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ダンジョン冒険者はロクでなし  作者: 黄原凛斗
1章:オルヴァーリオの湖底
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2階層




 翌日、差し込む日差しで目を覚まし、時間がわからず時計塔を見る。時計塔というより、町の中央にある塔なのだが、時刻を知らせる鐘があるためそう呼ばれる。そこには11の刻のプレートが吊り下がっていた。少なくとも現在は11の刻は過ぎている。

 想定より寝過ごしたのは誤算だったが別に焦る必要もない。今日はこの後薬草を売りに行ってダンジョンでいつも通りの――



「あ、おはよー」



 なんかいた。


 元宿屋の食堂――現在はダイニング兼リビングのような場所で平然と自前のレタスサンドを食っているやつがいる。


 というか、ミシェルだった。


「大丈夫かい? 寝すぎで顔色がよくないぞ」

 大丈夫、俺は冷静だ。

 窓を開け、出歩いている人間がいることを確認する。


「すいませーん!! 誰か警吏の人呼んでくださーい!! 不審者がー!!」






 仕方ないと思う。だって家に勝手に侵入されていたらこうするだろう。


 一旦落ち着いて大人数が本来集まって使うべきファミリーテーブルに向かい合って座っている。

「まったく……ひどいことするね。この僕を見て不審者扱いするとは」

「当たり前だろ」

「確かにこの僕の美しさと可憐さは罪……いろんな人間を魅了してしまう……ああ、たしかに罪作りだね」

「よし、新しい罪状を追加してやる。不法侵入者が。というかどうやって忍び込みやがった」

 戸締りはしていたはずなのに。

「えー? ああ、鍵の形式がだいぶ古いね。余裕だったよ」

 ピッキングツールと鍵の束のようないくつもの棒がついた輪を見せびらかし自慢げにミシェルは語りだす。

「戸締りはいいけど鍵の形式が古いし防犯対策もなっちゃいないね。付け替えたら? 鍵開け技能持ちなら大半が開けられるよあれ。最近は魔法防犯水晶とかあるらしいけどあれ貴族向けだし、普通に最新の――」

「ちょっと待て!! お前鍵開け技能で入ったのか?」


 技能とは、元々は魔力を消費しないで扱える特技や技、技術などの総称する冒険者用語の一つだ。冒険者支援協会では初回に冒険者カードというものを作成させられる。冒険者の身分証でもあり、自分を売り込むためのアピールカードでもある。

 名前と現在所属しているギルド。そして顔やステータスが記載され、裏面には所持技能が表記される。これらはカードを作る魔法の効果で更新され、詳細を見る場合は意識してその部分に触れると詳しい情報などが確認できるのだ。

 そして、技能についてだがこれが単純に技術面だけではない。生まれ付き持っている才能、とでもいうのだろうか。例えばの話、俺は直感(60)を所持している。これは生まれつきで、この数値の上限は100。いかに第六感が優れているかなのだがこれも技能に入るらしい。数値60というのは中の上に分類される、と思うかもしれないがそもそも持っている時点でそこそこ扱えている、または効果があるということだ。だから俺の直感は高い方だという見方もある。

 どれくらいが基準かというと定義というか場所により様々だが90以上は神業、70前後は熟練、50前後は優秀、20前後は趣味特技レベル。といった具合だったはず。

 そして、技能でこの家に侵入したということだが、少なくともこいつは鍵開け技能を所有しているということだ。

 鍵開け技能は決して珍しい技能ではない。が、俺にとってはある意味憧れの技能だ。なにせ鍵付きの宝箱を開けることが出来るのだから。

 ギルドやパーティがシーフやスカウトを欲しがるのはこういう意味もある。

 ちなみに俺は鍵開け技能を取得しようとして失敗した。ステータスの器用を上げてから試すべきなのかもしれない。

 ちなみにステータスはHP、MP、攻撃、防御、魔攻、魔防、敏捷、器用、幸運といったもので、これらが高いほど優秀だと示すわかりやすい指標となる。数値で人の本質は測れないとは言うが、大きな目安ではあるだろう。

 例えば同じような戦士が二人ギルドへの入団を希望していたが空き枠が1人だとする。片方は攻撃が高く、片方は攻撃が低い。これだと高い方を取るだろう。そういう意味ではある程度の目安になる。当然、鍛えれば成長するものだし、更新して成長すれば自分の実力を感じ取れることは間違いない。


 ふと、昨日のやりとりを思い出し、こいつの冒険者カードが見たくなった。

 有名人ということは恐らく顔と名前が知られているということ。それは冒険者として優秀な証か――いやもう一つの可能性はないだろう。恐らく優秀なのだ。

 なにせ、鍵開けだけでなく、家に侵入して直接見るまで俺が気配に気づけないほど気配を隠すのがうまいのだ。技能値がいくつほどかはわからないがある程度取得しているのだろう。そう考えるとステータスも高いはずだ。

「……お前、冒険者カード見せろ」

 できるだけ平静を装って声を出す。すると、ミシェルはにっこりとまるで天使のように微笑み――



「嫌だよ」



 めっちゃ明るい声で拒否された。どうしよう、こいつの考えが読めない。

「ていうか、なんで俺の家わかったんだよ……」

「調べた。ここの町の出身だしすぐにわかったよ。レブルス・クラージュ君?」

「気持ちわりぃよ」

 ぞっとした。

「ま、カードを見せるのは僕の頼みを聞いてくれたら好きなだけ見せてあげるよ」

「は? 頼み?」

「そう、頼み。そんなに難しいものじゃないよ?」

 そう言ってミシェルは目を細め、流し目で俺を見つめる。無駄に仕草が色っぽいのはなんなのか。腹が立つ。



「僕とパーティ……いや、ギルドを組もうよ」



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