹿じゃない。
問題はこの一足先であって6人の決め方だった。
「この6人の決め方においては各国異なり、日本は全国の共通の名字の方から選考された6人が代表となります」
いやいやいや、この時点でおかしいだろ。
生真面目で有名な日本国家がいつこんな落ちぶれた?
馬鹿げたジョークはいらないから、なんて思っていたが私の考えは見事に空振りしているようで「マジ」らしい。
「その共通の名字とは・・」
よく漫画であるじゃないか唾液を飲み込む音がゴクッとのどを鳴らす感じ。
あれが本当に鳴ることはこの時初めて知った。
「・・田中さんです、では全国の田中さんは国会から調べださせてもらい、選考させていただいており、発表させていただきます。こちらの掲示板をご覧ください」
今までにないほど目を細めて黙視した。
クーラーが効いた部屋のはずなのに汗が止まらない。
むしろ、寒い。寒すぎる。
冷静に考えてなんで佐藤さんとかじゃないの?!
全国の名字ランキングで1位なのは佐藤さんなのに?!
しかも全国ランキング4位とかいう微妙な数字の田中さん?!
なんで佐藤さんが1位とかいう雑学が自分の引き出しの中にあるなんて自分も知らなかった、なんて馬鹿なこと考えてる暇はない。
だって私は俗にいう「田中さん」だからだ。